香港であす注目の区議選投票

 「警察に逮捕されました」
 香港の知り合いのジャーナリストから連絡が入った。彼はネットニュース記者で、何冊も本を書いている、香港では名の知れたジャーナリストである。
 警察が包囲する理工大学の近くに待機していたところ、理由もなくいきなり警察に拘束され、警察署に30時間ほど拘置されたという。彼とともに多くの取材者や医学部の学生などで構成される救急スタッフ、弁護士など暴力とは関係のない人々も一緒に逮捕されたとのことだ。

f:id:takase22:20191123224338j:plain

ベストの背にEMT(Emergency Medical Team救急隊)、醫(医)生DOCTORなどの文字が見える

 「大陸」からの指示で香港警察は強硬な取り締まりを強めているが、これまでとは違ったレベルにエスカレートしているようだ。

f:id:takase22:20191123225650j:plain

写真は日本熊森協会(こんな協会があるんですね)のツイッターより

 THINGS ARE NOT ALWAWS WHAT THEY SEEM
 直訳すると、物事はそう見えるものだとは限らない。目の前に現れていることが本質ではないときがある、ということか。
 下の英文は;
  THE BEARS AREN’T CROSSING THE ROAD
  THE ROAD IS CROSSING THE FOREST
  クマが道路を横切っているのではない
  道路が森を横切っているのだ

 なるほど。
 テレビの映像だけからは、香港では学生たちが火炎瓶を投げたり暴力をふるうから警察が規制に乗り出すのだというふうにも見える。しかし、それが事態の本質ではない。
 暴力についてはまた書くが、今日は明日に投票が迫った香港の区議会議員選挙について。

 《デモ隊と警察との衝突で揺れる香港で24日、区議会(地方議会)選挙が行われる。住民にとっては、政治を巡る不満を表明する機会となりそうだ。
 区議会選挙は香港で最も民主的な選挙とされ、今回有権者の数は400万人を超える。これまでで初めて、区議会の452議席全てが改選される。
 立候補者の多くは政界に初めて進出する若者で、政府や中国に近い現職議員らと対決することになる。》(The Wall Street Journal
区議会議員は条例や制度を決めるなどの権限を持たないが、今回は政府への信任投票としての意味をもっている。争点は何といっても6月からの抗議活動への評価だ。民主派が勝てば、抗議行動が支持されたとして勢いづくだろうし、親中派が勝てば今の強硬な弾圧方針をいっそう進めることになろう。またアメリカの香港人権法案の扱いなど国際的な動きへの影響も見逃せない。
 任期は4年。18歳以上の永住者が選挙権を21歳以上が被選挙権を持つ。⽴法権はなく政権運営には関与しないが、⾏政⻑官選挙の投票権を持つ選挙委員1200⼈のうち、117⼈は区議から選ばれるなど⼀定の影響⼒を持つ。現在、親中派勢⼒が過去3連勝しており、現在324議席を占める。
 区議選をめぐってはすでに多くの「事件」が起きている。
①11月2日、民主派の区議選候補者の集会を警官隊が解散させ、候補3人が逮捕される。
②11月3日、民主派の集会参加者に刃物で切り付けた男が、民主派の区議会議員の耳を噛み千切る。
③11月6日、立法会(議会)議員であり区議会議員候補者でもある親中派議員(香港では立法会と区議会の議員の兼職が可能)が刃物を持った男に刺され負傷。
④11月9日、立法会(議会)の民主派議員7人が、「逃亡犯条例」改正案審議中の5月11日に議事の進行を妨げたとして逮捕される。7人のうち4人が区議選立候補者。
 
 6月以降の政治情勢で親中派が急激に支持を減らしていると見られ、香港政府=親中派は危機感を持つ。社会の混乱を理由に政府は選挙を取りやめるのではないかとの憶測もとぶが、民主派は社会混乱の口実を政府に与えぬよう市民に平穏を呼びかけている。

