ふくらむ処理費用

原発事故の後始末には、どのくらいのお金がかかるのか。
今朝の新聞の記事:
《民間シンクタンク日本経済研究センター(東京都)の岩田一政理事長は31日、東京電力福島第一原子力発電所の事故処理費用について、農漁業の補償を除いた最も楽観的なケースでも10年間で5.7兆円、条件によって20兆円以上になるとの推計を、内閣府原子力委員会で報告した。
 土壌汚染の処理費が不明なため、福島第一原発から半径20キロ圏内の土地を一律で東電や国が買い上げるとの極端な条件で計算した。
 この場合、土地の買い上げ費用が公示地価から4兆3千億円、立ち退きを強いられる人への所得補償は平均所得から6300億円と計算。
 さらに、原発廃炉費用は、米スリーマイル島原発事故を参考にすると10年で6兆円弱、旧ソ連チェルノブイリ原発事故を参考にすると約20兆円かかる計算になるという。汚染水や土壌の処理費、農漁業への補償は含んでいない》(朝日)
所得補償などは20キロ圏内の住人に限ったもので、しかも「汚染水や土壌の処理費、農漁業への補償は含んでいない」のだから、これで済むわけがない。
しかも、外国からの賠償要求までありうるという。
東京電力福島第一原子力発電所の事故で、日本が海外から巨額の賠償を負わされる恐れがあることがわかった。国境を越えた被害の損害賠償訴訟を事故発生国で行うことを定めた国際条約に加盟しておらず、外国人から提訴されれば日本国内で裁判ができないためだ。菅政権は危機感を強め、条約加盟の本格検討に着手した。
 原発事故の損害賠償訴訟を発生国で行うことを定める条約は、国際原子力機関IAEA)が採択した「原子力損害の補完的補償に関する条約」(CSC)など三つある。日本は米国からCSC加盟を要請されて検討してきたが、日本では事故が起きない「安全神話」を前提とする一方、近隣国の事故で日本に被害が及ぶ場合を想定し、国内の被害者が他国で裁判を行わなければならなくなる制約を恐れて加盟を見送ってきた。
 このため、福島第一原発の事故で海に流れた汚染水が他国の漁業に被害を与えたり、津波で流された大量のがれきに放射性物質が付着した状態で他国に流れついたりして被害者から提訴されれば、原告の国で裁判が行われる。賠償金の算定基準もその国の基準が採用され、賠償額が膨らむ可能性がある》(朝日新聞29日)
チェルノブイリ事故では、放射性物質が、北欧を中心にひろく世界に広まった。今朝の朝刊には、英国の羊が今もセシウム汚染で出荷規制されていることが報じられている。
ソ連は海外の被害にはいっさい賠償しなかったが、日本は、もし被害が出たら、そういうわけにはいかないだろう。
原発は、いったん事故となるといかにお金を食うものか。ちっとも安い電気ではない。