御茶ノ水駅から下りてくる本郷通りのイチョウがはげしく落葉している。
ただ、今年の紅葉は変調らしく、イチョウも例年のように鮮やかな黄色ではなく、緑交じりのまま散るものが多い。見ているうちにハラハラと葉が散って道路が落ち葉で埋まっていく。2〜3日で丸裸になるだろう。
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4月にチェルノブイリの取材をしたさい、ウクライナのジトミル州ナロジチ地区を取材した。きょうの朝日新聞の連載「プロメテウスの罠」にナロジチに関する話が載っている。
ここは原発から西に60km、「無条件移住地区」(第2ゾーン)に区分けされており、全員が外に出ることになっているのだが、実際にはたくさんの人が住んでいる。
http://d.hatena.ne.jp/takase22/20110518
私のDVD『チェルノブイリの今』にも、ナロジチから移住したいのだが、政府の補償が足りずにいまだに移住を待っている女性が登場する。地区の人口は約3万人から1万人に減ったというが、まだ3分の1も住んでいるのだ。
この地域を支援をしている日本のNPO「チェルノブイリ救援・中部」(90年、私は、この団体の支援活動を取材にウクライナに行った)へのナロジチ地区中央病院からの報告によると、児童の呼吸器系疾患が急増しているという。
「人口当たりの発生率は、1988年の11.6%が08年には同60.4%と、約5倍になった。大人の場合、心臓血管系疾患が最近の10年で急増している。98年の1.2%が08年には3.0%と、3倍近い」
チェルノブイリ原発事故関連の健康調査は、数多くあり、まったく異なる結果も報告されている。また、政治的なバイアスがかかっている場合もある。以上の数字をどう評価していいのか、私には分からないが、事故から時間が経過してからかえって増えているという点が気になる。低線量被曝、内部被曝は分からないことだらけだということを前提に、謙虚にさまざまな調査結果を受け止めたい。
「もっとも、放射線の害ばかりでなく、移住のストレスなどの要因も考えたほうがよい人もいるようだ。ナロジチ地区の診療所で33年間住民を診続けてきた医師のビクトル・ゴルディエンコ(62)は言う。
『移住した人と残った人を比べると、むしろ。移住した人のほうが早く亡くなる傾向もある。移住した人だって事故の時すでに被曝しているんです。新しい環境に対応できるかどうかも考えたほうがいい』」(朝日新聞13日付より)
汚染地から移住した人の方が早くに亡くなるという話は、チェルノブイリの立入り禁止地区に住み続ける人々から聞いていた。
http://d.hatena.ne.jp/takase22/20110615
これを現地の医師がはっきり認めている。
故郷から切り離される痛みの大きさは、それほど大きく、体も心も蝕んでいく。
いま、福島県内の避難者は9万3千人、県外は6万人を超えているという。15万人もが家を捨てて、これから冬を迎えるのだ。
みなさんの心身の健康が心配だ。