 きょうのTBS「報道特集」で香港を理工大学での警察の強引な取り締まり(TBSの取材班を含む取材者たちを狙って催涙弾が撃たれていた)から区議選の選挙戦までしっかりリポートしていて見ごたえがあった。私もこの時期に取材に行きたくてテレビ局に提案したのだが、受注できなかった。残念。テレビ局はすでにそれぞれ支局や外信部から取材班を香港に入れているので、私たち外部のものが仕事を受注するのはけっこうハードルが高いのだ。
 「報道特集」に二人の民主派の区議選候補が登場したがいずれも6月からの抗議活動に参加し政治意識を高めた若者だった。民主派は、若い候補が多い。香港中文大学4年生の陳易舜(Eason Chan,23)、香港大学の梁晃維(Fergus Leung,22)、香港理工大学の陸梓峂(21)など学生候補もいる。

f:id:takase22:20191123141929j:plain

f:id:takase22:20191123173712j:plain

 小選挙区制なので、勢力図が一変する可能性もある。ここ半年の反政府運動の高まりで、民主派が有利といわれるが、区議選は一つの団地が一選挙区と言う場所もあるほど地域密着の選挙だ。信号の設置など住民への身近なサービスで競うとなると地域の顔役が有利になる。親中派が452議席中324議席を占める一つの要因は、資金力を背景に老人会など「ドブ板」活動で浸透していることにあるという。これを若者主体の民主派が崩すのは簡単ではないように思えるが、どうだろうか。

 今月はじめ、おもしろい民主派候補の一人に会ってきた。
 キャシー・ヤウ(邱)さん(36)は元警察官だ。08年から警察官として刑事課や機動隊で働き、デモが本格化した今年6月、雑踏警備を命じられデモ隊と最前線で向き合った。デモ隊を排除するため、6月12日に警察隊は催涙弾を撃ち始めた。警察を市民との亀裂が広がり、限界を感じて8月に辞職したという。

f:id:takase22:20191123230259j:plain

Cathy Yau候補

 ヤウさんは雑踏警備などでなじみのある湾仔地区で地域ボランティアのグループに入った。同地区の大通りはデモのコースになることが多く、穴だらけの歩道や壊された歩道の柵など、衝突の跡があちこちに残る。柵や歩道の修理を地元政府に呼びかける取り組みを通して議員という仕事を意識するようになり、「もう一度、地域のために働きたい」と立候補を決めた。(朝日新聞記事参照https://www.asahi.com/articles/photo/AS20191009003328.html
 ヤウさんが議席を争うのは3期連続当選の現職、ヨランダ・ウン(伍婉婷)氏。前々回は75%の得票で民主派候補に圧勝。前回は無投票当選だった。強敵である。
 さあ、結果はどうなるか。

 

官僚のみなさん 安倍さんを守るのはやめましょう

 長野県在住の旧友から宅急便で大きな段ボール箱が届いた。
 開けると、真っ赤なリンゴがいっぱい。うわ、と思わず声が出る。「いつも大変そうだから」と気遣ってもらってほんとうにありがたい。

f:id:takase22:20191121221228j:plain


 聞くと、その箱のリンゴは「わけあり」だという。10月の台風の影響でキズがつき、出荷できずに困っているリンゴがたくさんある。出荷できないのを農家から引き取ったのだという。
 言われてみれば、強風で枝と擦れたりしたのか、ほんの小さなキズがある。だが、全く気にならないし、なにより美味しい。支援も兼ねて、こうした被災地の農産物を流通させることを考えてよいのではないか。
・・・・・・・・・・・・・
「呼ばれれば」裏に「呼ぶな」の威圧あり (東京都 川畑哲彦)
桜からエリカにマスコミ大移動 (神奈川県 高田正夫)

 19日の朝日川柳。国会に呼ばれれば・・と言っておいて国会は数に物を言わせて呼べない、何度も繰り返されたもう定番といっていいパターン。

モリカケと同じ根に咲く八重桜 (愛知県 石川国男)

 これは16日。公の私物化といい、ウソばかりの答弁を官僚が必死に取り繕う様といい、さらに文書や領収書の消滅といい・・まさにモリカケのデジャブ。

f:id:takase22:20191123004533j:plain

 激しい追及の急先鋒は共産党の田村智子議員だ。
 「官僚のみなさんね、もうこういうのやめましょうよ。ごまかして、いつわって、隠して、これ7年間ずーっと繰り返してきて、いまどうなってますか。
    ここまであからさまな政治の私物化で、それをやっておいて開き直って、『私の判断で来年は中止しました』。これで幕引きしたら、ほんとに政治は腐りきってしまう。
    官僚のみなさんね、もう守らなくていいですよ。ここまで私物化やって、明々白々の嘘ついて、開き直って、反省もしない。・・」
 そのとおり!

