農業の衰退で水車も危機に

takase222014-08-04

朝日新聞夕刊で「水車をたどって」という連載が始まった。
http://www.asahi.com/articles/DA3S11283570.html
 第一回目のきょうは「225歳、のどかさとは遠く」と題して、あさくらの水車(福岡県朝倉市)が登場している。一昨年訪れた懐かしいところだ。
 筑後川から引き入れた堀川用水にそって、みごとな三連水車1基、二連水車2基がある。
 これらは、穀物を粉にしたりする動力水車ではなく、用水の水を、やや耕地に流しこむ揚水水車だ。私は揚水水車を初めて見て、精力的な「働きぶり」に驚いた。記事が雰囲気をよく伝えている。
 《その迫力たるやコトコトコットンなどという軽やかなものではない。用水路の堀川に縦に三つ並んだ水車が、バスンバスンと飽くことなく水をくみ、といに流し込む。》
 ここの水車は実際に耕地を潤す「現役」であり、観光用ではない。本物がもつ迫力だ。
 山田堰、堀川用水、水車群と一連の農業用水システムは18世紀からのもので、世界に誇る歴史遺産だ。地元では、世界農業遺産登録を目指している。私たちが制作したDVDが広報に少しでも役立てばと思う。

朝倉を訪れたのは、ご縁で、堀川や水車を管理する山田堰(やまだぜき)土地改良区を紹介するDVDを制作したからだ。
 日記をみたら、ちょうど一昨年のきょう8月4日、山田堰をバックに、アフガンで水路を作っている医師、中村哲さんにインタビューしていた。福岡県出身の中村さんは、山田堰をモデルに、アフガンの用水路の堰を設計したのだ。
http://d.hatena.ne.jp/takase22/20120804
 中村さんは、堰だけでなく水車もアフガンに取り入れようと、水車大工の妹川幸二さんに相談を持ちかけていた。もう現地で作っているのだろうか。
 揚水水車は中東が発祥とされ、アフガンにはもちろん長い水車の歴史があるのだが、構造としては日本のものが優れているらしい。

十年ちょっと前から水車に関する番組やDVDを手掛けるようになって、勉強するうち、水車に魅せられるようになった。
 すばらしい技術で自然エネルギーを生み出す水車だが、朝倉でも廃絶のおそれがあるという。私も取材でお世話になった土地改良区の事務局長、徳永哲也さんが、営農組合の平均年齢が67歳で「あと10年たったらどうなるのか。農業が立ちゆかなくなれば水車どころではなくなる」と記事で危機感を語っている。
 たしかに水車は農業のためにあるので、農業が衰退すれば、存在があやうくなる。維持費が半分のポンプ式に替えようとの声も出ているそうだ。
 3月には地元農協や観光関連団体が参加して「あさくら三連水車保存会」が発足した。募金活動や寄付金付き商品の販売なども考えているという。「地域のシンボルを地域で守り、次世代に引き継いでいける仕組みをつくりたい」(徳永さん)。
 水車製品を購入するのは直接の経済的支援になる。以前、このブログでも宣伝したが、車で杉の葉を挽いて粉にした香料ゼロの水車杉線香をお薦めします。
http://d.hatena.ne.jp/takase22/20140323
九州の八女の馬場水車と茨城県八郷で生産している。
http://www.city.yame.fukuoka.jp/kouhou_yame/arekore/a23.html
http://item.rakuten.co.jp/suisuisya/nk011/
お盆のお土産にどうぞ。

あさくらの三連水車は6月から稼働し始め、今頃は猛暑のなかバスンバスンと水を揚げていることだろう。