長井健司さんの死によせて―科学と人権

takase222007-10-04

きのう3日夜、明治大学日本ビジュアル・ジャーナリスト協会(JVJA)主催の「ミャンマービルマ)情勢緊急集会」があった。フォトジャーナリストの山本宗補さんが話をするのでぜひ行きたかったが、2日から南北首脳会談が始まっており、残念ながら時間が取れず行けなかった。
今朝の新聞は、日本政府がミャンマーへの人道支援の見直しを開始したこと、きょう長井さんの遺体が日本に着くことを伝えている。
ところで、長井さんが首都の騒乱のなかで殺されたこともあって、ミャンマー軍の都市部での暴虐が印象づけられているが、実は地方ではもっと露骨に恒常的な弾圧が続いている。
地方での人権侵害を証拠立てる衛星写真がある。上の2004年撮影の写真と下の今年のものがビフォーアフターになっており、右下の小さな集落が消滅しているのが分かる。
9月28日、世界最大の科学者組織、全米科学振興協会(AAAS)は「衛星写真が、ビルマの人権侵害の目撃証言を裏付けた(Satellite Images Corroborate Eyewitness Accounts of Human Rights Abuses in Burma)」と発表した。http://www.aaas.org/news/releases/2007/0928burma_report.shtml
ミャンマーでは主に少数民族地区で、国軍による村落の破壊や強制的な移住、軍駐屯地の増設などが行われてきた。
私も少数民族ゲリラを取材していたとき、続々ゲリラ支配地に逃げてくる多くの避難民に会ったことがある。軍が村を焼き払ったりするのは、ゲリラへの補給を断つという目的もあるが、単なるいやがらせとしか思えない場合も多かった。森林伐採などの利権がらみで、人々をその土地から追い出すこともあるようだ。
AAASの発表によると、まず、人権団体と協力して、2006年中ごろから2007年はじめにかけて、ミャンマー東部カレン族居住地域で起きた事件に関する70の具体的証言を得た。うち31ヶ所を特定したうえ、以前に撮られた衛星写真と最近のそれとを比較したところ、25ヶ所で証言を裏付ける具体的な痕跡を発見したという。ウェブサイトにすべての地点の写真と分析が公開されている。
この作業を担当したのは、協会の「地球空間テクノロジーと人権プロジェクト」という部門で、すでに衛星写真を使って、グアテマラコソボダルフールジンバブエでの人権被害を検証する作業をしてきた実績がある。
協会の幹部は、「こうした映像分析は、いかにして科学・技術が人権侵害の暴露に適用できるかを示す優れた実例である」と語っている。
「科学と人権」という大きなテーマを考えさせられる。