「黎明通り」の真実

 一昨日の15日は、横田めぐみさんが拉致されて40年だった。滋さんはその前日14日が誕生日で、85歳になったそうだ。テレビで観て、お歳を感じる。私がめぐみさん事件の報道に関わったのが20年前。こんなふうに時間が過ぎるのは家族にとってたまらないだろう。未だ解決できないことを被害者家族にお詫びしたい。
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 きょうは「持続可能な国づくりの会」で「北朝鮮情勢をどのようにとらえるか」を話す。 講演では、北朝鮮という国家の本質について、持論を2時間たっぷり語った。

 冒頭、Google Earth平壌の町と工作機関を紹介。「黎明通り」には金正恩肝いりの新築の70階建て高層ビルが立ち並ぶ。しかし、これをすごいですねとお祝いするわけにはいかない。金正恩は、権力を移譲されて間もなく、「平壌10万世帯建設」をぶち上げたが、この工事には全国から膨大な兵士、青年、学生が動員されて、怨嗟の声がでている。次に、ここは24時間電気を通せと金正恩が直々に指示したため、限られた電力を最優先にここに回さざるを得なくなった。その結果、平壌の他の地域での停電が増えた。最後に、成果を見せつける平壌での大建設プロジェクトは餓死を生んだ。2012年、石丸次郎さんが穀倉地帯の黄海南道(ファンヘナムド)で少なくとも数万人が餓死、人肉食で捕まる人も出たと発表した。スクープだった。軍用の食糧を供出させられた上にさらに、建設プロジェクトなど首都の美化のために食糧を取られた。村々にやってきた徴発隊チームは、最後は農民が隠し持っていた米も銃口を突き付けて持っていった。飢えて全滅した一家もあれば、自殺した家もあったという。北朝鮮という国家の本質を知らないで、「きれいな平壌」を表面的に見ると誤解してしまうのだ。
【今年4月13日の竣工式】
 2012年のコメの作柄は、WFPによれば前年比11%増。しかも穀倉地帯での飢餓は北朝鮮ならでは。「定期的に選挙が行われ、批判をはっきり表明できる野党が存在し、大規模な検閲なしに政府の政策の妥当性を問いただすことができる報道の自由がある民主主義の独立国家においては、大飢饉が本格化するようなことは一度もありませんでした」とアマルティア・セン博士は言っている。飢餓を報道するまともなメディア、その地域を代表する政治家や行政官の存在、声を上げる権利を持つ市民がいれば、飢餓は起こりえない。

 ここから、北朝鮮は「独裁」なのかという話になり、ハンナ・アーレントを引用して「全体主義」だと結論づけた。最後は、北朝鮮の体制を変更するにはどうするかの仮説を提示した。
 こんな話を講演でしたのは初めてで、2時間たっぷりしゃべりまくった。ごく小さな集まりだったが、新鮮でおもしろかったと言ってくれる参加者もいた。売れ残っていた『追跡!北朝鮮工作船』(小学館文庫)や『娘をかえせ 息子をかえせ』(旬報社)、『金正日「闇ドル帝国」の壊死』(光文社)を持っていったら、15冊たちまり完売した。感謝。
 講演会ではある人と巡りあった。一番前の席に座っている女性、どこかで会ったような、と思っていたら、講演が終わると近づいてきて名乗った。おお、大学1年のとき、サークル「中国研究会」でキャップをしていたAさんだった。今度、もう一人のサークル仲間と一緒に会うことに。Aさん、フェイスブックに出した告知を見て講演会に来たようだ。すごいなフェイスブック