カトケンさんバグパイプ奏者に転身

takase222009-07-30

今週の新聞より
水を打つ ヒロシマ ナガサキは問ひぬ
27日の「読売俳壇」の選に入った句だ。
短歌では、よく社会的、政治的メッセージを込めることがあるが、俳句には向かないと思ってきた。でも、これは素直に読めた。
暑い日、家の前に水を打っている。そのたびに、「水をください」という声が聞こえるようだ。苦しんで亡くなっていった被爆者に想いが行く。この人自身が被爆者なのかもしれない。真夏、水、原爆へのイメージが流れていく。後半の定型が乱れるところがかえってよいと思う。
同じ27日の朝日新聞夕刊を見てびっくりした。
「戦地離れ バグパイプに生きる」
「ジャーナリストから転身」
イラク戦契機『平和ボケもいい』東京・加藤さん」
の見出しとスコットランドの民族衣装を着て街頭でバグパイプを演奏する加藤健二郎さんの写真が載っている。記事のリードは;《戦場ジャーナリスト加藤健二郎さん(48)が、バグパイプ奏者として人気を博している。世界の紛争地を渡り歩いてきた男は、イラク戦争をきっかけにカメラを楽器に持ち替えた》
カトケンこと加藤健二郎さんと言えば、最も危険な場所に出没する戦場カメラマンとして知られた人だ。
大学を卒業して建設会社に入ったが、「大事なことを遣り残したくない」と退職して26歳で退職、カメラを手に世界を回ることになる。
《88年の中米エルサルバドルニカラグアの内戦取材を皮切りに、15年間にわたって様々な戦場にフリーのジャーナリストとして飛び込んだ。第一次チェチェン戦争では、ロシア軍に大部分を制圧された首都グロズヌイに突入するチェチェン人決死隊に密着。旧ユーゴ紛争での銃撃戦から戦車戦、コソボ紛争では北太平洋条約機構(NATO)軍による空爆下にも身を置き、死線をかいくぐり、著書や雑誌で発表してきた》。
『戦場のパスポート』、『戦場の現在―戦闘地域の最前線をゆく』、『ドキュメント イラク戦争最前線』、『戦場のハローク』など数々の著書の名前だけで、いかに危険な取材をしてきた人であるかが分るだろう。「東長崎機関」という梁山泊のような怪しげなグループを主宰したり実にユニークなことをやっていた人だ。
イラク戦争のさい、危ないからカトケンさんにインストラクターのような形で一緒に行ってもらおうとお願いしたことがある。ジン・ネット取材班は、加藤さん同行のもとでイラクに入り、サンデープロジェクトで特集を放送したことがあった。
イラク取材から帰ったあとで、バグパイプを通販で買い、自分で練習したらしい。才能があったのだろう、上達ははやかったようだ。04年のジン・ネットの忘年会に加藤さんはバグパイプ演奏のCDを持ってきて盛り上げてくれた。それにしても本格的に奏者に「転身」とは・・・。
何が起きたのかと記事を読むと、イラク戦争で「戦場はそろそろ打ち切りにしたい」と思ったという。そして「ゼロからの出発だけど、人生後半にいいものを見つけた。バグパイプを知らない人たちの間に突破口を開いてみせます」と語っている。あくまで前向きで明るい。面白そうだ。応援しよう。以下は加藤さんのサイト;http://www.higashi-nagasaki.com/bagpipesIndex.html
23日には「日食」のもとで演奏する加藤さんがNHKに出たという。今後のイベント予定には、8月23日、東京・早稲田、都電ライブなどとあるが、いったい何をしでかすのか。見に行きたい。
加藤さんの演奏の動画は以下でご覧下さい。
http://www.stickam.jp/video/178392524