驚異の「新型偽ドル札」出現

takase222014-04-15

13日のMrサンデー。
スタジオに鑑定士の松村喜秀(まつむら・よしひで)さんが出演して解説したが、この番組が、「新型偽ドル札」の出現を公にした初めての機会となった。
(松村さんについては、このブログでは何度か書いている。http://d.hatena.ne.jp/takase22/20081119

これは、18年前から偽札を取材してきた私にとっても驚きの事態だった。
89年に存在が確認された「スーパーK」(松村さんが命名したのは90年代はじめ)は、これ以降、「スーパーZ」(とその改良型のZ1、Z2)まで進化してきたが、これらはみな北朝鮮製で、「同じDNAを持つ」(松村さん)ものだった。
2007年、私たちは中朝国境で、「Z1」を入手したが、これは紙幣鑑別機でもはじけない究極の偽札だと思われていた。
今回の「新型」は、これをはるかに上回る精巧さで、しかもこれまでの北朝鮮製のスーパーシリーズとは「DNA」が全く異なる。つまり、どこで何者が作っているかわからない。

今回の取材で、ミャンマーから、この「新型」が7枚も出た。
ミャンマーは、民主化の進展で、経済制裁から外れ、いま外国からヒト、モノ、カネが一気に押し寄せている。偽ドル札が大量に出回っているに違いないと踏んでいたが、おそらく過去確認された低いレベルのものだろうと思っていた。
そこから7枚も「新型」が出たうえ、両替商のあるじは「他にたくさんあったが、銀行にもっていったらみな『本物』として受け取ってくれた」という。銀行の鑑別機に「新型」をかけてみたら難なく『本物』として通した。
ミャンマーのような新興国でも大量に出回っていると推測できる。
後日談だが、松村さんが今回の旅行中、タイ・バンコクで両替店でもらった100ドル札もまた、「新型」と判明した。
タイでも普通に流通しているようだ。
お金の流れは、またたくまに国境を越えるから、おそらく世界中に蔓延しているのだろう。

「新型」は、鑑定のプロである松村さんが、拡大鏡その他の持ち運びできる器具を使って識別しようとしても見分けがつかないほど。人間の五感では太刀打ちできないしろものだ。
松村さんとそのスタッフは、電気信号などを使った解析や化学反応など化学的な分析でわずかに数箇所のポイントを見つけたという。
このデータを鑑別機にインプットした松村さんの会社のEXC-5700Aとその上位機種の6700しか、「新型」をひっかける鑑別機はない。
今のところ有効な対策がない。
それにしても、これはどこでつくられているのか。
松村さんによれば、これほど精巧な偽札をつくるには、高性能印刷機をはじめ相当の初期投資が必要になるうえ、50人から100人の技術者がいる。また、厳格な機密保持が必須で、普通のマフィアなどの犯罪組織では不可能だろうという。
わからないことだらけだ。

写真はMrサンデーのスタジオ。左に私がファンである中江有里が写っている。