 一方、アメリカではトランプ大統領弾劾に関する決定的な証言に注目が集まっている。
 《ソンドランド駐欧州連合(EU)大使は20日、下院公聴会で証言し、トランプ米大統領の顧問弁護士ルディ・ジュリアーニ氏がホワイトハウスでの首脳会談開催などを見返りとして、ウクライナにトランプ氏の政敵調査の公表を要求したと述べた。これは「大統領の明確な指示」に基づく動きだったという。(略)
 ソンドランド氏の証言は、弾劾調査の核心にある「見返り」にトランプ氏が直接関与していたことを示す最も明白な証拠となる。》(CNN)

f:id:takase22:20191123004336j:plain

公聴会で証言するソンドランド氏


 何が問題かは長くなるので端折るが、大統領の「側近」とされた大使が、大統領の嘘を暴く重要証言をしたというわけだ。

良心が忠誠心を上回り (神奈川県 大坪智) 22日の朝日川柳

 このあたりはアメリカ、やっぱり違うな、と思う。日本でも政権内部から告発する人が現われてほしいが。
 官僚のみなさん、嘘つきの取り繕いは良心にとってだけでなく身体にもよくないので、もうやめましょう。そして、本当のことを言いましょう。

 

香港で何を学ぶか―ある日本人留学生より

 自転車に乗って図書館に行く途中、視界に真っ赤なかたまりが入ってきた。トキワサンザシ(ピラカンサ)の生垣だった。秋の陽に照らされて鮮やかだ。

f:id:takase22:20191121113437j:plain

・・・・・・・・
 今月9日はベルリンの壁が崩壊して30年にあたっていた。
 戦後、敗戦国ドイツは連合国の米・英・仏・ソ連の4か国に分割占領された。首都ベルリンも4か国のそれぞれの管理地区に分割された。その後、冷戦となり米英仏3国占領地区が西ドイツ、ソ連の占領地区は東ドイツと分断国家になった。ベルリンは東ドイツの中の「島」となり、そのなかの西ベルリンをソ連が壁で包囲して通行を遮断した。一つの街の中に国境ができたのである。これがベルリンの壁だった。この壁を越えて西側に脱出しようとして多くの人が命を落とした。
 1989年11月9日の夜、国境の検問所が解放され、翌10日には物理的に壁が壊されはじめる。これで東西の国境はなくなりドイツは統一された。若い人は知らないだろうが、当時は「自由が勝利した!」と世界中が感動したものだ。

f:id:takase22:20191122011156j:plain

 実は東ドイツ側の手違いもあって一夜にして壁が崩壊してしまったのだが、こんなことが起きるとは誰も予想していなかった。その後、あれよあれよと言う間に盤石に見えた共産主義体制が倒されソ連という国家が消滅するところまで行った。
 人々の願いが思いもかけない形で現実化することがあるのだなと私の心に強く印象づけられた。
 いま自由を求める世界の人々の橋頭保が香港だ。30年前のドイツのような「革命」が起きることを願っている。
・・・・・・・・・・・・
 中国事情に詳しい「黒色中国」という人のブログは興味深い香港情勢を伝えてくれるので毎日彼のツイッターをチェッしている。
 先日、「香港に留学中の日本人高校生からいただいたDM」と題して彼のフォロワーから送られてきたダイレクトメール(DM)が公開されていた。http://bci.hatenablog.com/entry/hkdm
 このなかに「警察に実弾で撃たれた高校生」が出てくるがこれは10月1日に警察に銃で胸を撃たれた高校生のこと。https://takase.hatenablog.jp/entry/20191001
 彼はこの日本人高校生の「友人の友人」だったという。
 すばらしい内容で感銘を受けたので以下に紹介する。

