北朝鮮に蒔かれたジャーナリズムの種

takase222007-12-21

今朝のテレ朝系「スーパーモーニング」に、ジャーナリストの石丸次郎さんが出て、『リムジンガン』創刊について語っていた。これは、世界で初めての「北朝鮮内部の人間が作る情報誌」だ。(写真)
石丸さんたちアジアプレスはすごいことをやっている。
その『リムジンガン』の日本語版が、雑誌に先行してウェブ版としてスタートした。http://www.asiapress.org/apn/archives/2007/12/20130439-1119.html
10年以上、主に中朝国境から北朝鮮取材を続けてきた石丸さんだが、北朝鮮内部の取材にはどうしても越えられない壁がある。入国自体が非常に困難であるうえ、入国できたとしても取材活動はがんじがらめに制限される。どうしても内部に「協力者」が必要になる。
そして「協力者」を通じて取材するうちに、本当に必要なのは、外国人ジャーナリストの「協力者」ではなくて、「ジャーナリスト」そのものなのではないか、と考えるようになった。
石丸さんは、中朝国境で北朝鮮人のジャーナリスト予備軍たちと密会しては、カメラの扱い方、撮影の仕方などを教え、彼らが撮影したテープを批評し、ともにジャーナリズムとは何かを語りあった。そしてこの5年ほどかけて、「北朝鮮内部におよそ10人の北朝鮮人ジャーナリスト、及び取材協力者のネットワークを作ることに成功し」た。まさに、「北朝鮮内部にジャーナリズムの種を蒔き育て」たのである。(上のウェブより)
今の北朝鮮の「記者」は、お上の声の拡声器にすぎないが、今後の北朝鮮民主化を展望したとき、内部にジャーナリズムが育つことが非常に大事だ。石丸さんたちの仕事は、はるか将来を見越した大きな企てである。
彼ら、北朝鮮初のジャーナリスト集団は、北朝鮮の内情を外に発信することで国際世論を形成する。また、外の世界との冷静な比較や北朝鮮社会の分析をする能力を培い、内部に真の批判者を作り出すことになる。さらには、外の情報を中に持ち込む企てにも発展するだろう。こうした動きは、金正日体制を内部から掘り崩すことに大きく貢献するはずだ。
北朝鮮にジャーナリストを養成するということは、すぐにはお金にならない。逆に、恒常的に北朝鮮内部と連絡を取り、直接会って指導するには、大変な経費と労力がかかる。自分の生活も大変なフリーのジャーナリストたちが、これを5年も続けてきたとは、本当に頭が下がる。
まかれたこの「種」が大きく成長してほしいものだ。私たちもぜひ協力したい。
番組の最後に、李明博が大統領になったことについて聞かれた石丸さんはこう答えた。李明博が、北朝鮮国民の年間所得を3000ドルに引き上げると言っていることは、北朝鮮内部に伝わるはずで、これは民衆に感銘を与え、金正日にとってはかなりの打撃になる・・・。
李明博は、投票直前(14日)のSBSテレビで、「北朝鮮が核を放棄すれば、国民一人あたりの年間所得を3000ドルまで向上させる」と公約し、財源については「国際機構と日本が協力して400億ドルを出します」と言った。)
真の北朝鮮ウォッチャーである石丸さんならではの見事なコメント。なるほどなあ。