花と兵隊

takase222009-08-01

「花と兵隊」というドキュメンタリー映画が8月8日から封切りになる。
http://www.hanatoheitai.jp/
以下は、毎日新聞29日夕刊に出た監督と映画の紹介記事。
《太平洋戦争後、日本に戻らずタイやビルマ(現ミャンマー)に残った元日本兵6人の晩年を記録したドキュメンタリー映画「花と兵隊」が8月8日から全国で公開される。福岡県出身の松林要樹(ようじゅ)さん(30)=東京都世田谷区=が初めて監督した作品で、カメラ片手に06年から2年がかりで取材もこなした。「『その土地に生きる』ということを(自分の)同世代にも考えてもらえれば」と話している。
 松林さんは、大学中退後、日本映画学校川崎市)を04年に卒業し、映像の道に入った。アフガニスタンでボランティア活動をしながら映画製作を目指したが挫折、テレビクルーのアシスタントになって同国の選挙などを取材した。
 自分でも番組の企画を提案しようと考えた時、思い浮かんだのが同校創設者の今村昌平監督が70年代にテレビドキュメンタリーで描いた「未帰還兵」というテーマだった。
 6人は、戦犯になることを恐れたり、軍隊仲間への不信感から現地に残った。現在はいずれもタイ国内にいるが、帰国せずに残り続けた理由を、タイの日本人社会のつてで元日本兵を見つけ探った。答えはすぐに分かった。元日本兵の隣ではにかむ老いた妻や子、孫たち。そこには現地で築いた豊かな家族関係があった。
 一方で、正月にもちをついたり、桜への思いを口にするなど、決別したはずの日本へのひそやかな「愛国心」も目の当たりにした。
 3畳1間のアパート暮らしで節約し、PR映像の製作などで得た収入を映画作りにつぎ込んだ。長期取材の途中、2人が90歳で亡くなり図らずも最期の姿をフィルムに収めた。今回、男たちを支える女性の強さに触れ「次は女性と戦争について描ければ」と考えている。》
監督の松林さんは、この映画の撮影に入る前、「ジン・ネット」でアシスタントとして働いていた。監督第一作というので、激励しようと試写会に行った。松林さんは苦労話は一切せずに「貧乏旅行しながら撮影しました」と楽しそうに笑っていた。バンコクをベースに、アルバイトで稼いでは、2年がかりでこつこつ撮っていったそうだ。取材中に登場人物二人が亡くなっていることで分るように、いまが記録する最後のチャンスだった。誰かがやるべき仕事だったと思う。彼の情熱に脱帽する。
6人の元日本兵がみな現地で結ばれた奥さんと仲睦まじく、暖かい家族に囲まれ、地域で信頼されていた。戦争という重いテーマを扱いながら、ほのぼのとした気持にもさせられる映画である。