 こんにちは。私は香港に留学している日本人高校生で、ここのインターナショナルスクールに通っている者です。香港の留学生のうち、日本人大学生はたくさんいても高校生はおそらく片手で数えられるくらいしかいないので、我ながらレアな存在だと思います笑 なお、日本では「留学生が帰国を急いでいる」と報道されていますが、それは主に大学生のことであり、高校生である私の生活圏はまだ安全なので日本には帰っていません。
 私は香港に留学してから一年と少ししか経っておらず、まだまだこの場所に関しては素人です。それでも、ここ最近はデモや香港の将来を案じて物事に集中できません。こんなことを日本にいる親に言ったら怒られそうですが、授業中もパソコンでパワポを見るフリをしながら、ほかの生徒と同様に香港のニュースを追っています。警察に実弾で撃たれた高校生は私の友達の友達であり、あの日はテスト勉強ができませんでした。お世話になっている知り合いの大学生が沢山いる中文大学や香港理工大学がまるで戦場のようになり、日本人留学生が散り散りに去らざるを得なくなってしまったのを見て、複雑な思いが日々頭の中を巡っています。
 私は香港のことを愛しています。私はビクトリアピークから望む中環の夜景から重慶大厦の中東料理まで好きです。香港の経済的繁栄の影にはさまざまな問題があり、ここは決して完璧な場所ではありません。しかし、広東語のアクセントも、ボロボロなのに容赦なく走る小巴(ミニバス)も、譚仔(近所の麵屋)のちょっと無愛想なおばちゃんも、デタラメな日本語の広告も好きです。こんなことを言うのもおこがましいかもしれないですが、ここの高校を卒業した後、何があろうとも香港は必ず私の第二の故郷になると思います。
 香港自体だけでなく私の学校も、もし日本にいれば体験しないであろう分断に直面しています。校内のLennon Wall(政治的意見やポスターを貼る掲示板の香港での通称)での表現の自由について、香港人と中国本土人の生徒で対立がありました。デモに関する学校の対応をめぐっても、生徒と先生の間で軋轢が生じています。ですので、ここも決して居心地のよい状況とは言えません。しかしそれでも幸いなことに、私の学校の生徒は、異なる立場を超えて辛抱強く最善の道を見出そうとしています。私がいるこのような環境は、これまで日本でずっと過ごし偏狭な考えを持っていた私に、かけがえのない自省と成長を促してくれます。
 ここに住む私でも、今夜も何が起こるかは分かりません。改善の目途は見えず泥沼化している中、1週間後、1か月後、1年後に香港がどうなっているかは私には予想すらできません。香港に短い間しかおらず、実際に危険な目にあったことのない私でさえこのような不安や焦りがあるのですから、香港の人々の心中を察すると、とても堪え忍べるものではありません。
 私はこのような時期に香港にいさせてもらえることは、唯一無二の貴重な体験であると思っています。もちろんすべての留学生が私と同じ考えを持っているとは思いませんし、傍観者のくせに不謹慎だと批判される可能性を重々承知の上で申し上げています。
    いま私には、「日本人の高校生として、この目まぐるしい状況からいかに多くの学びを得られるか」、そして直接的な問題解決につながらないにせよ、「その学びをどう責任ある行動に生かせるか」という問題が迫っています。これは私が香港を去った後でも、ここで過ごした時間が束の間であっても、特に中国が勢力を増す今の時代だからこそ、きっと一生を通して考えることになるほど重要な課題です。
 拙文ではございますが、お読みいただきありがとうございました。

 

 若いのに「その学びをどう責任ある行動に生かせるか」という主体的な課題を自分に課していることに尊敬の念をもった。応援したい。

国際連帯を求める香港

 今朝、山形で初雪が降ったそうだ。

f:id:takase22:20191119094924j:plain

 そろそろ節気は小雪(しょうせつ)。旧暦の10月を小春と呼び、この時期にあたる。春のようにポカポカ温かい日もあり、それが小春日和(こはるびより)だ。
22日から初候「虹蔵不見」(にじ、かくれてみえず)。日差しが弱くなるので虹が出なくなる。27日から次候「朔風払葉」(きたかぜ、このはをはらう)。朔風は木枯らし。東京ではきょう最初の木枯らし「木枯らし一号」が吹くとの予報だ。12月2日から末候「橘始黄」(たちばな、はじめてきばむ)。橘は日本に自生する唯一の柑橘類。八百屋の店頭にみかんがたくさん並ぶ。
・・・・・・・・・・・・
 香港理工大学への警察の攻撃は、この5カ月間でももっとも衝撃的な事件だが、4日経って大学構内にとどまる人は減り続け「陥落」間近のようだ。怪我をする人ができるだけ少なくなるよう祈る。

