放射能よりストレスが大敵

きょう、「シルクロード雑学大学」でチェルノブイリ事故と福島の将来について講演した。
シルクロード雑学大学とは、20年かけてシルクロードを自転車で走りぬけるというプロジェクトをやっている人々の会で、私は15年ほど前に顔を出していらいのお付き合いである。場所によってはラクダに乗って砂漠を超えたりするそうで、いつか番組にできたらいいなと思っているがまだ実現していない。http://www.geocities.jp/silkroad_tanken/
その講演で強調したのは、チェルノブイリ事故を当時のソ連政府は、パニックを怖れてひた隠しにしたが、フクシマの事故の後の日本政府の情報隠しも犯罪的で、SPEEDIの情報も出されず、自治体への通知も異様に遅れ、結果として不必要に大量の放射性物質を周辺住民に浴びさせたことだ。
これが、政府、東電そしてマスコミへの国民の強い不信を生んだ元凶だった。
講演のあと、都内在住の女性が質問した。
「3月18日に雨が降ったのですが、べランダが緑に染まっていたのです。放射能ではないかと不安でたまりません」。
放射性物質に「色」があるはずもなく、また18日にはSPEEDIによれば風は太平洋に向けて吹いていたから、東京に大量の死の灰が降ったとは考えられない。スギ花粉ではないか。
しかし、こういう「都市伝説」めいた情報が噂としてでまわっている。
4月、5月ごろには、マスメディアは、「いたずらに不安を煽る情報はダメ」と言っていた。それで、私のチェルノブイリ映像も地上波テレビにほとんど相手にされず、結局DVDになったわけだが。夏以降は、「ここで何マイクロシーベルトでた」「あそこも危ない」と争うように報じている。これが不安を抑えることになっているとはとても思えない。
きょう、NHKアーカイブスで「チェルノブイリ原発事故」(1987年3月)が放送された。
スタジオに、今月の「ふくしま会議」に参加したベラルーシの女医、ナジェージダ医師が出てベラルーシの事故対策などを説明していた。(「ふくしま会議」は、今月11日から、清水修二 (福島大学 副学長)赤坂憲雄 (県立博物館館長)、玄侑宗久 (作家・福聚寺住職)らが呼びかけて開かれた。)
すべての子どもが定期的に内部被曝を含む検査を受け、治療は障害無料であるとか、住民は誰でも食物の検査ができるとか、汚染地域の住民全員のデータベースを作ったとか、フクシマにも教訓になる事例を紹介した。
彼女は、福島で、小さい子どもを持つ何人ものお母さんから、どうしたらいいか相談を受けたそうで、心配していた。お母さん方が放射能への恐れから過剰なストレスをかかえているように見えたという。
ナジェージダ医師は、「心の安定」を訴えた。
お母さんが神経質になると子どもにも良くない影響を与える、みなさんが自分の心を守ってください。パニックにならず、落ち着いてくださいと訴え、「ストレスを抱えて生きる方が放射能の危険より大きいことがあります」と言う。
ネットでは、こんな発言をする学者には「御用学者」、「原発推進論者」とレッテルを貼られている。
チェルノブイリ事故の健康への影響について、チェルノブイリ・フォーラムなどの国際会議では「心理的,精神的影響が重大な問題だ」と結論づけ、これが、脱原発派から、放射能の被害を「気のせい」にしていると批判されてきたからだ。
しかし、事故に起因するストレスが非常に重大な問題であることは否定できない。
内部被曝、低線量被曝に警告を発している崎山比早子、松井英介、肥田舜太郎などのお医者さんたちもみなストレスが大敵と警告を発している。
「ストレスは免疫力の大敵。ストレスをためないように楽しく笑う」ことが大事だ(肥田舜太郎氏)という。http://www.rui.jp/ruinet.html?i=200&c=400&m=254937
放射線から身を守るには、免疫力が大事なのだ。
もちろん、この前提としては、妊婦や若い人たち放射線をできるかぎり浴びない注意をするわけだが、その上で、毎日、前向きに明るく笑って生きることである。
「では、ストレスを抑えるにはどうしたらいいのですか」
先述のNHKの番組で、ベラルーシのナジェージダ医師に桜井アナが聞いた。
その答えはこうだった。
「情報が大切です。きちんと測定する必要があります」
やはり、この問題も、迅速で正確な情報の重要性に戻ってくるのである。