アフガン情勢はますます末期的な様相になってきている。
以下ニュースから;
1《アフガニスタン南部で27日に爆弾事件が相次ぎ、同国駐留米兵8人が死亡した。10月のアフガン死亡米兵はこれで58人となり、2001年10月のアフガン軍事行動開始以来、月ベースで最悪となった》(CNN)
反米武装勢力の力が米軍を凌駕しつつあると見てよい。そしてタリバンは首都でも攻撃をかけられる段階に入った。このままだと最終局面も近いと思う。
2《アフガニスタンの首都カブールで28日、反政府武装勢力「タリバン」が国連関連施設を襲撃し、地元警察によると、国連職員6人を含む11人が死亡した。タリバンは、犯行声明で「11月7日に予定されている大統領選の決選投票を阻止するための第一歩だ」としている》(FNN)
国連がやられたというのは、武装しているかどうかにかかわりなく、米軍=現政権側に肩入れしているとみなされた者は攻撃されることを意味する。日本の民生支援もターゲットにされるのは確実だ。
3《パキスタン北西辺境州州都ペシャワルの市場で28日、大規模な爆発があり、AFP通信によると、女性や子どもを含む少なくとも92人が死亡、200人以上が負傷した。車を使用した爆弾テロの可能性が高い。》(中日)
戦火は本格的にパキスタンにまで拡大している。かつて米軍が、ベトナムからカンボジア、ラオスへと戦火を拡大した歴史を思い出す。ベトナム戦争を知る私にはデジャブである。
4《ロンドン―ICOSから今日発表された新地図によれば、現在タリバンはアフガニスタンの80%に恒久的プレゼンスを擁し、2008年11月の72%から増大させている。ICOSによれば、アフガニスタンの別の17%では、「実質上の」タリバンの活動が見られている。総合したこれらの数値によれば、タリバンはアフガニスタンのほぼ全域で重大なプレゼンスを擁している》
ICOSとは、「治安と開発の国際審議会」というシンクタンクだが、これによると、タリバンは、アフガン全土の80%の地域に「恒久的プレゼンス」を持つ、つまり、支配地にしているということだ。「活動が少ない地域」つまり政府側支配地は3%しかない。カブールの現政権は風前の灯である。
最も興味深かったのは以下の記事。
5《27日付の米紙ワシントン・ポストは、アフガニスタンのイスラム武装勢力タリバン支配地域に駐在していた米外交官が、アフガン戦争に反対して9月に辞任していたと報じた。米政府当局者がアフガン戦争への抗議のために辞任するのは初めてという。
辞任したのはアフガン南部ザブール県に駐在していたマシュー・ホー元米上級代表(36)。9月10日付の辞表で、「アフガンにおける米国のプレゼンスの戦略目的に対する理解と自信を喪失した」と説明。米軍の存在こそが抵抗運動を活発化させていると指摘した上で、米国が犠牲を払う価値のない戦争だと結論づけている。》(時事)
この人の辞表が全文公開されていた。実に堂々たる文章だ。彼は根本的な戦争目的を疑っている。
《私の辞任は、この戦争をどのように遂行するかにではなく、なぜ戦争をするのか、どんな目標に向かっているのかにもとづくものである。》
これはベトナム戦争のときの米兵の心情そのものである。そして、武装勢力が増大するのは、米軍と腐敗した政府への反発だと指摘する。
《私の見るところでは、反政府勢力の多くは、タリバンの目的を支持して戦うのではなく、外国兵の存在と人民を代表しないカブール政権に反発して戦っているのだ》
そして、彼の辞表にもろにベトナムが登場する。
《いまこの種の政権(カブール政権のこと)を我々が支持していること、そして反政府勢力の真の性格を誤解していることは、南ベトナムへの介入を恐ろしく思い出させる。あのとき、人気のない腐敗した政権を支援することで我が国の国内の平和を犠牲にし、反政府勢力の民族主義を、傲慢と無知から、冷戦イデオロギーのライバルだと誤解して彼らと戦ったのだった》
以上を見るに、オバマがいくら兵力を増強してももうアメリカに勝ち目はないだろう。
問題は、アメリカが勝手にはじめた戦争のせいで、ここまでグチャグチャになってしまったアフガンを、このまま見捨てるわけにはいかないということだ。
「アメリカの戦争」にどう協力するかではなく、アメリカの「敗戦」を前提に、この尻拭いをどうするのか国際社会で考える時期にきていると思う。