ヨウ素剤が配布されなかった責任

takase222012-07-08

神田のオフィス近くに「山形肉そば」という店がある。
山形の蕎麦は有名だが、「肉そば」が名物というのは聞いたことがなかった。河北町の店らしい。入ると立ち食いの雰囲気で、肉そば一杯380円。おお安い!また食べたくなる味だ。夜は飲み屋になるというのでまた行ってみよう。
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今週2日の朝日歌壇を忘れていた。お姉さんが入選。
銅版を燃やせば初夏の理科室にオーロラ色の炎ゆらめく
                     松田梨子(馬場、佐佐木選)
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国会事故調査委員会の報告書に書かれたヨウ素剤に関する記述には、私の知らなかった事実がいくつもあった。
まず意外だったのは、福島県が、十分な量のヨウ素剤を準備しようと努力していたことだ。
福島県は、発災直後から、住民に対するヨウ素剤の配布及び服用指示を行うため、ヨウ素剤の配備を進めていた。福島県が準備していたヨウ素剤の量は、原発周辺立地町及び福島第一原発から半径50km以遠の市町村の分も含んでおり、福島県は当初より県内の備蓄量の確認を行ったうえで、これらの住民の人数から不足している数の入手に動いていた》
しかも、ヨウ素剤投与の助言が13日にすでに出ていたという。
《安全委員会は13日、SPEEDIの情報がなく、緊急モニタリングのデータもなかったものの、スクリーニング検査結果を基準にヨウ素剤を服用するよう助言を出した。
しかし、この助言は福島県や各市町村には伝わらなかった。また、県知事は決定権限がありながら、住民等及び各市町村に対して、ヨウ素剤の配布・服用指示はしなかった》

服用指示は届かず、また不十分ではあっても情報があるのに県知事は指示を出さなかった。そのため、せっかく、ほぼ十分な量のヨウ素剤が準備されたのに、指示がないため、多くの自治体では配布・服用していない。
報告書は、責任の所在を明確に指摘している。
《県地域防災計画に定めるところによれば、住民等にヨウ素剤を配布・服用指示する権限があるのは、第一義的に福島県にある。その要件として挙げられるのが、原災本部による指示又は県知事の判断である。このような知事の権限の不行使が、多くの市町村でヨウ素剤の配布・服用が行われなかった要因の一つとなっている》
《住民に対してヨウ素剤の服用・指示がなく、住民の初期被ばくの低減措置が取られなかった責任は、緊急時に情報伝達に失敗した原災本部事務局医療班と安全委員会、そして投与を判断する情報があったにもかかわらず服用指示を出さなかった県知事にある》

だから、市町村が決定できなかったのは仕方がなかった。
《多くの市町村では、国や県の指示がないことに加えて、そもそも線量情報や炉の情報がない状況で服用の判断をすることは難しかったといえる》
市町村がためらった理由はもう一つあったようだ。
それは、安全委員会がヨウ素剤の助言文書に、
《「医師の管理のもとにのみ服用してください(14日)」「医療関係者の立ち会いのもと使用してください(15、16日)」など、医師又は医療関係者の立ち会いについて明記していた。その趣旨は「副作用に対応するため」である》
しかし、《厚労省によると、緊急時のヨウ素剤の配布においては、医師の立ち会いはあることが望ましいものの、緊急時は必要ではないとしている》
それに、そもそもヨウ素剤の副作用の確率は非常に低い》のだから、「立ち会い」は厳重な要件とみなさなくともよかったはずなのだ。
では、こうしたなかで、配布・服用指示を出した市町村はどうだったのか。
(つづく)