きょうは、娘の通う高校でPTA主催の横田夫妻の講演会が開かれた。
妻が学校のPTAで担当になっていたので、私も手伝いに行った。
校門の少女像の前で記念写真を撮る。
お元気そうだったが、きのうは中川昭一元財務相の葬儀、きょうに続いて明日も講演会と毎日行事が続いて、家族会会長のころより忙しい日々だという。
PTA向けの会で、例年参加者は100人ほどなのだが、今年は一般の人もたくさん参加して350人以上となり、会場の椅子が足りなくなるほどの盛況だった。
「あさがおの会」が制作した記録映画「『ただいま』の声を聞くために」の上映に続いて、二人が講演。滋さんが事件からこれまでの運動につき解説し、早紀江さんが家族としての心情を訴えた。
「皆様のご家庭で、息子さんあるいは娘さん、どなたかお一人でも行方不明になったらどう思われるか、お考え下さい」
ハンカチを目に当てる人が多かった。
しめくくりに、高校の合唱団が「コスモス」、「旅愁」を、そして会場も加わって「ふるさと」を歌った。「旅愁」は、めぐみさんが曽我ひとみさんと一緒に朝鮮語を勉強させられていたとき、夜布団の中で声を殺して歌った唱歌の一つだ。歌詞をたどると涙が出てくる。
会のあと、控え室に滋さんの昔の日銀の同僚が面会に来た。退職して近くに住んでいる方で、30年ぶりの再会となった。
会が無事終了し、横田さん夫妻を夕食に誘い、私の家族と一緒に近くのレストランで「ごくろうさま会」をすることに。
はじめ娘たちは、「横田さんに何を話したらいいかわからない」と恥ずかしがっていたが、「普通のおじさん、おばさんだから大丈夫。お前たちの知ってるアイドルの話でもしたらいいよ」と言っておいた。
娘たちが半信半疑なので、滋さんに「のりピー、知ってますか」と聞く。すると、滋さん、上着のポケットに手を入れてごそごそやっている。取り出したのは、なんと、のりピーの写真入りテレフォンカードだった。何枚もこうしたカードを持っていて、電車の切符などもアイドルの写真入りプリペイドカードで購入するという。滋さんは子ども好きで、科学博物館のガイドをボランティアでやっていたほどだ。滋さんは、アイドルたちの出身地やエピソードなどを披露して娘たちを喜ばせてくれた。
山形の酒「くどき上手」がうまいので滋さんと私でどんどん飲んでいると、早紀江さんから「おとうさん、もう飲みすぎですよ」とストップがかかる。それでもそれぞれ3合くらい飲んだが、もともと強いのだろう、滋さんは足元がふらつくこともなく駅まで歩いていた。楽しいひと時を過ごしていただいたようで、うれしかった。
講演のあと、高校に残す色紙を書いてもらったのだが、早紀江さんが書いたのは「誠実 感謝」。
滋さんは「皆さんが一緒に勉強したり、クラブ活動をしたりできるのは幸せなことです」と書いた。
夕食のとき、早紀江さんが私に「家族で一緒に暮せるのは幸せですよ」といってくれたが、横田さん夫妻の運命を知ると、当たり前の日常がほんとうに大切なものだとあらためて気づかされる。