日曜は新聞に折り込みの多い日だが、求人広告がめっきり減ってきた。このところ、目立つのが「うつ病の薬の治験」の協力者を募る広告。こんなところにも世相が出ている。
《政府は17日の閣議で、平成21年度版の「自殺対策白書」を決定した。それによると、昨年の自殺者数は3万2249人で、平成10年以降11年連続で3万人を超えた》
自殺する人がますます増えそうだ》
この「自殺対策白書」をざっと読んでみた。
自殺率の国際比較では世界で8番目に高いという。日本は自殺大国である。
自殺を減らすための対策としては「国民一人ひとりの気づきと見守りを促す取組」「心の健康づくりを進める取組」「適切な精神科医療を受けられるようにする取組」などの章立てがあって、具体的には、「心の健康相談ダイヤル」の設置や「スクールカウンセラーの配置」などの施策が書いてある。
それらが全く無駄だとは言わないが、有効かどうか疑問だ。
日本では一番自殺率が高いのが50歳代後半で、そのもっとも多い理由が「経済・生活問題」となれば、今後、自殺率が増えるのを止められないのではないかと心配になる。
一ヶ月ほど前の朝日新聞に、「失業率と自殺率」というコラムが載っていて、日本では失業率と自殺率の間に強い相関があると指摘されていた。つまり、失業率が上がると自殺率も上がるというわけだ。
失業率と自殺率に相関があるなんて、当たり前じゃないかといわれるかもしれない。しかし、そうでない国もある。朝日のコラムがあげていた国は、フィンランドとスウェーデン。
フィンランドでは、90年から93年にかけて失業率が3.2%から16.6%に急上昇したのに、自殺率はむしろ下がった。
スウェーデンでは、91年から92年にかけて失業率が2.1%から5.7%へと急増したのだが、ここでも自殺率は低下している。
積極的な雇用創出などの社会政策が大きな役割を果たしているようだ。
保育所を整備しても少子化傾向をひっくり返せない。だってまともな働き口がなければ、そもそも結婚したり子どもを産んだりできないではないか。それと同じで、「心の健康相談ダイヤル」で自殺を防ぐというのは、まさに後追いの「対策」であって、失業したら生きていけないなんていう、今の社会を変えなくてはならない。
地球の裏側に、失業しても不安を感じなくてすむ社会が実際にある。この事実は我々に大きな励ましを与えてくれる。