テレビに夢を託せるのか

週刊ダイヤモンド』の1月15日号の特集は「新聞・テレビ 勝者なき消耗戦」だ。
最近、経済誌でマスコミの現状を扱うことが増えているが、どんどん激しい内容になってきている。この特集記事も「崖っ縁でもがく二大メディア」、「衰退する新聞の壮絶バトル」、「追い込まれるテレビの瀬戸際」、「通信・IT「新参者」の逆襲」とすさまじい。
実際、近い将来に大きな変化を予想させる材料が多いのは確かだ。
おととし、民放キー局が赤字に転落するという、以前なら考えられない事態が起きた。http://d.hatena.ne.jp/takase22/20090723
テレビ局もついに社員の給与カットに踏み切り、日本テレビ労組は去年3回のストを実施するという事態になっている。当然、制作費は大幅にカットされ、我々、番組制作会社は大波を被っている。
特集のある記事では、冒頭、衝撃的な事件を紹介している。
《2010年10月12日、熊本市で1人の男性が自宅で血まみれになって亡くなった。
包丁で男性の胸や腹を刺したのは男性の長男。父親に数十万円のカネを貸しており、金銭トラブルが動機につながった。
この事件をマスコミはそれほど大きくは報じなかったが、テレビの制作現場にいる関係者たちのあいだでは、ちょっとした話題になった。被害者男性が「フリーディレクター」だったからだ》
番組制作会社で日本テレビ系の情報番組を多く手がけた後、フリーになり、当初はいろんなテレビ局から仕事を取って羽振りがよかったが、ここ数年は仕事がなかったという。
《近年、広告費の削減による「テレビ不況」で、男性のようなフリーの人や制作会社が過酷な状況に追いやられ、その存在意義すら揺らぐ事態に陥っている。その根幹にはテレビ局の番組制作費の削減があった》として、記事は、《厳しい自然淘汰を迫られるテレビの「職人たち」》の姿を描いている。
その一方で、制作会社の給料が減ってきたディレクターが、NHKに「一本釣り」され、民放からの人材流出が激しくなった。最近、NHKの番組が、NHKらしくない手法で制作され、高視聴率をはじき出しているが、その背景がこれだ。フリーや制作会社の苦境の影で、NHKが「面白く」なっているのである。
テレビ制作の現場ではいろいろな動きが出ている。
制作会社ディレクターの中には、「テレビにしがみついてもしょうがない」と、自分たちで企業や自治体にUstreem(ユーストリーム)を配信するサービスを売り込んだりYouTube(ユーチューブ)で映像制作をしたりという営業を始める人も出ているという。
私の知り合いにも、テレビに見切りをつけて、ネットの世界での可能性を探ろうという動きがある。
テレビはどうなるのか、目をこらして見きわめようとするが、先はなかなか見えない。
(つづく)