クラウドファンディングで映画支援の輪

takase222013-02-08

「ハーブ&ドロシー」という映画がおととし世界中でヒットし日本でも公開された。
http://www.herbanddorothy.com/jp/
この監督・プロデューサーは、佐々木芽生(めぐみ)さんという在米の日本女性で、私の古い知り合いである。
ニューヨークに住んで、主にテレビ取材のコーディネーターをしていた。アメリカ取材ではコーディネーション兼通訳としてよくお世話になった。彼女が日本に帰国したときには会社に遊びにきたりと友達付き合いをしていた。

6、7年前だったと思うが、あるとき、ワシントンDCでの取材アレンジをお願いした。私は日本から、彼女はニューヨークから飛んできてワシントンDCの空港で待ち合わせるのが常だった。
ところが約束の時刻が来ても彼女が現れない。もしやと彼女のニューヨークの自宅に電話すると「あっ寝坊してしまいました!」。
仕方がないから、一人で取材先に行った。あとで合流した彼女、「ごめんなさい、こんな失敗は初めてです」と言った。聞くと、映画の編集で徹夜の連続なのだという。それが『ハーブ&ドロシー』なのだった。

郵便局勤めをして引退したハーブとその妻ドロシーの自宅アパートには、若い頃から買いためた美術品のコレクションが所狭しと並ぶ。いずれも今や巨匠となったアーティストの無名のころの作品で、巨匠たちは若い頃に自分たちを認めてくれた夫妻に今も感謝の念をもつ。また、彼らの才能と将来性を早くなら見出したことで、その目の確かさゆえに大きな尊敬を集めている。
買った当時はとても安かった作品だが、いま売れば夫妻は大金持ちになれるのだが、二人は惜しげもなく全作品を美術館に寄付してしまう。つましい暮しをしながら、ひたむきに美術を愛する二人の人生に、人はどう生きるべきかをしみじみ考えさせられる。

実は、佐々木さん、それまで映画など撮ったことがなかった。つまり、これが第一作。それが大ヒットしたのだ。
映画化のきっかけは、アメリカの新聞記事に取り上げられた夫妻を訪ねて取材したことだったという。これが佐々木芽生さんの人生も大きく変えたわけだ。巡りあわせは大事だなあと思う。
佐々木さんはいま、その続篇の上映を控えて、資金集めの真っ最中。その記事が朝日新聞に載った。


《米ニューヨークでつましく暮らす現代アートコレクター夫婦の姿を描いたドキュメンタリー映画の続編公開に向け、インターネットを通じた少額の資金協力の輪が広がっている。目標は1千万円で、締め切りは12日。5日時点で445人から約700万円が集まった。
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 映画は「ハーブ&ドロシー」。2010年に日本で公開され、約5万人の観客を動員した。続編の「ハーブ&ドロシー ふたりからの贈りもの」は3月末の公開予定で、夫婦が長年かけて集めた4千点の作品の中から、全米50の美術館に50点ずつ寄贈される様子が描かれている。
 完成間近の昨夏、この夫婦の夫、ハーブ・ボーゲルさんが死去。佐々木芽生(めぐみ)監督(50)は昨年11月、撮影と編集をやり直すためにインターネットで資金を募る「クラウドファンディング」を利用することにした。目標額1千万円は文化系事業としては国内最高という。
 「目標達成には前作を多くの人に見てもらうことが必要」と、佐々木監督は自主上映会を無料に。佐々木監督の出身の札幌市では、4日に高校の同窓生たちが呼びかけて元映画館に200人以上集め、約50人が資金協力をした。中心となった後藤匡さん(46)は「夫婦がこつこつと作品を集めたように、ぼくたちもこつこつ上映会を開いて資金を集めたい」と話す。
 佐々木監督は「映画会社が一括して資金を出すより、大勢の人が少額ずつ出し合うのは民主的な文化支援の形。映画の制作や公開の過程をみんなで共有し、楽しんでほしい」と話している。資金提供はhttp://motion-gallery.net/projects/herbanddorothy5050から。》(朝日新聞6日)
この記事も手伝ってか、ここ2日は急に増えて、きょう夜の時点では総額950万円くらいになっている。
ほんの気持ちだけだが、私もカンパした。こういう資金集めが普及して、みんなで文化を盛り上げる機運が大きくなればいい。大きな資本やスポンサーがなくとも、いろんな芸術作品やイベントが世に出るきっかけをつくることができるだろう。