年末の新聞から―環境でリードする日経

日本は気候変動問題では、アメリカやカナダなどと並んで、先進国ではかなり後ろ向きにランクされる国だ。
これには、政府の政策に強い影響力を持つ経団連の姿勢が大きく関わっているとされる。経団連のトップの顔ぶれを見ると歴代、製鉄や電力など重厚長大産業から出ており、環境問題に消極的なのも頷ける。
COP14(ポズナニ会議)は、これまで気候変動問題で世界をリードしてきた西欧諸国が経済危機で足踏みしたこともあって、さしたる成果なしに終わった。これについて日本の新聞は総じて大きな関心を寄せなかった。ところが16日、政府の尻を叩くかのような論調の社説が目を引いた。それを載せたのは、なんと日経新聞だった。
 難題先送りのポズナニ会議(12/16)
ポーランドポズナニで開かれていた国連気候変動枠組み条約の締約国会議(COP14)は、地球温暖化防止の次期枠組みづくりをわずかに進展させただけで閉幕した。
会議での合意は発展途上国に対する資金援助、森林保全支援など一部だ。核心の温暖化ガスの排出削減目標も新興国の排出抑制も議論は進展しなかった。ただし、今回のペースダウンは、年明けから交渉が急速に動き出す前兆とみられている。米国のオバマ政権誕生まであえて難題を持ち越したというのが実情だ。
交渉期限である来年末までに、約190カ国の複雑に入り組んだ利害を調整しながら合意にまとめあげる作業はそう簡単ではない。ただ、環境問題に背を向けてきたブッシュ政権の退場で交渉は加速する。オバマ政権では問題を熟知した専門家が交渉を担当するとされており、政権発足早々に方針が明確になるだろう。
今夏の主要国首脳会議(洞爺湖サミット)では、50年に世界で排出半減という長期目標を掲げ、各国に認識の共有を求めることを決めた。しかし、議長国日本が、COP14ではその働きかけに動かなかった。中期目標の提出期限の明記にも抵抗し、腰の引けた姿勢をみせつけた。
中期目標の決断が遅くなればなるほど発言力は落ちる。哲学を欠くと交渉力も危うい。政府は環境外交を早急に立て直すべきである。
枠組み交渉には景気減速が微妙な影を落としている。実際、欧州連合(EU)では景気対策に絡んで温暖化対策の不協和音が表面化し、首脳会議で調整せざるを得なかった。途上国は先進国から支援資金が細ることを心配し始めている。
ただ欧米では、景気減速で温暖化防止が後退したり、排出量取引など経済的手法による排出削減が足踏みしたりすることはあるまい。むしろ需要喚起や雇用創出を狙い低炭素社会への転換を促す動きが加速するだろう。温暖化対策を理由にした産業てこ入れ策も増えてくる。排出削減は産業の構造転換も促すはずだ。
政府や産業界が排出削減に消極的では、景気対策は限定されてしまう。景気刺激のためにも、日本は中期目標を早く決め、低炭素社会に向け政策を動員すべきではないか
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日本では、温暖化とか気候変動などと言うと、「倫理」の問題と受け止める向きがある。「かけがえのない緑の地球を守りましょう」みたいな・・。しかし、先進国の多くはもう違った段階に入っている。次の世代の雇用創出、つまり「我が国はこれからどんな産業で喰っていくのか」という産業戦略の問題になっている。
だからオバマが「グリーン・ニューディール」とぶち上げたのだ。早く手をつけた方が勝ちなのである。
日経の社説で《景気刺激のためにも、日本は中期目標を早く決め、低炭素社会に向け政策を動員すべきではないか》と言っているが、世界のトレンドをよく理解していると思う。経済界の中にも今の日本政府の姿勢に危機感を持つ部分が存在するのだろう。来年はいよいよCOP15の年。この動向に注目したい。