イラク侵攻に使われたウソ4−グリーンゾーン

takase222011-02-28

ICCへの付託が可決された。
《国連安全保障理事会は26日、リビア情勢について非公開会合を開き、多数の死傷者が出ているデモの武力弾圧は人道犯罪にあたるとして、国際刑事裁判所(ICC)に捜査を付託することや、最高指導者カダフィ大佐の資産凍結や全面的な武器禁輸などを盛り込んだ制裁決議案を全会一致で採択した。
 安保理戦争犯罪や人道に対する罪を扱うICCに捜査の付託を決めたのは、2005年3月のスーダンダルフール紛争に関する決議に続いて2例目。決議は「現在、広く組織的に起きている市民への攻撃は人道への罪に等しい」と指摘したうえで、ICC検察官に「(反政府デモが始まった)2月15日以降のリビアの状況」について捜査を付託した》(朝日新聞
リビアではカダフィが徹底抗戦の構えを崩さず、内戦状態になる可能性も出ている。
さて、今年になって、イラク戦争に関する映画を2本続けて観た。
アカデミー作品賞の「ハート・ロッカー」とマット・デイモン主演の「グリーン・ゾーン」だ。
グリーン・ゾーン」はこんな内容。
《砂漠に隠された大量破壊兵器の所在を突き止めるという極秘任務につく米軍兵士のミラー(デイモン)は、調査を重ねるも兵器の痕跡すら発見できず、情報の信憑性に疑問を抱き始める。国防省の動きを不審に思ったミラーは部隊を離れ、CIAのブラウンと独自に調査を開始するが、そこには全世界を揺るがす衝撃の真実が待ち受けていた》(映画comより)
イラク侵攻をめぐるアメリカ政権内の激しい対立と情報操作が描かれている。
実際、大量破壊兵器の存在を強く主張しイラク侵攻を主導したのが、チェイニー副大統領室と国防総省、情報を疑問視し、侵攻に慎重だったのが国務省とCIAだったといわれている。
映画では、大量破壊兵器の情報源は「マゼラン」というイラク人。ウォール・ストリート・ジャーナル紙の女性記者が、その情報を政府要人から得て記事にした結果、その情報が既成事実として事態を動かしていく。
ミラー(マット・デイモン)が、女性記者をつかまえ、問いただす。
「マゼランの情報はすべてガセ情報だ!」
情報源はいえないと逃げる女性記者。ミラーがさらに詰め寄る。
「そもそもWMDが開戦理由なんだぞ。君は優秀な記者なのに、『WMDは存在する』なんてうそを書いてきた。なぜなのか説明してもらおう」
23日の日記にも書いた『ニューヨーク・タイムズ』のジュディス・ミラーが、この女性記者のモデルだ。ピュリッツァー賞受賞歴もある著名記者だ。
彼女の記事は、イラク侵攻へと世論と政界を引っ張る役割を果たした。
《ニューヨーク・タイムズは2004年五月に編集局長の見解として「2001年以降のイラク報道は問題含み」と認め、具体例として12本の記事を挙げた。このうち10本はミラーが単独か連名で書いた記事だった。
 ニューヨーク・タイムズは伝統的にリベラルな論調を持ち味にしてきた新聞だ。にもかかわらず、イラク戦争ではブッシュ政権を支えるネオコン(新保守主義者)勢力に肩入れするような報道を続ける格好になったのはなぜなのか。
 一言で言えば、戦争正当化に向けてマスコミを誘導したい政府高官のほか、フセイン政権の転覆を願っていた亡命イラク人のリークに頼り過ぎたからだ。その筆頭格がミラーだった。》(牧野洋氏のブログより)http://gendai.ismedia.jp/articles/-/642
比類ない情報統制国家、北朝鮮についても、亡命者情報に頼らざるを得ない場合がある。
政治が情報を利用・操作することの危険性に常に注意しておきたい。