分かれる放射能の影響評価

takase222011-07-21

今朝の東京新聞に「内部被ばく研究の国際的権威 バズビー博士に聞く」というインタビュー記事が載っていた。(写真は毎日新聞から)
クリス・バズビー博士は、ECRR(欧州放射線リスク委員会)の科学議長を務める幹部で、いま来日している。
ECRRは、日本政府が被ばく基準の根拠にしているICRP(国際放射線防護委員会)の勧告を「内部被ばくを考慮していない」と厳しく批判している。
http://d.hatena.ne.jp/takase22/20110621
バズビー博士によれば、日本政府が示した放射線量1〜20ミリシーベルト/年ではなく、0.1ミリシーベルトを被ばく限度にすべきで、外部被ばく線量が地上1mで毎時1マイクロシーベルトを超える地域に住む子どもらは退避すべきだという。
きのうの放射線量は福島市が1.17マイクロシーベルト、郡山市が1.04マイクロシーベルトで、この辺がみな当てはまることになる。
バズビー博士は、別のインタビューで、こうも言っている。
「ECRRのリスクモデルを使った計算方式によると、チェルノブイリ事故が原因でがんのなった人の数は140万人でした。我々はほぼ同数の人たちが福島第一の件でがんを発病するであろうとみています」(チェルノブイリ事故25周年でのインタビュー)
おそるべき予測である。
日本政府はどう見ているのか。
文部科学省が、6月24日付で出した「放射能を正しく理解するために―教育現場の皆様へ」という文書がある。
ここには
チェルノブイリ原発事故では、小児甲状腺がん以外のがんの増加は認められていません
放射線の影響そのものよりも、『放射線を受けた』という不安を抱き続ける心理的ストレスの影響の方が大きいと言われています」(P12)と書かれている。
http://www.mext.go.jp/component/a_menu/other/detail/__icsFiles/afieldfile/2011/06/24/1305089_0624_1.pdf
子どもの甲状腺がん以外は、事故が原因のがんは出ていないというのである。「がん140万人」との差をどう考えたらよいのか。
原子力以外の分野で、科学的知見が、ここまで違うことがあるだろうか。
いま、チェルノブイリ原発事故の影響について、国際的に権威ある報告とされるのは、「チェルノブイリ・フォーラム」(IAEA、WHOなど国連8機関にウクライナベラルーシ、ロシアの代表が入って2003年結成)が主催して、05年9月にIAEA国際原子力機関)本部で開かれた国際会議だ。
20 年間の研究のまとめとして「放射線被曝にともなう死者の数は、将来がんで亡くなる人を含めて4000 人」と結論づけた。
この発表を受けて世界中のマスコミが「チェルノブイリ事故の影響は従来考えられていたより実はずっと小さかった」と報じた。
(つづく)