アフガンはベトナム末期

アフガンでは、去年、大統領選挙もあってカルザイ政権が続投、次第に政情が安定しているのではないかと思っている人も多いと思う。
しかし、実際にはとんでもないことになっている。
大統領選挙の投票率は、前回70%だったのが、去年はその半分の30%台にとどまった。アメリカが選挙を成功させようと米軍を増派してこの結果である。それだけタリバン支配地が広がったということだ。その上、カルザイ陣営の大量の不正票が見つかり、選挙でみそぎにしようとした目論見ははずれた。http://www.shikoku-np.co.jp/national/international/article.aspx?id=20091102000276
アフガンでの米軍と国際支援部隊の犠牲者は、ものすごい勢いで増えている。
《[カブール 6日 ロイター] ロイターや独立系ウェブサイト「icasualties.org」の集計によると、アフガニスタンに駐留する外国軍部隊の死者数が、今年に入って少なくとも500人に達したことが分かった。これは、521人が死亡した2009年を上回り、過去最悪のペース。
 死者の60%は米兵で、タリバンを中心とする反政府組織の掃討作戦を今年初めに開始して以来、外国人兵士の死者が急増している》
下の資料がによれば、去年の国際支援部隊の犠牲者は一昨年のほぼ倍。そして、今年は今の段階ですでに去年の犠牲者数に近い。2001年にアフガン戦争が始まって9年。国際進軍の死者数総計の半数が、昨年以降に死亡しているのだ。
http://icasualties.org/

 年度     米軍   英軍   その他  合計

  • 2001    12   0   0   12
  • 2002    49    3  17    69
  • 2003    48    0   9    57
  • 2004    52    1   7    60
  • 2005    99    1  31   131
  • 2006    98   39  54   191
  • 2007   117   42  73   232
  • 2008   155   51  89   295
  • 2009   317  107  96   521
  • 2010   331   90  82   503

-合計  1278  335  458 2027

これからカルザイ政権とアメリカとの間でいろいろと軋轢がでてくると思う。
これはベトナム末期を知る私には、デジャブのように見えてくる。南ベトナムでは10回以上のクーデターでトップの首がすげかえられたのだった。
実は傀儡政権というのは、主人の言うことを大人しく聞いてはいない。逆に主人のコントロールから外れていく力学が働く。アメリカの傀儡、カルザイ政権は「アメリカの言いなり」と見られるのが最大の弱みだから、あえてアメリカに反抗することで人気を取り戻そうとするはずだ。しかも、来年から撤退するとオバマは公約しているのだ。傀儡政権は遠くない将来、後ろ盾を失うことがはっきりしている。今後のカルザイの行動は、この分脈で見ていかなくてはならない。これからアメリカにとってアフガン政権を動かすのは大変なことになっていくだろう。
外国軍の死者が激増しているだけでない。タリバンの矛先は援助関係者にも向けられている。NGOが狙われるケースも急増している。
一昨年、中村哲医師が中心に活動する「ペシャワール会」の伊藤さんがタリバンに近いグループに拉致され銃撃戦で死亡したのは記憶に新しい。
先月には、NGOで医療支援をしていた10人の医師がタリバンに殺害された事件も起きた。
アフガニスタン北東部バダクシャン州の森林地帯で5日、キリスト教系のNGO「国際支援ミッション」(IAM)の関係者男女10人が武装勢力の襲撃を受けて死亡した。同NGOはアフガンで40年以上にわたって医療支援を行っている団体。死亡したのは米国人6人、ドイツ人1人、英国人1人、通訳のアフガン人2人。医師も含まれている。反政府勢力タリバンは7日、犯行を認めた》
「日本は軍事的介入をすべきでなく、民生支援をすればよい」
よくこう言われるけれど、そもそも、治安が極端に悪化しているとき、まともな人道支援も民生支援も実行不可能なのである。