北朝鮮情報を電子書籍で

朝日新聞の夕刊で「メディアの激変」を連載しているが、きのうは、電子書籍に関して石丸次郎さんの取り組みを伝えていた。
《報道の世界でも可能性が広がる。アジアプレスのジャーナリスト石丸次郎さん(48)は、北朝鮮で暮らす取材パートナーの朝鮮人の写真集を、日本語、英語、朝鮮語電子書籍として出版する準備を進めている。
 石丸さんによると、現在は6人のパートナーが危険と隣り合わせの中で取材活動。日々の暮らしなどをデジタルカメラやビデオで撮影し、データを国外に届けている。日米で写真展が開かれるなど反響を呼んできた。
 石丸さんは「電子書籍は制作コストを抑え、各国の出版流通の違いにとらわれず世界へダイレクトに発信できる。肉声を動画で伝えることもでき、朝鮮人パートナーのためにあると感じている。世界中の多くの人に見てほしい」。2~3月をめどに、アイパッド向け電子書籍版として刊行する予定だ》
石丸次郎さんはテレビでも北朝鮮内部からの映像を紹介し分析することで知られている。私は石丸さんの情報を最も信頼できると思っており、しばしば番組で協力をお願いしてきた。http://d.hatena.ne.jp/takase22/20101205
石丸さんはなぜ、北朝鮮内部からの映像を含む情報を入手できるのか。
彼は、北朝鮮の中に自立したジャーナリストが育つのを支援するという壮大なプロジェクトを手がけているのだ。その動機を石丸さんはこう語る。
北朝鮮問題の核心に迫るには、外部に住んでいる者には限界がありました。
北朝鮮は世界最強の情報鎖国だといっても過言ではありません。
その壁を外部の人間が乗り越えて記録活動をするのは、極めて困難です。
北朝鮮の実態を世界に伝えるためには、北朝鮮の人々自身が北朝鮮のことを記録し、伝え、主張する営みがどうしても不可欠だと、私たちは考えるようになりました》(リムジンガン創刊の辞)
http://www.asiapress.org/apn/archives/2007/12/06220255.php
当局にばれたら命を失うかもしれない。そのリスクを覚悟して「北朝鮮の実情を外の世界に伝えたい」という6人が北朝鮮国内でいま取材中である。
取材成果は日本はじめ各国のテレビや新聞に提供されるだけでなく、『リムジンガン(臨津江)』という刊行物にまとめられている。
命がけの北朝鮮ジャーナリストから送られた情報を、脱北者など700人以上の北朝鮮人を取材してきた石丸さんがチェックして紹介するのだから、精確さは折り紙つきである。関心のある方はぜひ手にとってみていただきたい。
昨年は、この英語版も出し、石丸さんはアメリカまで売り込みに行った。このときの費用面を含む苦労を聞いていただけに、石丸さんの目が電子書籍に向くのはよくわかる。
電子書籍の英語版となれば、国境を飛び越え「各国の出版流通の違いにとらわれず」、まさに世界中で購入できる。
北朝鮮の実情を知らせる画期的な手段になるだろう。成功を祈りたい。