社説にみる新自由主義の行き詰まり

このところ、新聞の社説が面白い。
ブッシュ政権新自由主義政策を批判したポール・クルーグマン氏がノーベル経済学賞を受賞したことに触れて、東京新聞の社説はこう書く。
「米国流の新自由主義経済に追随してきた日本の格差も深刻の度合いを増しています。(略)
富裕層に向けた最高税率の大幅引き下げや企業へのさまざまな規制緩和と撤廃、労働組合弱体化や福祉・社会保障削減という保守派の政策こそが大格差社会を生んだという教授の分析は、そのまま日本にも当てはまりそうです。(略)これ以上の貧困の拡大は阻止しなければなりません。」(19日「変革期のジャーナリズム」)
また、17日の読売新聞社説「『削減路線』とは決別する時だ」と題してこう書き出す。「赤旗」かと見まがう文章である。
社会保障は超少子高齢化時代を支える根幹だ。これ以上、揺るがすわけにはいかない。(略)
財政再建を最優先する政府は、社会保障費の伸びを、自然増のうちから毎年2200億円ずつ機械的に削減する予算編成を続けてきた。その結果、診療報酬や介護報酬も抑え込まれ、医療や福祉の現場に大きな歪みが生じている。(略)
今日の状況を招いた原因を煎じ詰めれば、小泉政権以来の構造改革が、社会保障にまで一律に『小さな政府』路線を当てはめたことに尽きよう。
日本はイギリスの失敗に学ぶ必要がある。」
イギリスではサッチャー改革で、医療費を激しく削減。多くの医師が海外に流出し、手術を受けるのに何ヶ月もかかるという状況を招いた。
読売までもが、大きな政策転換が必要だと主張している。もっとも、後半は、だから消費税を導入しないといけないと続く。
2200億円の社会保障費削減については、麻生首相までが「ほぼ限界に来ている」と言うほどなのだ。
思えば、小泉首相は確信犯だった。
2006年6月、3ヵ月後の退任を前に、「骨太方針2006」の閣議決定に向け、経済財政諮問会議でこう言ったのだ。
《歳出をどんどん切り詰めていけば『やめてほしい』という声が出てくる。増税してもいいから、必要な施策をやってくれという状況になるまで、徹底的にカットしないといけない》
世の中を意識的にむちゃくちゃにすることを目指した方針だったのか。しかし、そういう人を首相にしたのは私たちなのだが・・・。
今回のアメリカ発の経済危機は、誰の目にも、新自由主義が破綻したことを見せ付けた。
誰もが何とかしなくては、と思い始めている。破壊・混乱の後には、新しいものが生まれてくる。人類はグローバルに次のレベルの社会に進化する過程にあると感じる今日このごろである。