福島原発で何が起きているのか8

先週、震災被災者を支援するグループを訪ねたときのこと。
スタッフの大学院生が私にこう尋ねてきた。
「マスコミは、電力会社が大スポンサーだからリアルな情報を出さないって、本当ですか?」
ネットの世界では常識のように広まっている認識で、私の周りにもこう信じている人は多い。マスコミ報道がもっとも存在意義を発揮すべき国難の時期に、逆に、かくも信頼を失うとは・・・。原発事故自体とは別に、解明されなければならない。
真相は分からない。ただ私も、テレビや新聞では事故の深刻さがつかみにくいと感じていた。まず、テレビに登場する東電や保安院、政府の発表がひどかった。事態を小さく小さく見せようとしているのが、表情と言葉の表現にはっきり現れていた。そして多くの場合、スタジオ解説がこれらの発表をベースにすることで、疑惑を招いたのかもしれない。
私が信頼できそうだと思ったのは、NPO原子力情報資料室」(http://www.cnic.jp/)の情報だが、ここで発言している後藤政史氏らの原発反対派の学者は、テレビや新聞にはあまり出てこないように感じる。テレビ局が民衆の不安を煽らないように過剰に気を使っている可能性もある。
ただ、危機が進んで、保安院などが、事態を小さく見せようにも取り繕えなくなってきた。
東電や保安院の発表、新聞記事でも怖い事態が続いていることが十分に分かる。
きょう東電は、厚さ16センチの鋼鉄製の原子炉圧力容器に「穴があいている」可能性を認めた。
《東電は28日、2号機のタービン建屋から外へつながるトンネルとたて坑にたまった水から、毎時1千ミリシーベルト放射線が測定されたことを明らかにした。東電はまた、1〜3号機の核燃料を入れた鋼鉄製の圧力容器が損傷して容器の外と通じた状態になっている可能性を認めた。圧力容器の損傷部分から放射性物質を含む水が漏れ、高濃度の汚染を広げている可能性がある。 (略)
 こうした汚染水ははどこから漏れているのか。有力視されているのが、燃料棒が収められている原子炉の圧力容器だ。
 1〜3号機は津波で非常用の電源が失われ、圧力容器内の水を循環させて冷やすシステムを動かせなくなった。このため圧力容器につながる配管にポンプを接続し、水を注入する作業が続いている。核燃料を水没させ、発電停止後も出続ける崩壊熱を直接、冷やすのが狙いだ。
 しかし1〜3号機いずれでも、圧力容器の水位計の数値は思うように上がっていない。東電は28日未明の会見で、注水しても圧力容器が満杯にならない原因を、「(圧力容器の)下の方に穴が開いているイメージだ」と認めた。穴が開いた理由は「わからない」という。

 東電は、水面から露出した核燃料が過熱して損傷した可能性を認めている。専門家によると、核燃料を束ねた燃料棒が損傷して崩れ、圧力容器下部に落下してかたまりになると、表面積が小さくなって効率よく水で冷やせなくなる。極めて高温になった燃料が圧力容器の壁を溶かして穴を開けた可能性もある。
 この状態で注水を続けた場合、放射能を高濃度に含む水の外部流出が長引く可能性があるが、東電は、核燃料を冷やすには注水しかないとの立場だ》(朝日新聞
原子炉を冷やすために水を入れ続けなければならないが、「穴があいている」ので高濃度放射能水が漏れてくる。でも、「注水しかない」というのだ。
水漏れで放射線量が高くなると作業に差し支えるから、処理しなくてはならないが、どこかに捨てるわけにはいかない。
今の作業を続けていくことに明確な見通しがあるのか、非常に疑問だ。事実関係が少しづつ明らかになってくると、事態はむしろ悪くなっていると思う。
国際原子力機関天野之弥事務局長は、東日本大震災で被災した福島第1原子力発電所について「事故の解決には依然程遠い」状況との認識を示した。NYTの電話インタビューで明らかにした。原発の危険な状況があと数週間は続く可能性を示した》(ロイター)
考えたくないが、最悪の事態を想定して、思い切った策を採ってほしい。こう思っていたら、小沢一郎氏の発言がニュースになった。
民主党小沢一郎元代表はきょう、岩手県で《福島第1原発の事故に関し「原子力の溶融がずっと前から指摘されていたが、原子力安全・保安院、東電、内閣は明確な話を避けてきた」と述べ、政府や東電の対応を厳しく批判した》
《小沢氏は、現在の事故対応について「思い切った手だてなしに(原発に)水を入れる、バルブを開けることを繰り返せば、放射能は広範囲に飛散し、汚染が広まることがある」と疑問を呈すとともに、「(政府は)国民、地域の皆さんに正直に話をして、理解を求めた上で、思い切った作業をするべきだ。このままずるずる行ってしまうと日本全体がめちゃくちゃになる」と強調した》(時事)
いっしょに幸運を祈りましょう。