CO2温暖化説はウソなのか?

takase222013-01-15

きのうのシンガポール空港の祈祷室に続いて、この写真は、その近くにあった「瞑想室」(メディテーション・ルーム)。
興味津々で中を覗くと、12〜13畳くらいの板敷きの空間で、正面には白く塗った木の枝のオブジェがある。何枚かのマットが置いてあった。誰もいないし、せっかくだから坐禅してきた。
しかし、空港に瞑想の部屋まであるとは・・・。シンガポールおそるべし。
こんど空港で時間ができたら、保育室、授乳室、クリニックなどの附属設備をのぞいてみよう。お国柄や民度がうかがえそうだ。
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恐ろしい暑さの夏がすぎたら、こんどは記録的な寒さと雪がやってきた。
異常気象は日本だけの話ではない。
一昨年のタイの大洪水は、日系企業サプライチェーンに甚大な被害が出たとニュースになったので記憶に新しい。3ヵ月以上続き、400人以上の犠牲者が出る大惨事となった。
米国(アラスカ、ハワイ州を除く)の平均気温は昨年、記録が残る1895年以降で最高になり、中部がこの半世紀で最悪の干ばつに襲われる一方、ニューヨークなどを襲った超巨大ハリケーン「サンディ」は820万世帯を停電させ、被害総額が800億ドル(約6兆5000億円)に達する可能性があるという。アメリカの異常気象の程度を示す指数は、過去2番目を記録した。
イギリス気象庁は、2012年の国内降水量が、過去最多だった2000年よりわずか6.6mm少ないだけの、記録的な多雨だったとする暫定統計値を発表した。
などなど、異常気象の例はきりが無い。(WMO(世界気象機関)では、「異常気象」は25年に一度しか起こらない気象現象と定義している)
それなのに、メディアでも政府発表でも、地球温暖化に言及することはめっきり少なくなった。
なぜだろうと考えて行き当たったのが、原発事故後の言論状況だ。

東日本大震災で引き起こされた福島第一原発の事故で脚光を浴びた広瀬隆氏(作家)や小出裕章氏(京大原子炉実験所助教)が、CO2が地球温暖化の原因になっていることは「ウソだ」と言っているのだ。
広瀬隆氏は、原発事故以前から、『棺の列島 原発に大地震が襲いかかるとき』、『東京に原発を』、『危険な話 チェルノブイリと日本の運命』などの著作で、原子力発電の危険性を警告し続けてきたことで知られる。しかも、福島の事故がほぼ警告どおりに起きたことから、事故後一気に注目度が上がり、彼の絶版になった古本には軒並み数千円の値がついていたものだ。
広瀬氏の持論は、一番大きな問題は、「CO2が地球の温暖化を進めるので、原発を増やさなくてはならない」と日本人が洗脳されてきたことだというもの。
日本政府と電力会社が、原子力はCO2を出さないクリーンエネルギーだと宣伝して原発を推進してきたから、これへの批判としては理解できる。
しかし、広瀬氏はそこにとどまらない。さらに、「CO2温暖化説には全く根拠が無い」と断言している。
そして、「人間の出す二酸化炭素によって地球が温暖化している、という途方もない仮設が出てから、(略)エコ、エコと叫ぶ蛙の大合唱で、CO2狩りに熱中する時代」を「おそるべき魔女狩りの時代」だと嘲笑する。
一方、小出裕章氏は、京大で反原発の立場で研究、啓蒙を続けてきた研究者で、「熊取六人衆」の一人として冷や飯を食わされてきた。
福島の事故のあと、反原発運動では「英雄」として崇められ、今も全国から講演に呼ばれている。
小出氏には、私も人形峠のウラン採掘問題で大変お世話になった。誠実で尊敬できる研究者だと思う。このブログにも何度か登場してもらった。http://d.hatena.ne.jp/takase22/20110615
小出氏もまた、「原子力こそクリーンだ」という原子力推進派を批判するなかで、二酸化炭素地球温暖化の原因だと言うのは科学的に正しくない」と発言するにいたっている。
これまでは、現体制に既得権を持つ保守派ないしは現状維持派が、CO2温暖化論を政治的な「リベラル」とみなして「ウソだ」と攻撃したものだった。
だが、今ここに見られるのは、CO2温暖化論を原発推進のためのまやかしの議論だとして、急進リベラルの一部が批判する論陣を張っており、議論の構図は錯綜している。
ただ、反原発の強力なイデオローグの一部が、CO2温暖化論への強い懐疑または否定を表明していることが、これまで環境問題に熱心だった人々のあいだで温暖化問題への関心を失わせる結果を招いているのは間違いない。
いったい、何が問題なのか。
環境問題にはさほど詳しくない私だが、ジャーナリストの佐藤由美さんにいろいろ教えてもらいならがら整理してみたい。