死の灰は「無主物」? 3

takase222011-12-12

青い空をバックに、赤いヤマボウシの葉。
これは1週間ほど前の写真で、今はみな葉が落ちて冬枯れになっている。季節は師走の中旬へと突入しているのに、こっちはまだ年賀状を買ってもいない。時間の速さに取り残されそうだ。
今週の朝日歌壇。富山の姉妹はともに入選。
まず梨子さん。
里芋をむくのがうまいサッカー部に見とれてしまった調理実習
わこさんは2首。
大人っぽく私のブーツ歌い出す横断歩道の白だけ踏んで
前髪が切れていく音聞きながら目を開けるたび「まだ」と言われる

姉妹の歌にはいつもほっとさせられるのだが、震災の年末でもあり、つらい歌が多い。
たらちねの母の言葉は遠慮がち「フクシマノコメモラッテケッカイ」 (平塚市 三井せつ子)
福島の母が毎年コメを送ってくれるのだが、ことしは「もらってくれるか?」とおずおず尋ねてくるというのだ。悲しい。
家失くし故里失くし友失くし寂しき暮れに賀状は書けず 宮城県 桜井レイ)
お風呂場で声を殺して泣く我が子福島に残るパパ恋しくて 横浜市 蕪木由紀)
これから、一年で最も華やぐ、クリスマス、年末年始を迎えて、かえって寂しさが募ることもあるだろうな。心より被災者の幸運を祈りたい。
・ ・・・・
原発をやめよう」という論拠には、原子炉の構造上の弱点、技術の未確立、処理法のない廃棄物、地震が多発する日本の立地条件などさまざまある。
だが、死の灰を「無主物」だと言い張る東電を見ると、まずは、こういう人々と組織に、原発のような危ないものを任せてはおけないと思ってしまう。原発というハードが危ないという前に、東電という組織が危ないのではないのか。
東電は、これまでも、事故に関する発表でウソをつき、それがバレても反省せずにウソと言い訳を繰り返してきた。160ページもの損害賠償に関する説明書を住民に配った。事故時の操作手順書を、ほとんど黒塗りにして衆議院の委員会に提出した。
過去、何度も事故隠しをしてきたことでわかるように、この不誠実な体質は、以前から変わっていない。原発を止めていくと同時に、東電はじめ電力会社とその周辺の原発ムラを何とかすべきではないか。
いま、政府は東電を救済することを前提として事故処理等を進めているが、これでいいのか。今朝のある新聞の社説を紹介したい。
《政府が設立し た原子力損害賠償支援機構東京電力の株式の大部分を保有することで、東電を実質的に国有化する財務基盤強化策が浮上している。公的資金による資本注入と 取引金融機関の追加融資により、2013年3月期から4年間で3兆円を調達するという。福島第1原発廃炉に向けて政府出資で1兆5千億円、社債償還や設 備投資に充てるため新規融資で1兆5千億円を確保するものだ。
 国策に従った結果だとしても、「原発は絶対安全」などと事実と違う宣伝を繰り返 し、重大事故の発生を許した東電の責任は限りなく重い。政府は先月、東電と原子力損害賠償支援機構が共同提出した特別事業計画を認定し、賠償に要する総額 1兆109億円の支援を決めたばかりだ。この上、国費を投入するのは違和感を覚える。
 東電に反省の色が見られないからだ。2日に公表した社内事故調査委員会の中間報告では「想定を大きく超え、津波被害を防げなかった」などと自己弁護した。
 原発事故で拡散した大量の放射性物質によって多くの人々の生活が破壊され、健康が脅かされる中で、保身にきゅうきゅうとする態度は理解に苦しむ。
 政府の第三者委員会「経営・財務調査委員会」の試算によると、1〜4号機の廃炉費用は少なく見ても約1兆1500億円かかるという。膨大な出費を強いられるのは全て身から出たさびだ。
 合点がいかないのは国内未曽有の放射能汚染を引き起こしたにもかかわらず東電経営陣や所管省庁幹部らが誰一人刑事責任を問われていないことだ。たとえ過失だとしてもこれほど広範囲に放射性物質をまき散らして罪にならないというのは法の不備としか思えない。
 国有化するなら、事業内容をガラス張りにすることが不可欠だ。水増しして算出された疑いのある電気料金は、料金設定の前提となる原価の内訳を全て公表してもらう。料金の妥当性を国民・消費者が判断できる仕組みに変えなければならない。
 必要最低限の施設を除く資産の売却、人員削減など、徹底したリストラが求められる。
 歴代役員の責任の明確化と体制の一新は絶対条件だ。新たな経営陣は「原子力村」にしがらみのない人材を充てたい。発電、送電を一手に担う地域独占の経営形態は抜本的に見直すしかない。》(琉球新報
私は東電解体に賛成する。