福島県産の農産物はどこまで安全か

takase222014-05-18

 今朝の朝日新聞日曜版グローブに、先日紹介したブログ「鼻血漫画をバネにして進めるべきこと」の坪倉正治(まさはる)医師南相馬市立病院非常勤医)が大きく写真入りで載っていた。
http://globe.asahi.com/breakthrough/2014051500002.html
 記事タイトルは「『東電の回し者』 被曝相談にのって3年。心ない批判も浴びた。それでも福島の不安に寄り添っていく。」
 東大医科学研の研究員でもある坪倉氏は、原発事故一か月後から東京と福島を往復する生活を続け、今も週の半分は福島で診療や被曝検査を行い、相談に乗っている。
 現地の説明会では、「『被曝線量が多くない』なんて、東電から金もらっているのか」「福島が汚染されたと言うのか。福島を愚弄したら、ただではおかない」と両方から批判を浴び、ストレスで顔面まひや、胃や頭の痛み、高血圧という体の異常まで出た。
《11年10月、子ども約3000人の内部被曝の検査結果を発表した。セシウムは検出されたが、濃度はおおむね低かった。住民に早く結果を知らせ、安心してもらいたかった。公表を渋る市を説得した。翌日の新聞に「南相馬の小中学生から少量セシウム」との記事が載った。看護婦から言われた。「福島の子どもたちが被曝してるってレッテルを張っちゃったわね」。ショックだった。よかれと思ってやったことが裏目に出たと感じた。》
 支援活動をやめたいと思ったこともあったが、「子どもたちに本当のことを話して欲しい」と頼まれ、20〜30人単位のミニ集会を何十回も開くなかで、次第に、「坪倉先生は科学的、医学的な観点から話をしてくれている」と信頼を得ていったという。
子どもたちからは「外で遊んでいたネコを抱っこしてもいいですか」「洗濯を地下水でやってもいいですか」などの素朴な質問がたくさん出る。この不安に何とか応えたいというのが坪倉医師の思いだ。
《昨年の内部被曝検査では、子供のほぼ全員、成人の9割以上はセシウムが検出されなかった。「もう検査は必要ない」と言う住民も増えている。だが、坪倉は「検出されていないことを確認するためにも、検査を続ける方がいい」と考える。》
《坪倉の姿を見て、後に続こうという後輩医師が増えている》そうだ。
坪倉医師は朝日新聞の医療サイト「アピタル」でブログを連載している。
http://apital.asahi.com/keyword/author.html?author=2012111500007

記事に出てくる「昨年の内部被曝検査」について書いた坪倉医師のブログを紹介しよう。
《引き続き、日常生活上の内部被曝は低く抑えられています。図1-1、図1-2にあるように、セシウムが検出限界以下に抑えられている率は高校生以上で98.5%、中学生以下で99.9%でした。1日数Bqのセシウムをとり続けているというような状況ではなく、あったとしても体内に含まれる放射性カリウムより1桁以上低く、年間で胸のレントゲン1枚の数分の一以下です。日本人が他国に比べて多い、ポロニウムからの被曝(魚介類などの摂取によっておこります)からも一桁以上低い状況です。
 日常生活で野菜を多く食べる日や、魚介類を多く食べる日があると思います。野菜を多く食べれば、放射性カリウムからの被曝量が増え、魚介類を多く食べればポロニウムからの被曝量が増えます。
 現状の値だけで言えば、セシウムからの被曝はあったとしても、この日常の食生活が変化することによって変わる(揺らぐ)被曝量の中におさまっています。ほとんどの人において、(100mSvではなく)「1mSvどうこう」という議論さえ不要です。
とはいえ、検出限界は250Bq/body程度で、年間1mSvに到達する数万Bq/bodyと比較されても良いと思います。検出限界については第76回を参考にしてください。
 それに対して、食品に対する不安度は徐々に下がってきているとはいえ(図4)、スーパーで産地を選ぶ方は多い状況です。米のみは検査済みの地元産の使用率が高いですが、他の食品はまだまだと言ったところです。流通している県内産のものを摂取して高い内部被曝をする状況では全くありません。
 全体としてはこのような状況ですが、図1-1にもあるように、成人ではポツンと外れた値として高い方がたまにいらっしゃることも変わりません。食品の汚染は産地で決まるのでは無く、どのような種類のものかが大事です。
漁業のデータであっても、種類によって汚染度が決まり、例えばタコ、イカ、貝、エビや回遊魚、生物濃縮の段階が低次の魚は汚染がほとんど無いことがわかってきています。
 相馬市で2014年2月現在、出荷制限を受けているのは、キウイフルーツ、栗、こごみ、野生たけのこ、ふきのとう、ぜんまい、タラの芽、原木椎茸、原木なめこ、野生キノコ、コシアブラです。出荷制限のかかっている食べ物を、継続的に未検査で食べ続けると、それなりの内部被曝をすることが分かっていますが、それでもセシウムからの内部被曝は年間で1mSv前後になるかどうかということも南相馬市などでの検査から分かっています。
 栄養のバランスや、放射線のことだけが健康を規定しません。食生活に対してどうするかは、個人の考え方によるところも大きいと思います。》(連載109回「今の被曝に対してやるべきこと」より)

さらに連載92回「被曝量は十分低いと伝わらないもどかしさ」ではこう書いている。

現状の相馬市、南相馬市で日常生活を送る上での放射線被曝リスクは十分低いのです。それにも関わらず、東京や西日本の方に伝わってはいません。さらに言えば、地元の高校生にも十分には伝わっていません。
 子供たちには授業など、何かしらの形でしっかり伝えていくべきだと感じています。相馬高校を始め、いくつかの学校で放射線の授業が進んでいます。
 最終的に、子供を守るのは継続的な検査と、放射線に対する知識ではないかと思っています。》

こういうことを言うと、「東電の回し者」になるのだろうか。