電力自由化を勉強しよう10−不足するPPSの電気

takase222012-02-16

事故原子炉の中の温度がどんどん高くなっているとの報道で、ハラハラしていたら「温度計が壊れていました」だと。
《福島第1原発2号機で原子炉圧力容器底部の温度計の数値が異常に上昇した問題で、東電は14日、他の温度計の点検を進め、圧力容器に41個ある温度計のうち計8個に異常がみられると発表した。
 一時、400度を超えた温度計1個のほか、2個に温度を測るもととなる電気抵抗値に異常が見つかった。残りの5個は故障と判断していた。東電は残る33個の温度計で圧力容器全体の温度傾向を監視する。
 経産省原子力安全・保安院から、故障とみられる温度計に代わる温度監視の策を求められたことについて、東電は「新たに温度計を設置するのは難しい。実現可能性含め対応したい」としている》(共同)(写真は圧力容器の模型)
「壊れていた」で安心かというと、そうではなくて、かえって心配になる。
先月、2号機の格納容器内に内視鏡を突っ込んでも、ぼやけた画像しか映らず、よく分からないかったではないか。http://d.hatena.ne.jp/takase22/20120120
圧力容器の中の様子などさらに分からない。何とか様子をうかがう方法の一つが、温度の測定なのだが、今の段階で温度計が8個も壊れているとなると・・・
これから何十年もかけて4機もの事故原子炉を「処理」していくわけだが、測定機器がこんな状態では、先が思いやられる。
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PPSへの需要が急激に高まっている。
脱原発を宣言した城南信用金庫などは;
《品川区に本店を置く城南信用金庫はことし1月、PPSからの電力購入を始めました。東京電力との契約を解除し全85店舗のうち75店舗の電力をPPS最大手のエネットから購入しています。試算によりますと1年間の電気代およそ2億円のうち1000万円を削減できるということです。PPS導入のきっかけは福島原発の事故に伴う既存の電力供給制度への疑問があったと担当者は話します。城南信金の西畑秀人常務理事は「去年4月から『原発に頼らない社会をつくる』キャンペーンを展開してきた。(PPS導入で)年間1000万円、率にして5.5%を削減できる。東京電力による電気を使わなくてよいので原発に頼らない安心できる社会の実現にさらに一歩近付いていけると考えている」と話します。》(MXTV)
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さて、その「エネット」池辺裕昭社長のインタビュー続き。
PPSに人気があるのに、シェアが伸びないのは?
「電力会社の送電網の使用料(託送料金)が高い。小売料金の2割程度を払っており、大きな費用負担になっている。算定の根拠が不透明で、もっと安くしてほしい」
また、池辺社長は
「現在は全国的に電力が不足し、工場などで余剰となっている発電設備からの電気の調達は難しい」とも語っている。
実際、茨城県ではこんな事態になっているという。
《県が2012年度に使用する電力の一般競争入札東京電力が参加を見送った影響で、県の上下水道事務所と県立医療大が公告した計19件の入札が特定規模電気事業者(PPS)の応募ゼロで不調に終わったことが2日、茨城新聞社の調べで分かった。『福島第1原発事故を機に契約件数が増加し、電力供給に調達が追いつかない』(大手PPS)ため、24時間稼働の新規大口需要家が敬遠されたとみられる。県は『水道や下水処理を止めるわけにはいかない。PPSの応札がなければ、入札不参加でも東電しか選択肢がない』とし、4月から大口電気料金の平均約17%値上げを発表した東電と競争性のない随意契約を結ぶ公算が大きくなっている。
電力の一部自由化を受け、県は04年度に電力の一般競争入札を導入。しかし、東電は昨年11〜12月、『東日本大震災原発事故の影響で他社と価格競争できる状況にない』と入札不参加の意向を県に伝えた。1月には大口料金の値上げを正式発表した》(茨城新聞2月3日)
こうなると、東電の高い電気を買うしかないのである。
電力自由化の一部である、小売りの自由化をやったといっても、非常に限界がある。発送電分離を含む、本格的な自由化をやらなければ。