f:id:takase22:20191120225815j:plain

理工大学生を救出しようと多くの市民が集まった

 《香港警察によると、立てこもっていた若者のうち800人近くが19日深夜までに投降の呼びかけに応じ、現場で拘束されるなどした。うち300人近くが18歳未満の中高生だとしている。また、キャンパスから脱出を試みた約10人も拘束された。警察は大学の包囲を続け、デモの完全な制圧をめざす構えだ。》(朝日新聞
 また、大学の周囲で立てこもった学生を支援した市民たちも入れると逮捕者はもっと多くなる。
《警察は19日、大学構内や周辺で約1100人を逮捕した。未成年は拘束されなかったものの、18歳以上は逮捕された。暴動罪に問われれば、最長10年の禁固刑が言い渡される可能性がある。
香港の病院当局によると、15歳から66歳までの負傷者25人が19日、病院へ搬送された。1人は重体だという。》(BBC)https://www.bbc.com/japanese/50484660
 18歳以下の中高生が300人も学内にこもって逮捕され、負傷者が15歳から66歳までに及ぶということが、いかに広範な市民から支持され、いかに悲壮な決意で参加しているかを示している。

f:id:takase22:20191120230154j:plain

 アメリカでは中国に圧力となる動きが。
 《米上院は19日、中国が香港に高度の自治を保障する「一国二制度」を守っているかどうか米政府に毎年検証を求める「香港人権・民主主義法案」を全会一致で可決した。
 下院では既に可決されており、今後上下両院の調整を経た上で、トランプ大統領に送付される。
上院はまた、香港警察に催涙ガス催涙スプレー、ゴム弾、スタンガンなど特定の軍用品を輸出することを禁じる法案も全会一致で可決した。
 ホワイトハウストランプ大統領香港人権法案に署名する意向かどうかをまだ明らかにしていない。ある米政府当局者は最近、決定はまだ下されていないと述べたほか、トランプ氏側近には対中通商交渉への悪影響を懸念する向きと、人権や香港問題を巡り中国に明確な態度を示すべきと主張する向きがあるため、激しい議論が交わされるだろうと予想した。》(ロイター)
 中国外務省は「強力な対抗措置をとる」と激しく反発している。

 香港のデモではよく多くの星条旗が打ち振られるのを見た。はじめはちょっと抵抗があったが、ヨーロッパ諸国や日本の旗もデモに登場するのをみて、香港人が国際連帯を切実に願っているのだと思い直した。
 香港はいわゆる「自由世界」の代表として最前線で闘っている。しかも強大な中国共産党に対して。日本の政府、国会は人権問題というと声を発しない。かつて天安門事件のあと、日本は制裁を続ける欧米を横目に対中制裁を解除し、天皇の訪中を実現させた。孤立する中国に助け舟を出したのだった。いま、習近平国賓として招く計画がするんでいるが、同じことを繰り返すのか
 一人一人ができる支援を考えたい。例えば、香港情勢を話題にする、SNSに書き込んだりリツイートする、習近平国賓として招くのに反対する、国会や地方議会で香港に関する決議を上げるよう要請する・・・。
 一人香港に思いを馳せ、祈るだけでもいいと思う。
 香港加油

戦場と化した香港理工大学

 香港理工大学周辺は戦場のようになっているらしい。

f:id:takase22:20191120013539j:plain

理工大近くの橋の上で、突っ込んできた警察の装甲車が火炎瓶で炎につつまれた

 昨夜から包囲された学生を救おうと数万人の市民が集まり、未明には警察と激しく衝突し、催涙弾と火炎瓶の応酬になったという。
 香港政府によれば、立てこもっていた学生や中高生約600人がきょう午前までに投降、中にはなお約100人が残っているという。

