企業栄えて国滅ぶ

雇用情勢が尋常でなく厳しい。高卒、大卒とも就職内定率は記録的な低さに落ち込んでいる。ましてや中高年齢層はもっと大変だろう。
雇用の悪化がとくに目立つのは製造業だ。前年比で4割も減っている。デフレとなれば、ますますコスト競争が激化し、雇用が減らされるおそれがある。リストラは「非正規」だけでなく大企業の正社員にも及んできた。
一方で、製造業とくに輸出で稼ぐ企業の海外脱出がとまらない。先月、工場だけでなく研究・開発部門まで海外に出て行く問題について書いた。http://d.hatena.ne.jp/takase22/20091004
ついにトヨタがその動きを公表した。日経11月5日朝刊の一面トップ記事から。
トヨタ自動車は2010年にも中国に研究開発拠点を新設する。大規模なテストコースを備え、車両開発を総合的に手掛ける新会社を単独出資で設立する。日本の自動車メーカーが中国に独自の研究開発拠点を設けるのは初めて。(略)
10年にも着工、段階的に機能を拡張する。総投資額は300億〜400億円に達すると見られる。人員は数百人規模に膨らむ見通し。電子関連の技術者など現地技術者を積極的に採用する方針だ》
このニュースで、トヨタの株が「前日比20円高の3630円まで上昇した」という。
さらに、11日の日経は、《トヨタ営業要員、3割は新興国へ 国内部門から配置転換》との見出しの記事を載せた。営業まで行ってしまうのだ。
トヨタ自動車は、本社の国内営業部門の要員を3割削減し、自動車需要の拡大が期待されるBRICs(ブラジル、ロシア、インド、中国)など新興国に配置転換する方針を固めた。ライバル社に比べ伸び悩む新興国市場の販売体制を、大量の人員とともに日本で46%の販売シェアを築き上げたノウハウを持ち込み、立て直す。国内の車の売り方も、大幅な減員を機に、効率化を進める考えだ》
急激な国内でのリストラが予想される。
《近く発足する「BRオペレーション改善室(仮称)」が、人員の再配置にあたる。BRは任務が終われば解散する臨時組織に付く記号で、短期間で一気に配置転換を進めるものとみられる。国内営業部門は総勢千人おり、最大300人が配置転換になる可能性がある》
この波は、他の自動車メーカー、さらには他の輸出製造業に及んでいくだろう。
こういう形で大企業の収益が改善したとしても、それは国内に仕事を作り出さないばかりか、反対に雇用を減らしていくことを意味する。
まさに《大企業栄えて、民滅ぶ》の図である。共産党みたいだと言われるかもしれないが、いま進んでいる事態を素直に見ていくとそうなる。日本国内に次世代の仕事口を作るという重要な事業は、製造業とりわけ花形輸出企業にはまかせておけないことがはっきりした。
そして、不況だ不況だといわれながら、この10年で、企業の内部留保は倍増し428.6兆円にも達したという。
企業は社会のためになっているのか、企業の存在意味が深いところから問われている。