イラク侵攻に使われたウソ2

takase222011-02-20

セイン政権の大量破壊兵器疑惑の証人だったイラク人亡命者、ジャナビ氏(写真)がウソをついていたことを認めた記事が、波紋を広げている。
英紙「ガーディアン」の続報によれば、コリン・パエウル元国務長官の首席補佐官だったローレンス・ウィルカーソン氏( Lawrence Wilkerson)がCIAの責任問題を提起した。
ウィルカーソン氏は、チェイニー副大統領らの強引な戦争誘導政策に対立して下野した人で私は2度インタビューしたことがある。率直に当時のブッシュ政権の誤りを認めていた。
パウエルは、イラク大量破壊兵器所持の証拠を提示した国連演説の直前、CIAからレクチャーを受けている。その情報を信じたパウエルの指示で、演説の草稿を書いたのが、ウィルカーソン氏だった。
彼は今回のジャナビ氏の告白について、CIAはあの時、パウエルにこの情報をどう伝えたのかが問われるとコメント。ジャナビ氏をCIAの欧州支局長が疑っていたのにもかかわらず、なぜCIAは絶対に確実だと伝えたのかと責任を追及している。(16日)
http://www.guardian.co.uk/world/2011/feb/16/curveball-questions-cia
続いてパウエル氏自身も発言。
あの国連演説は、のちに根拠がないことが判明し、パウエル氏にとって最も大きな屈辱となったから黙ってはいられない。
CIAと国防総省に対して、コードネーム「カーブボール」ことジャナビの情報が不確かなものであることをなぜ自分に警告しなかったのか、説明を求めるとしている。(16日)
http://www.guardian.co.uk/world/2011/feb/16/colin-powell-cia-curveball?intcmp=239
注目されるのは、当時のCIA長官、ジョージ・テネット氏だが、16日に声明を発表。ジャナビ氏が嘘をついているかもしれないということに「気づくのが遅すぎた」と弁明した。テネット氏は、イラク侵攻の2年後の2005年になってはじめて、ドイツ情報局BNDがジャナビ氏の証言を疑問視していることを知ったという。
テネット氏のコメントに「そんなはずはない」と当時のドイツ外相、フィッシャー氏がかみついた。
フィッシャー氏によれば、BNDはイラク侵攻のかなり前にジャナビ証言が疑わしいと知り、証言をCIAに知らせたときには、その旨きちんと警告したはずだという。

「我々が得たすべての情報をアメリカに提供するという義務を果たす、と同時にこの情報が亡命者からのもので事実とは証明されておらず全くの誤りかもしれないとの評価も送ることにした」。
だから、ジャナビの情報に基づいてイラクを侵攻するということには賛同できなかったという。
フィッシャー元外相は2003年2月、ラムズフェルド元国防長官に、イラク侵攻に賛成できないと直言。イラク侵攻に反対する独仏をラムズフェルド氏は「古い欧州」となじった。
フィッシャー氏は「ガーディアン」紙の取材に、情報機関は通常、一つの情報源に頼ってはならず、少なくとも三つの別々の情報が合致するようにするものだ、とCIAを諌めている。(17日)
http://www.guardian.co.uk/world/2011/feb/17/curveball-doubts-cia-german-foreign?intcmp=239
おそらくチェイニー副大統領やCIA中枢などは確信犯だろう。間違った情報だと分かっていてジャナビ氏の情報を利用したのだ。
イラク侵攻ありき、の立場からは、利用できるものは何でもよかったのだ。
問題は、これをメディアがどう伝えたかだ。
(つづく)