f:id:takase22:20191120013953j:plain

我が子を救って、私は自殺などしないというプラカードをもって坐りこむ親たち

 無事でいてほしいと祈る。

 一方、きのう香港の高等法院(高裁)は、民主派の抗議デモ参加者に覆面を禁じる10月の条例について、香港基本法憲法に相当)に違反しているとの判断を示した。高等法院は、「香港政府が基本的人権に対して課した制限は、(中略)合理的に必要な範囲を超えており、(中略)従って、比例原則を満たしていない」と判断した。判決を受けて、香港警察は覆面禁止規則の執行を当面停止すると表明した。
 みごとに三権分立の原則が貫かれ、日本よりよほど立派だ。
 ところが19日朝、すぐに中国の国会に相当する全国人民代表大会全人代)常務委員会法制工作委員会の蔵鉄偉報道官が高裁判決に異を唱え、「覆面禁止規則は香港基本法に適合している」と語った。蔵氏は「香港の法律が基本法に適合しているかは全人代常務委だけが判断し、決定できる」と強調した。国務院(政府)香港マカオ事務弁公室の楊光報道官も「全人代常務委の権威と行政長官の統治権に公然と挑戦するものだ」と判決を批判した。
 いらだちが限界に来ているようなコメントである。
 さらに、中国政府は定年になった香港警察のトップの後任に、5年前に民主的な選挙の実現を求めた「雨傘運動」の際に強硬な対応をとったとされる鄧炳強氏を任命した。抗議活動にさらに厳しく対処していく方針なのだろう。
 これからが正念場である。
・・・・・・・・・・・
 日本共産党、こんどは香港だけでなくウイグル問題もや尖閣諸島をめぐる問題をふくめ中国大使館に申し入れをしたという。
 《日本共産党の田川実書記局員・国際委員会事務局長は18日、都内の中国大使館を訪れ、同大使館の倪健(げい・けん)公使参事官に、第28回党大会への綱領一部改定提案報告を手渡し、(1)香港での弾圧の中止、(2)ウイグルにおける人権抑圧の中止、(3)尖閣諸島の日本の領海における、中国公船の侵入など、他国が実効支配している地域に対し力で現状変更を迫る試みの中止―を求める立場を、中国政府と中国共産党の指導部に伝えるよう要請しました。
 倪氏は、3点について中国の立場を述べるとともに、要請は伝えると述べました。》(しんぶん赤旗https://www.jcp.or.jp/akahata/aik19/2019-11-19/2019111902_03_1.html

 香港人は国際的な支援と中国への圧力を真剣に見守っている。先日、香港の知人が、共産党志位委員長の「香港での弾圧の即時中止を求める」という声明に仰天して問い合わせしてきたが、その時私はまだその声明について知らなかった。あっという間に香港で拡散して話題になったらしい。そのくらい香港情勢について海外でどう報じられているか、誰がどんな言動をしているのかを注視しているのだ。
 その香港の知人、「アベさんは反中国の保守政治家らしいので期待してます」と言うから、「いや彼は政治哲学のない人で、トランプだけでなくプーチン習近平にまで尻尾を振っています」というと「失望しました」と返信してきた。

 共産党以外の政党にさほど動きが見られない中、民間団体も動き出した。
 NPO法人日本ソーシャルワーカー協会は「香港情勢に関する緊急声明」を出した。
 ‐香港市民の民主化運動に対する政府当局の弾圧行為に断固反対し、不当に逮捕されたすべての市民民の即時解放を求める‐https://t.co/0HA1LCNsKX 

f:id:takase22:20191120013432p:plain

ソウルの学生が香港の民主化に連帯

 政府や共産党以外の政党が動かないなか、地方自治体やNPOなどあらゆる場所、団体から中国と香港政府への抗議を発することは、香港市民への大きな励ましとなる。


 韓国ソウルでは観光地の明洞(みょんどん)で学生たちが香港民主化への連帯を訴えた。日本の若者もつづけ。
 そして自分は何ができるのか、考えている。

香港:デモ隊の暴力をどう見るか

 先日発表された、都道府県魅力度ランキング2019(しかし「魅力度」っていったい何ですか?)で茨城県が7年連続最下位となったそうだ。ちょっと応援したいので、私が愛用する茨城産の逸品をご紹介する。
 茨城県石岡市清明堂の「水車杉線香」は私の数少ない「こだわり」の品だ。昔ながらの水車を使っての手作りだ。水車は原料の杉の葉をすりつぶす動力で、ここの線香には杉の葉以外は香料も何も入っていない。

f:id:takase22:20191116222552j:plain

清明堂の水車

 うちには仏壇がないので、私とかみさんの親の遺影(と遺骨)を出窓に置いてそこに毎朝、水を供えて線香をあげる。自然な香りが漂ってとても気持ちが落ち着く。線香をたてる習慣が失われていくが、朝、ご先祖様に手を合わせる「線香のある暮らし」、おすすめです。
 なお、水車線香を作っているのはもう一カ所、福岡県八女市の馬場水車場がある。こちらの「杉の葉線香」もよろしく。https://takase.hatenablog.jp/entry/20180506
参考)清明堂を取材した記事:<ものづくりの現場へGO!> 線香の「駒村清明堂」(石岡市
https://www.tokyo-np.co.jp/article/ibaraki/list/201908/CK2019080602000164.html
・・・・・・・・・

