11日は衆議院議員会館で、「ワシントン・北朝鮮人権委員会拉致報告書」出版を記念したシンポジウムがあった。
私は行けなかったが3百名以上が参加し盛況だったようだ。
《北朝鮮人権委員会は米国の各界の専門家によって作られ、北朝鮮の人権問題に着目するNGOで、既に政治犯収容所に関する脱北者の聞き取り調査報告書等を出版している》。
この本は、《今年5月に、米ワシントンで出版された英語による初の拉致報告書「北朝鮮による外国人拉致犯罪報告書」(「Taken!」)が話題になり、日本でも出版されることになったもの》だそうだ。
ここで、北朝鮮人権委員会事務局長で、元米国防総省朝鮮半島分析官のチャック・ダウンズ氏が講演した。
私は2000年ごろ、ソウルで開かれた国際会議でダウンズ氏に会い、家族会や救う会が訪米するときに、力になってくれそうな有力者として彼を紹介した。その後、彼は、日本からの訪米団が行くたびに面会し相談に乗ってくれたようだ。
《チャック・ダウンズ氏は、強制的であれ、自由意志であれ、移動の自由も言論の自由もない北朝鮮に抑留された人々はすべて拉致と考えるべきだと述べた。そして、朝鮮戦争中に専門家2万人を含む約8万3千人が拉致され、帰国事業として在日朝鮮人と日本人妻約9万3千人が拉致された他、世界14か国から約18万人が拉致されたと述べた(図書巻末の拉致被害者一覧では180,108人としている)。また、独裁政権下の2千万人の北朝鮮人民も解放されるべきだと述べた。
さらに、米国人デイビッド・スネドン氏が拉致されていることも紹介した。今回の出版では、スネドン氏の両親のインタビューも新たに掲載されている》(救う会ニュース)
実はまだ本を読んでいないのだが、「世界14カ国から18万人が拉致された」とは、どういう根拠なのか興味がある。ダウンズ氏は、いい人なのだが、かなり粗い議論をすることがある。読んでみなくては。
ところで、アメリカ人拉致被害者とされる「デイビッド・スネドン氏」(David Sneddon)とはどういう人か。
彼については、ダウンズ氏が今年6月2日の米下院外交委員会公聴会で取り上げている。
スネドン氏は、ユタ州出身の24歳のモルモン教徒で、宣教師として韓国にいたので韓国語はペラペラで、中国語も話せたらしい。中国語をブラッシュアップするため北京大学で短期に学んだあと、2004年8月に中国の雲南省に旅行に行った。
北京に戻る友達と別れ、金沙江の虎跳峡に向かった。そこからチベット族自治区の中甸へと登っていく予定だった。彼は、現地の朝鮮料理店に3回行ったあと失踪したという。
家族は何度も雲南省に行って、現地で詳細な聞き取りをしたり、顔写真つきのポスターを貼ったりして探し続けたが、消息は不明のまま時間が過ぎていった。
日本では大震災のかげで忘れられた感のある拉致問題だが、ここにきて、動きが出てきた。
先月、《国連で北朝鮮の人権問題を担当するマルズキ・ダルスマン特別報告者は20日、拉致問題について「法的な面に注目することは有用」と話し、国際刑事裁判所の手続きを用いた捜査、起訴など司法の手段を通じて解決を図ることも「検討に値する」とした。ニューヨークの国連本部での記者会見で述べた。
ダルスマン氏はインドネシアの元検事総長。進展が見られない拉致問題に「司法手続きが役立つかもしれない」との見方を示した。具体的な手段や手続きについては言及しなかった。来年1月中旬に訪日し、拉致問題などをさらに調べるとしている》
(10月21日共同通信)
国際刑事裁判所に持ち込む案が、こうした公職の人から出てきたことに注目したい。