裁判をめぐるフレンジーな状況

下肢のみが映る原発作業員躊躇いがちに復旧語る (山形市 渋間悦子)

行く春や傷みてまはる水の星 (千葉市 田村洋子)

この星に人のゐるべく水温む (横浜市 山本 裕)

(9日、朝日歌壇・俳壇より)

報道ステーション」を見ていたら、朝日新聞の五十嵐浩司君がスタジオでしゃべっていた。以前も時々出ていたが、レギュラーのコメンテーターになったらしい。彼とは高校の同級だ。勉強も運動もできる優等生だった。この時期、影響力のある番組のコメントは大変だろう。
コメントを聞いていると、ウンチクを盛り込もうとしてちょっと分かりにくい感じがあった。やはり新聞向きの語り口になっているのか。この辺がテレビのコメントの難しいところなのだろう。古館さんがいかにテレビ的にすごいか際立つ。
さて、先日の日記で触れた、堀江貴文氏の事件について。
ライブドア事件といわれるものには三つあるという。
一つは、本来なら次期に記すべき収入を前の期につけたこと。
二つ目は、ある会社を買収するさい、その会社の評価額を本来よりも高く見積もったとされること。
三つ目は、ライブドアが自社株を売った利益は資本利益にすべきところ営業利益にしたとされること。
いずれも、2年半もの実刑にされるような犯罪なのか、疑問である。
三つ目についていえば、ある会社を買収するため、ライブドアが株と交換で現金を得ようとした。株を売ったら、予想外に利益が出た。売ったのは、ライブドアファイナンスで、利益を営業利益として計上したが、連結決算では利益が出たことにはできないという。
しかし、平成13年に企業会計基準の変更があるまでは、子会社を通じた親会社株式売却利益は、親会社の連結決算で売り上げから消去すべきとはされていなかった。この企業会計基準の変更は、日本公認会計士協会の通達などで知ることができるだけで、専門家でも知らない人がいたという。
主任弁護人、弘中惇一郎氏が書いた上告趣意書では、
《本件は故意犯であるから、有価証券報告書に虚偽の記載がなされたことの認識が必要である。しかし、堀江氏は、有価証券報告書上にライブドア株式売却益約37億円の利益計上をすることが会計基準上誤った取り扱いであることを認識していなかった》とある。
実際、堀江氏自身は、「もうかった!」と単純に喜んでいたという。
複数の論点があり、詳しくは「上告趣意書の要旨」を読んでください。
http://ameblo.jp/takapon-jp/entry-10248198738.html#main
この趣意書のはじめにはこうある。
《裁判は法と証拠に基づいて行われなければならない。しかし、メディアが醸成する異常な雰囲気が社会を覆い尽くすような場合には、それが困難になる場合がある。本件当時、メディアは、ライブドアや被告人のすべてが悪いかのような誤解を振りまき、被告人に対してフレンジー(狂乱、逆上)な状況が作り出され、一審判決及び原判決はこれに影響されてしまった。最高裁判所は、司法の最後の砦として、法と証拠に基づき冷静に判断していただきたいと切に願う》
弘中さんの取材を始めるまで、私自身が「ロス疑惑」の三浦和義氏や「薬害エイズ」の安部医師はいずれも「クロ」と思っていたことを振り返ると、メディアの持つ影響力の大きさ、怖さにあらためて気づかされる。