 ついさっきの周庭さんのツイート。

f:id:takase22:20191116223838p:plain

 https://twitter.com/i/status/1195675102676996102

f:id:takase22:20191116224444j:plain

 ついに人民解放軍が出てくるのか・・。きょう明日の香港情勢に注目。

 香港中文大学のキャンパスで9月にお会いした大学院生でTA(ティーチング・アシスタント)として学生を教えてもいる石井大智さんが「今、香港中文大学で起きていること〜日本人研究者が学内から緊急報告」という記事を日経ビジネスに寄稿している。学生たちが次の防衛戦に備えてキャンパスに籠城し、食料確保にまで困難が生じているなど、生々しいレポートが綴られている。https://business.nikkei.com/atcl/seminar/19/00030/111500063/
 警察は抗議活動の拠点になっているとして大学を直接に攻撃したわけだが、法律上許されるのかと疑義を呈している。警察との抗争が起きたのは香港大学、香港中文大学、香港理工大学、香港科技大学。石井さんによれば;
《ともに香港政府の大學教育資助委員會(UGC)から公費での支援を受けている公立大学ではある。ただし、それぞれの大学は条例で日本の国立大学法人と同様に政府とはあくまで別個の法人として扱われており、さらに大学は土地も自法人で所有していることが多い。香港の大学内は「私有地」とみなすことも十分可能で、そこに警察が差し迫った理由や令状なしに入り込んだと見ることもできる。》
 石井さんは、今のいわば暴力の連鎖では《抗議活動のゴールが見えておらず、それがいつ見えてくるかもわからない》と憂慮している。

f:id:takase22:20190902171730j:plain

香港中文大学は広大なキャンパスをもつ緑豊かな丘の学舎である

 共産党の声明でも、中国共産党を厳しく批判する一方で、「わが党は、デモ参加者が暴力を厳しく自制し、平和的方法で意見を表明することが重要だと考える」としており、各紙社説も「中国、香港政府に民主化を求める運動であるはずなのに、意見を異にする人たちの間で憎悪が強まり、社会の分断が深まるのは不幸である。デモ隊にはぜひ、理性ある非暴力の運動を貫いてほしい」(東京新聞)などと抗議者側の暴力の自制を訴えている。
 あらためて、デモ隊の暴力をどう考えたらいいのか。
(つづく)

政府は日本共産党の中国批判を見習え

 さっき香港の知り合い(香港人)からワッツアップ(LINEのようなメッセンジャーアプリ)で連絡があった。
 あるURLが貼り付けてあり、その意味を教えてくれと尋ねてきた。彼は日本語ができない。しかし、漢字をひろって読んでいくと中国共産党を非難しているみたいだが、ほんとにそうなのか、と。
 URLを開くと、日本共産党の声明だった。以下、しんぶん赤旗より。

「香港での弾圧の即時中止を求める」
日本共産党幹部会委員長 志位和夫

一、香港で政府への抗議行動に対する香港警察による弾圧が強まっている。11日には警官が至近距離からデモ参加者に実弾発砲し、1人が腹部を撃たれて重体となった。丸腰のデモ参加者への実弾発砲は、言語道断の野蛮な暴挙である。大学構内への警察による突入で、多数の負傷者と逮捕者が出た。警察は、香港立法会(議会)の「民主派」議員7人を逮捕した。香港警察とデモ参加者との衝突のなかで、デモ参加者から犠牲者が出ており、その真相解明が厳しく求められている
 わが党は、デモ参加者が暴力を厳しく自制し、平和的方法で意見を表明することが重要だと考える。しかし、殺傷性の高い銃器を使用して、抗議活動への弾圧を行うことは、絶対に容認できるものではない

 一、重大なことは、香港当局の弾圧強化が、中国の最高指導部の承認と指導のもとに行われていることである。
 習近平中国共産党総書記・国家主席は4日、林鄭月娥・香港行政長官との会談で、抗議行動への抑圧的措置を続けている香港政府のこの間の対応を「十分評価する」としたうえで、「暴力と混乱を阻止し、秩序を回復することが依然、香港の当面の最も重要な任務である」と強調した。「一国二制度」の下で中国政府の指導下にある香港に対するこの言明が、何を意味しているかはあまりにも自明である
 実際、中国政府は、香港警察による11日の実弾発砲について、「警察側の強力な反撃にあうのは当然である」と全面的に擁護している(12日、外交部報道官)。
 中国の政権党系メディアは、香港警察に対し「何も恐れる必要はない」「国家の武装警察部隊と香港駐留部隊が、必要な時には、基本法の規定に基づきみなさんを直接増援できる」と言い放った(「環球時報」11日付社説)。武力による威嚇を公然とあおり立てているのである

