リビア紀行―美しい都トリポリ

takase222007-09-03

リビアの首都のトリポリは人口150万人ほどの、美しいこじんまりした町である。
海沿いに建つオスマントルコ時代の城壁「赤壁城」に囲まれて「旧市街」がある。世界遺産にもなっているそうだが、ここはエキゾチックな中世イスラムの世界である。
狭い通りが網の目のようにつながって、全体が大きな市場になっている。入り口は観光客向けの土産物屋、さらに金の装飾品の通り、銅細工職人の通りなどが続き、じゅうたんやアンティーク、日曜雑貨の入り組んだ雑踏を奥へ奥へと進むと露天商の一群に突き当たる。
「緑の広場」をはさんで、トリポリの中心である新市街がある。新市街と言っても、イタリア植民地時代(1911年以降)の古い建物がそのまま使われていて歴史を感じさせる。写真は、現在はモスクとして使われているキリスト教の聖堂で、この一体はコロニアルな建物が集中し、イタリア人観光客の定番コースになっている。
トリポリには、高層ビルも大きな工場も数えるほどしかない。ちょっと高い建物に上ると長い歴史の営みにあふれた町全体が見渡せる。
そして圧巻は、地中海に沈む夕日の美しさである。快晴の日が多かったので、見事な赤に染まりながら水平線に落ちていく太陽を何度も見ることができた。
ビエンチャンラオス)のメコン川に沈む夕陽、マニラ湾の夕陽などと比べると、ここは空気の透明度が高いせいか、一段と鮮烈な印象を受ける。地上近くの汚れた空気でぼやけることなく、完全に没するまで赤い球体を保ったままである。
夕暮れが迫ると、海沿いの公園に人々が集ってくる。敷物に腰を下ろし、夕暮れのひと時を家族や友人とすごすのである。ナツメヤシが、日没後の赤みの残る空にシルエットを描く。
ゆったりとした、実に平和な光景である。リビアの人たちは、日本人から見ると羨ましいほどの贅沢な時間を楽しんでいる。