大阪の選挙の意味とは

takase222011-11-28

娘が、きょう駅のあたりでテレビが取材に来てたよ、という。
駅とは東京都の中央線のJR「西国分寺」駅。「にしこくん」というキャラクターが、「ゆるキャラ」の人気投票で全国3位になったそうなのだ。
写真は左から1位の「くまモン」(熊本県)、2位の「バリィさん」(愛媛県)、「にしこくん」。
http://nishikokun.jimdo.com/
しかし、駅前でインタビューしても、誰も「にしこくん」などというキャラクターの存在を知らないと答えたそうだ。私も初耳である。
それにしても、未曾有の国難に見舞われている日本で、「ゆるキャラ」がもてはやされているのはどういうわけなのか。
http://www.yurugp.jp/ranking.php?start=1&uk

こんな人気投票の話どころではない。大事なのは大阪である。
市長選、やはり橋下氏だったか
民主・自民が手を組んだ上に、共産党が「反ハシズム統一戦線」で独自候補を下ろし平松氏支持に回るという異例の動きに出て、接戦になるのではと思っていた。大阪での共産の基礎票は相当なものである。それが橋下氏のあれほどの圧勝になるとは・・・。
敗因の一つは、平松氏が、橋下氏の「構想」に対して防戦一方になり、「私は大阪をこうします!」と前向きのアピールをしなかったことだと思う。ただ、自民から共産までのバックがあることが、明確な方向性を打ち出すことを困難にしたともいえる。はじめから「守り」の選挙を余儀なくされたわけである。
橋本氏の人気のポイントは既成利権の批判で、それは市職労、教組にとどまらず、「脱原発」「発送電分離」をはっきり打ち出すなど電力会社にも及ぶ。今の閉塞状況にあっては、小気味よく響く。既成利権批判は朝鮮総連にも適応され、朝鮮学校への無償化に関する橋下氏の方針は、首長のなかで最もわかりやすいものだった。
http://d.hatena.ne.jp/takase22/20100804
さっそうとして、わかりやすい弁舌とリーダーシップに大阪人は惹かれたのだろう。稀に見る強力な政治指導者の誕生である。福祉の大幅削減をまねく橋下氏の政策を、弱い立場の庶民が「改革に期待します」と支持する図は、小泉首相規制緩和で非正規労働が増えるのを、非正規労働者自身が支持したのにダブって見える。
ただ、(今ごろ書くのは遅いのだが)橋下氏の主張には、トリックが多い。
例えば、橋下氏は府の財政を大きく改善し黒字化したと誇り、それをきょうのNHKテレビニュースでも報じていたが、これは実態と異なるとジャーナリストの松本創氏は書いている。
08年2月6日、橋下氏は知事就任挨拶で職員にこうぶった。
「今の大阪は破産状態にあることを皆様方に認識して頂きたく思います。 大変厳しい言い方になるかもしれませんが、皆さん方は破産会社の従業員である。その点だけは、厳に認識をしてください」
そして今回知事を辞任したときは、
大阪府職員の皆さん。皆さま方は優良会社の従業員であります。このことを厳に認識して、これからの大阪府政、しっかりと良くしていってください」と言って「改善」をアピールした。しかし、松本氏によれば;
《府債残高は2008年度末で5兆8400億円、09年度末で5兆9220億円、10年度末には6兆739億円。橋下の就任以降も増え続け、過去最高額に上っている。その結果、実質公債費比率(自治体の収入に対する借金の返済ぶりを示す数値。数値が高いほど返済で首が回らない状態)は17.6%(10年度)に達した。人口規模や産業などの条件が近い神奈川県9.9%、愛知県13.4%と比べてもかなり高い。このままでは17年度末に26.4%に達し、早期健全化団体に転落すると府が見通しを示しているほどだ。
 一方、橋下がことあるごとに槍玉に上げてきた大阪市の市債残高は10年度末で5兆1048億円。5年前から比べると、約4000億円減った。それに伴って実質公債費比率も下がり、10年度で10.2%。横浜・名古屋・京都・神戸の五大市(最も古い政令指定都市)の中では最も低い。バブル崩壊以降、府市ともに巨額の借金を抱えることになったが、少しずつでも着実に改善されているのは市のほうなのである。(略)
私学助成金の引き下げ、府立大学運営交付金の削減、国際児童文学館など文化関係施設の廃止や補助金打ち切り、高齢者在宅支援事業の廃止、小規模事業者を支援する補助金の見直し・・・。橋下は、さまざまな反対を押しのけて、こうした部門の予算カットを行ってきた。しかし、府民の暮らしに痛みを強いながら、「本丸」たる府財政は一向に改善が見られないとすれば、「橋下改革とはいったい何だったのか」という疑問が湧くのも当然だろう》
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/26964
これでは「財政再建に成功した」というのは、事実ではないことになる。(つづく)