「空飛ぶタイヤ」がグランプリに

きのう、我々の業界団体ATP(全日本テレビ製作者連盟)の「ATP賞テレビグランプリ2009」授賞式があった。
ドラマ部門、ドキュメンタリー部門、情報バラエティ部門のそれぞれの最優秀作品から、ATP会員社と審査委員の投票で、年1本のグランプリが決まる。
今年度のグランプリに選ばれたのは、『空飛ぶタイヤ』という連続ドラマで、3分の2近い票を集めて圧勝だった。私には意外だったのだが、これはWOWOWのドラマだった。恥ずかしながら、WOWOWは劇場映画を放送するだけかと思っていた。ドラマを含む自前の番組を作っていることを知らなかった。
私も審査員の一人なので、DVDでこのドラマを観た。本格的な社会派ヒューマンサスペンスで、ぐいぐい引き込まれる。すでにビデオレンタル屋に並んでいるが、これはお薦めである。
空飛ぶタイヤ』は、走行中のトレーラーのタイヤが突然外れ、歩道を歩いていた母子を直撃、死傷させたという実話がもとになっている。トレーラーを製造した大手自動車会社「ホープ自動車」は、原因は整備不良と決め付け、小さな運送会社「赤松運送」が責任を負わされた。「赤松運送」は警察に家宅捜索され、倒産の危機に。だが、同様の事故が他で何件も起きていることが判明。赤松社長(仲村トオル)、「ホープ自動車」内部の告発者、雑誌記者などがそれぞれ動くなかで、大企業の悪質なリコール隠しが暴かれていく・・・という内容だ。
http://www.youtube.com/watch?v=jtr9xegk18o&hl=ja
主人公の運送会社社長は、はじめとことん追い詰められていく。家族も周りから白い目で見られ、息子は学校でいじめにあう。取り引き先からは次々に仕事を切られ、あと3ヶ月で倒産という事態に立たされる。その崖っぷちから立ち上がり「ホープ自動車」という巨象に挑んでいく姿には、同じ零細企業を経営する自分を重ね、感情移入して観てしまった。赤松社長の妻役は、私の好きな戸田菜穂
授賞式会場で、久しぶりに旧知のディレクターS君と会った。ワインを飲み、おしゃべりしながらグランプリ発表を見守った。『空飛ぶタイヤ』に決まると、S君は、「このドラマ、今の民放テレビじゃやれないでしょうね」とつぶやいた。
いまのテレビ不況では、テレビ局は、CMを入れてくれる企業には頭が上がらない。自動車会社を悪として描くドラマはやりたくないだろう。ペイテレビで、スポンサーに気兼ねしないWOWWOWならではの作品ともいえる。
俄然、ペイテレビというビジネスモデルに興味が湧いてきた。
WOWOWに加入しようかな。