黄ジャンヨプ氏来日によせて

takase222010-04-07

北朝鮮労働党の元書記、黄(ファン)ジャンヨプ氏が来日した。
私たちは、拉致を人権問題としてとらえようとしてきたのだが、報道も世論も、それに逆行した雰囲気になっている。はたして黄氏が、日本人拉致の事実、拉致被害者の消息を知っているのかどうかだけに関心が集中している。
産経4日の「主張」には、「日本人被害者の情報など拉致問題解明の手がかりになる話を漏らさず聞いておく必要がある」、「拉致被害者救出の世論を盛り上げるためにも、金元工作員来日を実現させたい」と書かれていた。
北朝鮮帰国者の生命と人権を守る会」の三浦小太郎さんが、《こういう主張が「日本は拉致だけに関心」という誤解を生む》と題して批判している。
《このようなマスコミの「主張」が、「日本は拉致事件にのみ関心があり、他の北朝鮮の人権問題には無関心」という誤解を生みます。この「主張」の中に一言も人権問題への視点がないことに、書いている人がどれだけ意識しているのでしょうか。》
《むしろ、黄氏に聞くべきは、幹部としてみた北朝鮮労働党の体質やその弱点でしょう。黄氏は人権問題が北朝鮮問題の大きな鍵であるといっている。そういう意見の方から、拉致についてだけ聞いても仕方がない。なぜ人権問題がかぎなのか、そしてそれをどうぶつけることが最も効果があるのか、そこが今回の来日で最も効くべきところではないかと思いますが、この「主張」にはそういうニュアンスはまったく感じられない》
《重要なのは、朝鮮総連主体思想研究会が、北朝鮮からどのような命令を受け、またどのような存在として北朝鮮の幹部たちは認識していたのか、これは聞いてみたい。黄氏の日本におけるパートナーは主体思想研究会の井上周八氏だったと思いますが、北政権が彼らをどう利用しようとしていたかは、拉致よりは黄氏は情報を持っているかもしれない。今思いついたが、日本に来るのなら朝鮮総連向け、主体思想研究会向けのメッセージくらいは発するよう、マスコミも政治家も求めてみたらどうかな。》
http://hrnk.trycomp.net/news.php?eid=00209
同感である。
この非公開の講演会に参加した三浦さんが今朝、このサイトで黄元書記の講演内容を紹介しているので、お読みください。
また、同じくこの講演会に参加した「特定失踪者問題調査会」の荒木和博さんは「調査会」ニュースで感想をこう書いています。
《せっかくの機会だったのですが、家族会の皆さんが中心の集まりだったこともあり、ピッチャーにバッティングの教えを請うているような感じで、お互い隔靴掻痒というか、率直に言えば今一つかみ合っていなかったように思いました。
 ご家族の方は当然ながら、何か拉致について知らないだろうかということで色々質問するのですが、黄さんは「拉致をしていた」ということ以外にはほとんど知らず(拉致された日本人を見たとしても気付かなかったのでしょう)、特段の情報は出てきませんでした。私が印象に残ったのは「金正日の料理人(藤本健二氏)のことすら向こうにいたときは知らなかったのです」という一言でした。それほど隔離された社会ということなのでしょう。増元さんから「北国新聞」に掲載された主体思想塔の案内人の日本人女性のことを知りませんかとの質問がありましたが、「知っていたら言わないはずがありますか」とのお答えでした。
 一方黄さんの方は「北朝鮮に圧力をかけるには北朝鮮の人権問題全体でやっていくべきであり、日本のような大国が拉致だけを主張するのはかえってマイナスである。日米韓の連携を密にしていかなければならないし、民間同士で北朝鮮に圧力をかけていくための組織をつくりたい」という趣旨の話でしたから、家族会の人たちにとってはちょっと物足りなかったのではないかと感じました。
 私自身は国家の主権侵害としての拉致は日本政府が対処すべきことで、人権侵害として国際社会に訴えるためには拉致だけではだめだと思っていますから、少なくとも後半は黄さんとそう変わりません。黄さんには「2・16宣言」のことも話し宣言文もお渡ししました。金正日体制の打倒は常にご本人も言い続けていることですから、その点は方法論に多少違いはあるものの、同じ方向を向いて行けるように思います。》
今後、金賢姫氏も招請するようだが、こうした意見を参考にして実のある来日にしてほしい。