完成間近だったマンションが、富士山の眺望を阻害するとして解体されることになった。
うちの近くでもあり、見に行った。このマンションは「グランドメゾン国立富士見通り」(10階建て、総戸数18戸)で、JR国立駅前に延びる富士見通りに面している。「富士山が見えなくなる」と市民らから懸念の声が出て、積水ハウスは今年6月に市に事業の廃止届を出し、現在、解体中だ。
こういう時代になったのか・・・
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9月2日深夜、プーチン大統領がモンゴルを訪問した。1939年に旧日本軍と、モンゴルを支援した旧ソビエト軍が武力衝突したノモンハン事件から85年となるのに合わせた式典などに出席するためだ。
ウクライナ侵攻に伴う戦争犯罪の容疑で昨年3月に国際刑事裁判所(ICC)から逮捕状が出されて以降、プーチン大統領が加盟国を訪れたのは初めて。モンゴルはICCの加盟国であるため、彼が入国した場合、逮捕する義務があるのだが、逮捕するどころか、歓迎式典が行われフレルスフ大統領らが歓待した。
ウクライナ外務省報道官は、「モンゴル政府がICCの逮捕状を執行しなかったことは、ICCと国際的な刑事司法制度にとって大きな打撃だ」との声明を出した。
逮捕状が出ていた国家元首が加盟国を訪問したケースとして、スーダンのバシル大統領(当時)が2015年に南アフリカを訪れている。このときも逮捕されなかった。しかし、ICCは元首であっても刑事責任からの免除は認められないと規定している。
モンゴルは2002年にICCに加盟。さらに去年12月、モンゴル人が初めてICC判事に選出されている。しかし、モンゴルにとってロシアは重要な貿易相手国で、特に石油や石油製品の輸入は90%以上をロシアに頼っているほか、モンゴル国内ではまかなえない電力をロシアから購入していて、モンゴルとしてはロシアとの関係を重視せざるを得ない。
ICCは重大な犯罪を犯した個人を訴追・処罰する国際法廷で、124カ国・地域が加盟する。集団殺害、人道に対する罪、戦争犯罪、侵略の四つが対象だ。容疑者の身柄を拘束する独自の組織を持たないため、加盟国の協力が不可欠となる。だが、米国や中国、ロシアといった大国は、自国民が訴追されれば国家主権が侵害されかねないなどとして加わっていない。
逮捕状が出ている人物を加盟国が逮捕しない例が常態化して、ICCの権威が揺らぎ、国際法が軽視されることを憂慮する。
越智萌・立命館大学国際関係研究科准教授による、やや立ち入った補足解説―
「ロシア側によれば、事前に協議したうえでモンゴルとの「合意」があるという点も気になっています。
この合意の詳細は分かっていませんが、この内容によっては国際法違反ではない可能性もあると考えています。
ICC規程98条2項は「派遣国の国民の裁判所への引渡しに当該派遣国の同意を必要とするという国際約束」がある場合には、ICCは引渡の請求を行うことはできないと規定しています。
この規定はアメリカが挿入を求め、またICC設置後には、アメリカは在外米軍のいる国等の多くとこの不引渡合意を結びました。
今回、ロシアとモンゴルとの間でこのような「国際約束」があるとは公式には発表されていませんが、もしある場合には、法的な形式としては、ICC規程違反は回避された可能性は残ります。(略)
過去の事例では、不引渡事案が発生した場合、ICC書記局がICC予審裁判部に通知が行われ、当該締約国には説明が求められることになります。
モンゴルが、国際法をどのように解釈し、どのような説明をするのかが注目されます。」
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ロシアの対ウクライナ全面侵略が始まったころ、ロシアの国情の酷さとの対照で、ウクライナが美化された形で語られることが多かった。しかし、だんだんウクライナの「欠点」も指摘されるようになってきた。私自身、去年ウクライナを訪問して、市民らが「汚職」をはじめ激しい政府批判をするのに驚いた経験がある。
もちろん、その国が内部にどんな問題を抱えていても、他国が侵略する理由にはならないのだが、ウクライナという国の実態をもっとよく知りたいと思う。
これまでに読んだ記事のなかで平野高志さんの「汚職、オリガルヒと闘うウクライナの「市民社会」」(中央公論2023年10月)がとてもおもしろかったので紹介したい。平野さんはウクライナに留学後、在ウクライナ日本国大使館で専門調査員をつとめ、18年からウクライナの国営通信社「ウクルインフォルム」に勤務している。著書に『ウクライナ・ファンブック』がある。平野さんによれば、ウクライナでは「市民社会」が発展し、国の変革の推進力になっているという。(引用は《》で示した)
ウクライナの負の特徴に「汚職」や「オリガルヒ(大富豪)」があり、「ウクライナは素晴らしい国かのように描かれがちだが、実際は国中が汚職まみれで、複数のオリガルヒに牛耳られている問題の絶えない国家」という言説がある。
《確かにこの二つは、ウクライナ国民も支援国もその存在を認める根深い問題である。一方で、汚職はソ連時代の非効率な制度の遺産であり、オリガルヒも旧社会主義国家に民営化が導入される過程で発生した存在で、ロシアを含む大半の旧ソ連諸国に共通の問題だ。
筆者はこれらの問題があることに同意した上で、それでも語るべきウクライナの特徴として「市民社会」があると考えている。汚職問題は、選挙のたびに一大争点となるテーマだが、一方、市民社会が動いたことで、それらの難題が2014年以降、徐々に克服されてきているのも事実だ。》
《独立心の強い報道機関や、積極的に行動する市民からなる市民社会》はウクライナの内政に大きな力を持つ一つの勢力になっている。そして、《ソ連時代を知らず、外の世界をよく見知った若い世代(20~40代)が社会進出し、様々な改革を牽引する市民社会が着実に影響力を増してきた》。
一方で、2014年のマイダン革命とそれにつづくロシアの対ウクライナ侵略(クリミア、ドンバス)で《ロシアの影響力が小さくなって以降も、オリガルヒをはじめ、既得権益を守ろうとする抵抗勢力が依然として政界、経済界、司法界で改革の実現を妨害し続けている》。
《政権は改革に逆行したり、問題行動を起したりすると、市民社会が是正を求めて大きな抗議運動を起こす。まさにその規模が閾値(しきいち)を超え、政権交代をも実現させたのが、2004年のオレンジ革命や2013~14年のマイダンだ。その経験からも、政権は市民社会を無視できず、両者の間には常に緊張関係が存在する。筆者は、近年は特に既得権益層の抵抗よりも、市民社会の改革を求める勢いの方が上回っており、重要改革が少しずつ実現されてきていると評価している。
例えば、汚職・腐敗防止活動を行う国際NGO「トランスペアレンシー・インターナショナル(TI)」の腐敗認識指数国別ランキングによれば、ウクライナは2013年に144位だったのが、2022年には116位と上昇している。世界全体ではいまだ低順位だが、TIも改善の著しい国の一つとして特筆する》。
ネットで調べると、2023年はさらに順位を上げて104位になっている。
戦時にありながら汚職撲滅で成果を上げているというのはすごい。
(つづく)