上勝町長の笠松和市さんの本『持続可能なまちは小さく、美しい―上勝町の挑戦』が先月出版された。
出版社の内容紹介《人口2000人、高齢化率48%。グローバリゼーションに晒され、高齢化・過疎化の只中にある徳島県上勝町。全国最多の34分別でゴミの8割をリサイクル、お年寄りが木の葉を売るいろどりビジネスなど、時代を先取りするユニークな取り組みで注目を集める。地方の現状を打破し、衰退から再生への、揺るぎないまちづくりの挑戦。》
本の表紙は緑の中で笑顔を見せる針木ばあちゃん。この方は、「宇宙船地球号」でも取材させていただいた。http://www.tv-asahi.co.jp/earth/midokoro/2006/20060625/index.html
町の第三セクター「株式会社いろどり」でばりばり仕事をしてかせいでいる。この町は料理に添える葉っぱ、つまもので8割のシェアを占め、全国に出荷していることで知られる。http://www.irodori.co.jp/index/index1.html
今では「いろどり」は過疎の町からの逆転の発想として高く評価されている。はじめたのは、農協の指導員だった横石知二(よこいしともじ)さんで、02年アントレプレナー・オブ・ザ・イヤー日本大会特別賞受賞、03年日本ソフト化大賞受賞。07年地域活性化担当大臣から「地域活性化伝道師」に、経済産業大臣から「地域中小企業サポーター」に、内閣官房および経済産業省から「地域産業おこしに燃える人」に、ニューズウィーク日本版『世界を変える社会起業家100人』に選ばれた。
だが、この本は単なる「町おこし」の本ではない。町の実践から、世界を変える壮大な展望を見せてくれる。
私は、環境危機の解決法を学ぶという視点でこの本を読んだ。少なくとも解決の方向性ははっきり示されている。その意味で画期的な本だと思う。
環境問題は、他の諸問題と切り離して、独立に取上げることはできない。危機は社会の大きな仕組み、構造から起きているからだ。経済の拡大、景気浮揚を目指しながら、それと同時に環境危機を食い止めるという日本政府のアプローチは矛盾である。
逆に、この本のいうように、持続可能なコミュニティを作るという目的で進むと、環境を破壊しない仕組みを作らざるを得なくなるのだ。
笠松さんに初めて会ったのは三年前。初対面でもらった名刺は、裏がやけにカラフルだった。古くなったカレンダーだという。再生紙の名刺が流行っているが、それは作るのにエネルギーが要るから、「再利用」がベストだという。
「名刺の機能は果たしているわけですから、これでいいんです」。
現役の町長さんが、裏紙の名刺とは・・・。
実際、この人は「本物」だった。
(つづく)