数年前、裏金疑惑について知り、警察の底知れぬ闇に恐怖にも似た感覚を覚えたが、まさか自分がその取材に関わるとは思っていなかった。今回、ジャーナリストの大谷昭宏さんにこの企画に誘っていただき闇の一部を見ることができた。
元北海道釧路方面本部長の原田宏二さんは、大谷昭宏さんとの対談で、裏金の使途についてこう語った。
《もちろん飲み食いもありましたが、裏金のなかで一番大きな額を占めたのは、年に2回の異動のさいの餞別だと思います。上は道警本部長から下は駐在所の巡査まで、おそらく一人残らず餞別システムの恩恵を受けていたんですよ。
僕が総務課長だったときのこと。本部長室で辞令交付やるんですが、警視以上の所属長クラスがズラッと来ますね。本部長室に入りきれないくらいです。本部長が一人ひとり、辞令を渡すとき、その横に僕が立ってるんです。本部長の机の上に、辞令の順番通りに餞別の入った袋が、ダーっと並んでいるんです。そして、本部長が辞令を読み上げるときに、こちらに手を出すので、私がのし袋を手渡すんですよ。》
臨場感たっぷりの証言である。階級が上に行くほど、餞別の額は大きくなり、よく本部長3年やれば家が建つなどと言われる。
すると大谷さんがこういった。
大谷《だけどね、新聞記者もね、本部長とか課長クラスから餞別もらってましたから》
原田《我々だって、渡してました》
大谷《そうでしょ。ということは、俺らもかなり裏金もらってるよ。僕の場合は、本部長、刑事部長、捜査一課長、みなくれましたからね》
そばで聞いていた私はびっくりだ。記者クラブの記者が異動するときには、警察が餞別を出していたというのだ。それが裏金から出ていたのは確実だ。
この警察とマスコミの癒着ぶりを聞くと、マスコミが警察を追求することの構造的な困難さがよくわかる。
(続く)