無財の七施

takase222014-01-31

つい数日前、ながいこと会っていなかった人とメールを交わした。
86年のフィリピン革命を取材したときの私の助手だったジェスという男が、フェイスブックで私を見つけて連絡してきたのだ。私を後から支えている黒メガネの男がそうだ。何枚か当時の写真を送ってきて私をなつかしがらせてくれた。
しかし、フェイスブックってすごいな。私の知り合いに、関係の切れていた高校時代の級友とフェイスブックでつながり、同窓会をやることになったという人がいる。時空を超えて人をつなげるという感じだ。
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都知事選は9日だが、1週間前の2日、あさっては、タイの総選挙だ。
反政府デモに対して、インラック首相は総選挙に打って出た。これは追い詰められて、というより首相側からの「反撃」。選挙をすれば勝つのだから。
反タクシン派の要求は、総選挙の中止とインラック首相の退陣そして指名制の「会議」への権力移譲というもの。総選挙を阻止すると宣言している。
一方、政府は非常事態を宣言して、予定通り投票を実施するとしている。10月から始まった騒動だが、まだ終わりが見えない。クーデターの可能性もある。
王制が支える現体制に大きな変動があるかもしれない。また、タクシン派の牙城の北部・東北部対反タクシン派の南部の亀裂が国家統合を危くするかもしれない。
(関心のある方は、エコノミストの「国家分裂に至るのか?」という論説をお読みください。http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/39827
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きのう紹介したホームレス人生相談の
「スマイルってタダだから、ホームレスになってもあげられるんです」という言葉に、私は《無財の七施》を思い出した。
大乗仏教では、基本的な実践方法に「六波羅蜜」がある。
波羅蜜(はらみつ)は波羅蜜多(はらみった)の略で、「パーラミター」の音訳。迷いのこの岸から覚りの向こう岸に渡るための行、言い換えると、覚りの修行マニュアルだ。
六つとは、布施、持戒、忍辱(にんにく)、精進、禅定、智慧
「布施」は、今では檀家がお寺やお坊さんにお金を上げることを意味するが、しかし、ここでいう布施は、修行者が衆生に対してためになることをしてあげるということで、六つのうちの一番最初に来るくらい大事な修行とされる。
布施にも、法=真理を説いてあげる「法施」、困っている人にお金やものをあげる「財施」といろいろあるが、お金も力もない人でもできる布施が「無財の七施」だ。
これは「雑宝蔵経」(ぞうほうぞうきょう)というお経に出てくるそうだ。
まず、「眼施」(げんせ)で、人をやさしい目で見ること。
和顔施」(わがんせ)、やさしい顔をすること。
言辞施」(ごんじせ)、やさしい言葉をかけること。
身施」(しんせ)、体を使ってできることをすること。
床座施」(しょうざせ)、席をゆずること。
心施」(しんせ)、心で思うこと。
「房舎布」(ぼうしゃせ)、宿を貸すこと。
その人に何かしてあげようと思う気持ちがあれば、笑顔でも祈りでも布施なのだ。
このうちの一つもできませんという人はいないだろう。
ホームレスでもスマイルはあげられる。「和顔施」である。さあ、スマイルからはじめよう