トイレの世界標準3

takase222009-09-27

近くの公園に秋の七草が咲いていた。
写真は黄色い女郎花(おみなえし)の下にピンクの撫子(なでしこ)。もう秋なんだなあ。
さて、水で清める「タイ式トイレ」の作法である。
日本人の間でもトイレットペーパーの使い方は人によって違うように、タイ式の肛門の洗い方もいくつかバリエーションがあるようだが、私が教えてもらったのはこうだ。
1)右手に水の入ったボウルを持ち、腰の後ろに回す。左手は肛門近くに待機する。
2)ボウルを傾けて、お尻の割れ目に沿って水を少しづつたらす。
3)水が割れ目を伝ってきたところで左手で肛門を清める。
4)ボウルに残った水で左手を洗う。
これならお尻全体がびしょぬれになることもなく、少量の水で効果的に肛門をきれいにできる。
「タイ式トイレ」(便宜上こう呼んでおく)に慣れてみると、実にすぐれたトイレだと思うようになった。タイでは、すでに80年代に、都市部だけでなく、かなりの田舎まで「落下式」ではない簡易「水洗式」が普及していた。下水道が完備していないのに、便器だけは水洗で、そのまま川に流れていくというのもよくあった。
簡単にいうと、和式水洗から金かくしを取った形になる。便器の構造には詳しくないが、紙を使わないこともあって、少量の水できれいに流れる。タイ式は大便が排水口にポチャンと落ち、便器が汚れないし、私の経験では、コップ2杯くらいの水量で流すことが可能だ。すぐれもののタイの便器は周辺国に輸出もされていた。
「和式水洗」がこれと決定的に違うのは、しゃがむ方向が反対で、大便が便鉢にいったん乗っかってしまうこと。従って和式は、(検便には便利だが)便器が汚れやすいうえ、鎮座した大便を排水口まで水流の力で水平に移動させなくてはならないから大量の水が必要になる。
「和式」がこうなってしまうのは「金かくし」の存在による。日本にしかない「金かくし」だが、この起源は4〜5百年前だとの説もあるが、いざ何のために必要なのだろうかと考えるとよく分らない。男性が「大」と「小」を一緒に排泄したときに小便が飛び散らないという以外の機能を思いつかない。
タイ式も「大」「小」を兼ねており、男性が小用にも使う。しかし、タイの男性は「大」と「小」を同時にはしないから不都合はない。この点は「洋式水洗」も同様で、基本的に、男性が「大」と「小」を同時にしにくい構造になっている。
どうやら、日本人のように「大」と「小」を同時に排泄する民族はむしろ少数派のようなのだ。これは「排泄行為」そのものの話になるので、いずれ別の機会に書きたい。
「和式水洗」にせよ「洋式水洗」にせよ、大量の水を使用する。これから世界的に水が不足するといわれている中で、毎回10リットルもの水を流すのは、地球環境という視点からは好ましくない。
この問題にはすでに企業も対応しはじめている。三年前、洋風水洗で、INAXが「大」洗浄6リットル、「小」5リットルの節水便器「eco6」(エコシックス)を発売、TOTOも「大」6リットルの競合品を出し、いま「6リットルの闘い」が展開されている。
まるで自動車の燃費競争だが、タイ式とは比較にならないほど大量の水を使用するのは変わらない。
(つづく)