テレビ業界は超格差社会

takase222008-01-19

私は大学入学で上京したのだが、東京に住んで驚いたことがいくつかある。まず、地震が多いこと。それから、売っている野菜の種類が少ないこと。そして、冬に晴れた日が多いことにも驚いた。日本海側の雪国で育った私にとって、雪が降るか、降らなくともどんよりと曇っているというのが冬のイメージであって、お正月に、雲ひとつない真っ青な空が広がるのがはじめ異様に思えた。
今朝、外のバケツに氷が張った。うちの周りで今年氷点下になったのは多分4回目か5回目だろう。よく晴れた寒い日に、冬枯れを眺めながら歩くのはいいものだ。これが東京の冬の楽しみ方というものだろう。
このところトラブル続きで、ブログが書けなかった。アメリカやアフリカと連絡を取るのだが、時差があって夜遅くにメールを書いたりして時間が取れないうえ、交渉がうまくいかない。それにテレビ局との交渉やお金の工面などいくつかの悩み事が重なると、精神的にも余裕がなくなってくる。
きょうは九段会館に行く。「テレビ番組製作会社就職セミナー」の第一回目があり、うちの会社を代表して学生さんにアピールしに行くのだ。主に来年度卒業の大学三年生、六百人近くが集っていた。番組製作会社30社が一社10分でアピールする。会社の中を「取材」してドキュメンタリー風に編集したビデオを見せる会社が多かった。ナレーターもプロを使い効果音も入れて、思わず笑ってしまう、おもしろい「番組」に仕上がっている。来年から、会場の投票によって「賞」を出したらどうか、などという声も挙がっていた。
うちは私が壇上で10分たっぷりしゃべった。
《アフガン戦争ではいち早くカブールに入って現地から生で民放2局にリポートを送り、イラク戦争では女性スタッフを入れて6名を派遣しました》と仕事を紹介すると、会場の学生たちが引いていったように感じた。でも、それでよかったと思う。KYが「空気よめない」だと、つい最近知った私である。
実は、テレビ業界は恐るべき格差社会だ。
「就職人気企業84社年収ランキング」によると、堂々の一位に輝いたのは、三井物産(2位)、三菱商事(3位)などの有名商社をおさえて、フジテレビであった。平均40歳で年収1572万円だという。ちなみに、この84社には入っていないが、テレビ局では、TBSが1570万円(平均49.1歳)、日本テレビが1427万円(同39.9歳)といずれも超高給である。(『読売ウィークリー』1月6-13日号より)
生涯賃金(60歳までの退職金を除いた総額)で比較すると、日本の男性正社員の平均は2億3500万円、非正社員で1億3500万円。この点、テレビ局は突出して高く、朝日放送(大阪)やフジテレビの社員は6億2200万円を超える。働く年数は40年未満で、入社早々は給与が低いことを考えると、人生の後半は年俸2000万円ちかくになるという計算だ。しかもこれには退職金や年金が入っていない。一方、フリーランスは、かなり名の売れた人でも、総収入はテレビ局社員の5分の1以下だろうという。(「アジアプレス」の野中章弘さんの「ビデオジャーナリストたちの“もうひとつの戦場”」『GALAC』2月号より)
製作会社も労働条件は厳しい。途中で失望して辞めていく人も多い。だから、就職セミナーでは、製作会社で働こうという人には、「ちょっとやりたいな」くらいの気持ちではなく「絶対にやりたい」という強い決意を持ってからのほうがいいですよ、と私は訴えた。
若い人たちが、お金だけでない「やりがい」を見つけてくれるよう祈る。