リビア紀行―古代遺跡の宝庫

円形劇場の後ろは地中海

リビアに来る直前、この国が古代遺跡の宝庫だと知って驚いた。世界遺産が5箇所あって、どれも大変な遺跡だという。
トリポリから東に130キロほどのところにある古代ローマの遺跡「レプティス・マグナ」を訪れた。
遺跡は2キロ四方の広大な敷地に広がり、砂に埋もれていたのを掘り返して復元したため、都市遺跡がほぼ完全な形で残っている。いま見ることができるのはごく一部で、いまだに7割が砂に埋もれているという。イタリアやギリシャには、遺跡は「点」でしか残っていないそうだが、ここでは「面」で残っているのだ。
まず、「セプティミウス・セウェルス帝(AD193〜211年)の記念門」という大きな門が入場者を迎えてくれる。セウェルス帝はこの地生まれのローマ皇帝だったという。ローマ皇帝にアフリカ出身者がいるとは知らなかった。セウェルス帝のもとで、この地は大発展をとげ、北側(ヨーロッパ側)に匹敵する都市が作られた。
今回の訪問で、私は「地中海世界」という概念を学んだ。古代ギリシャ古代ローマオスマントルコといずれの大帝国も、地中海の北岸(ヨーロッパ側)と南岸(アフリカ側)の両方を治めている。地中海の北と南に非常に強い歴史的、文化的な一体感が形成されているのだ。これからのリビアの重要性は、ヨーロッパとアフリカのつなぎ目になりうるという点にある。
多くの古代遺跡は、地中海貿易で栄えた古代都市であり、海のすぐそばにある。地中海の深い青と石灰岩の赤みがかった白のコントラストが美しい。ところで、私は地中海を初めて見たが、日本の海とは色が違うような気がした。太陽光線のせいなのか、海底の砂の色が関係しているのか知らないが、実にきれいな青なのである。
後日、地方都市に飛行機で飛んだとき、地中海と白い海岸線がどこまでも続いているのが見えた。「Wind is blowing from the Aegean」(風はエーゲ海から吹いてくる)という、ジュディ・オングの「魅せられて」の一節が頭のなかに流れてきた。
リビアは砂漠あり、海あり、遺跡ありと観光資源にも恵まれた美しい国である。