 一、今日の香港における弾圧の根本的責任は、中国政府とその政権党にあることは、明らかである。その対応と行動は、民主主義と人権を何よりも尊重すべき社会主義とは全く無縁のものといわなければならない。
 今日の世界において人権問題は国際問題であり、中国政府は、人権を擁護する国際的責任を負っている。
 日本共産党は、中国指導部が、香港の抗議行動に対する弾圧を即時中止することを強く求める。「一国二制度」のもと、事態を平和的に解決する責任を果たすことを厳しく要求するものである。
(下線は筆者)


 すばらしい!習近平を名指ししている。
 ここまで厳しく中国共産党を非難し、市民への弾圧を即時中止せよとはっきり要求した日本の政治家がいましたか?
 この声明を日本共産党は14日午前、中国大使館を通じて中国政府に伝えている。
 ワッツアップで私に連絡してきた香港の知り合いは、日本共産党中国共産党を非難している(らしい)ことに驚いて問い合わせをしてきたのだった。
 そこで私は、いわゆる「文化大革命」のとき、日本共産党中国共産党が激しく対立し、北京に駐在していた日本共産党の代表が追放され、北京空港で紅衛兵に襲われて重傷を負った事件など、両党間の歴史を(記憶のかぎりで)彼に説明してあげた。(訳あって私はそのあたりの事情に詳しい) 
 彼は「同じ共産党という名でも全然違うんですね、日本共産党の声明は、私の考えとまったく同じです」と感動していた。

 実は志位委員長はすでに10月15日に孔鉉佑(こう・げんゆう)駐日中国大使と会談して、領土問題とともに香港問題で申し入れをしている。以下しんぶん赤旗より。

f:id:takase22:20191116015015j:plain

 《この機会に、志位氏は「重大な懸念をもっている問題」として、東シナ海と香港の問題を提起しました。
 東シナ海の問題では、「中国公船による尖閣諸島領海侵入、接続水域進入が激増・常態化し、日中関係が『正常な発展の軌道に戻った』と両国首脳が述べた後も、中国公船の領海侵入、接続水域進入が継続している」と指摘。志位氏は「中国側にどんな言い分があろうと、他国が実効支配している地域に対して、力によって現状変更を迫ることは、国連憲章などが定めた紛争の平和解決の原則に反するものであり、強く抗議し、是正を求める」と述べました。
 香港問題では、「人権問題は今日の世界においては国際問題になっている」と指摘しつつ、「デモ参加者の一部による暴力は自制すべきと考えるが、民主主義を求める香港市民の運動に対する香港政府の抑圧的措置、それに支持を与えるとともに武力による威嚇を行った中国政府の立場に反対する」と表明。「『一国二制度』のもとで、事態が平和的な話し合いで解決されることを望む」と述べました。》https://www.jcp.or.jp/akahata/aik19/2019-10-16/2019101601_04_1.html

 これに対して、「共産党の爪の垢を煎じて飲んで出直してこい!」と言いたくなるのが安倍内閣の面々。とくに外務大臣の「香港問題はパス」とでも言いたげな情けない答弁には憤りを覚える。

f:id:takase22:20191116015122p:plain

志位氏のツイート

 《茂木外相は14日の参院外交防衛委員会で、香港情勢に関する外務省としての情報発信の在り方について、佐藤正久参院議員(自民党)から質問を受けた。茂木氏は「昨今の香港情勢につきまして、デモ隊と警察の衝突が長期化し、エスカレーションしています。多数の負傷者が出ていることを大変憂慮しております。自制と平和的な話し合いを通じた解決を関係者に求めるとともに、事態が早期収拾され、香港の安定が保たれることを強く期待しております」とした上で、
 「おそらく日本のハイレベルが、この問題に対して、たとえば香港であったり、デモ隊であったり、香港政府、中国、どちらかに偏った発言をすると、平和的な解決に向けて本当にプラスになるのだろうか。こういったことを考えながら対応する必要があると思っていますが、その上で我が国として、一国二制度のもと自由で開かれた香港が繁栄していくことが重要だと考えています。この旨は今月4日に実施された李克強国務院総理と安倍総理の日中首脳会談、さらにご指摘いただいたような6月のG20大阪サミット、さまざまな機会、レベルをとらえて中国側に伝達してきております」
 などと答弁している。》https://www.j-cast.com/tv/2019/11/15372756.html

 ここは日本共産党にがんばってもらい、習近平国賓で来日させる企ては阻止してほしい