安倍首相は政治家失格

takase222013-05-12

近所の家に箱根空木(ハコネウツギ)が咲いていた。
白と桃色の花が同時に咲いているが、この花、色が2種類あるのではなくて、白からだんだん赤くなっていく。夏も近づいている。
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ある国を評価するのは、人物の評価と似ていて、過去を規定した客観的な条件や環境を見ることが不可欠だ。
例えば、ミャンマーで、どうして軍部が権力を独占するようになったのか。「誰かとんでもなく悪いやつがいたから」でないことはもちろんだ。
歴史をさぐっていくと、日本との関係が出てくるし、さらにイギリスに植民地にされていた過去に突き当たる。世界地図でミャンマーと日本の位置をみると、よくもこんなに遠くまで日本は軍隊を派遣したものだと驚く。
当時、アジアは、というより世界は、ほとんどが欧米の植民地であり、独立国は日本はじめ数えるほとしかなかった。
インドシナ三国(今のベトナムラオスカンボジア)は「仏領インドシナ」でフランス領、今のミャンマーから西、バングラデシュ、インド、パキスタンそしてマレー半島はイギリス領。インドネシアはオランダ領。イギリスとフランスの勢力圏の間(はざま)にあったタイが、文字通りの瀬戸際外交で、かろうじて植民地化を免れていた。
日本の当時の建前は、欧米の植民地にされて呻吟するアジアの諸民族を解放するというもので、戦争を「大東亜戦争」と名づけたのだった。
娘から、英国在住のアウンサンスーチーさんがなぜすぐにリーダーになれたの?と聞かれたが、「とりあえずは親の七光りなんだ」と答えた。お父さんのアウンサン将軍がビルマ「建国の父」で英雄だったからだ。(リーダーになってからの闘いは尊敬に値する立派なものだが)
アウンサンは、民族意識にめざめて反英独立の学生運動のリーダーとなっていく。そして日本軍に見込まれ、厳しい訓練を受けて「ビルマ独立義勇軍」(BIA)を創設、日本軍と共にビルマに攻め込んで英軍を駆逐した。
しかし、日本はすぐに独立を許すことはなく、日本軍による「軍政」が敷かれた。
英国がいなくなったのになぜ独立を許さないのか。アウンサンらは次第に不満をつのらせ、1945年の3月に日本軍に対して銃口を向ける。終戦の半年ほど前のことだった。
なぜこんなことを書くかというと、安倍首相の「侵略の定義は学界的にも国際的にも定まっていない。国と国との関係でどちらから見るかで違う」(4月23日、参院予算委)という発言について考えたいからだ。
1974年12月の国連総会で「侵略とは、国家による他の国家の主権、領土保全もしくは政治的独立に対する、又は国際連合の憲章と両立しないその他の方法による武力の行使」と定義されていて、今さらこれに抵抗するのはあまりにも稚拙である。たとえ当時植民地であっても侵略したことには間違いない。
近代史を大きく俯瞰すれば、欧米列強が、日本とは比較にならないほど「ひどい」ことをしてきたのは確かである。しかし、我々は「ユナイテドネイション」(国連)の元で形成された戦後の世界秩序を認めて生きるしかなく、日本が侵略し植民地化したことに疑問を呈し、反省しないことは政治的に許されない。泥棒が「もっとひどい泥棒がいる」(たとえそれが本当であったとしても)というようなものなのだ。
今、このことそ理解できないとすれば、安倍首相は政治家失格である。
安倍首相の言動が、あとで非常に高いツケとして日本にかえってくることを私は心配している。