「胃ろう」しますか3―8割が嫌悪感

このところ、新聞を読んでいなくてまとめて読んだら、朝日歌壇は3回も過ぎていた。
3月19日付では梨子さん入選。佐佐木幸綱氏と高野公彦氏のダブル選。

ふわふわのものは何でも抱きしめてほおずりをする妹のくせ
                   松田梨子
このところ、梨子・わこ効果なのか、若い人というか小さい子たちの歌壇進出が増えている。朝日だけの現象なのか。例えば

お母さんのくしゃみ連続三回が聞こえたら家に春がやって来る
                   酒井那奈 (岡山市
なるほど。いまは花粉症でない人を探すのが難しいくらいだ。

今日ママが学校に来る楽しみで心がはずむ図書の手伝い
                   室 文子 (京都市

26日付は新聞回収に回されて読めなかった。
4月2日付を見ると、選者が3人になって佐佐木幸綱氏がいない。文化庁の文化交流使としてドイツを皮切りにヨーロッパを回っているという。
今週は姉妹そろいぶみで、まず、わこさん。高野公彦氏の選。

今朝急に空が水色に変わっててベートーベンが弾きたくなった
                   松田わこ
富山にも春が来たのか。梨子わこ姉妹はピアノを弾くのだ。
お姉さんの梨子さんは馬場あき子氏選。

先生が「大人の自覚」をくり返し金魚みたいにぼーっとしてくる
                   松田梨子
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胃ろうの話。
大井さんについては、このブログで何度も紹介させていただいた。http://d.hatena.ne.jp/takase22/20100606
痴呆老人(大井さんは「認知症」という言い換えには反対している)の考察から文明論にまで問題提起を深化させており、私自身の生き方まで考えさせられる。
さて、大井さんは、認知症患者の「家族」と胃ろうをつけようとしている「医師」向けにエッセイを書いたのだが、その理由はこうだ。
1) まず、日本に胃ろうをつけた人が60万人近くいて、その大部分が認知症の高齢者であること。
2) 胃ろうの延命効果は日本では多少あるにしても、概してその生存状態の質(クオリティ・オブ・ライフ)は良くないこと。
3) しかし、一番大きな理由は、胃ろうをつけることに関して、つけられる本人の意向を尋ねていない現実があるからだ。
 大方の反応は「認知症の人は『判断』できるのか?」というものだが、これには認知症の高齢者や「判断」についての健康な人たちの思い込みがあると大井さんはいう。
 実際に調査をしてみると、認知能力が落ちていても8割が「いや」と答え、2割が決めることができず、「はい」と答えた人はいなかったという。自分の年齢や生年月日も思い出せないのに、胃ろうにははっきり嫌悪感を表した人もいたという
ここで問題は、「『理性的判断』が出来ない認知能力の衰えた人の『情動的』反応は倫理的な妥当性を持ちえない」と多くの人が思っていることで、大井さんはこれに哲学的に反論していくのである。
(つづく)