きょう驚いたことがあった。
有田芳生さん(ジャーナリスト、前参議院議員)と夜会う約束があって、夕方5時すぎ中央線に乗ろうと西国分寺駅に向かった。すると駅前で女性が一人スタンディングしていた。プラカードは「変える 東京のために」。夕方でも30度をゆうに超える暑さ。ごくろうさまです。
電車で中野駅に着き、待ち合わせの飲み屋の近くに行くと、また一人スタンディング。こちらは神宮外苑の緑を守ろうという主張。有田さんに教えると、飲み屋から出てきて激励。「こんなのこれまでの選挙で見たことないですよ」と有田さんは言う。
飲み終えて夜9時過ぎ、有田さんと中野駅前に差し掛かると女性が2人でスタンディングしている。聞くと、2人は知らない同士で、たまたまここで会ったのだという。プラカードもたしかに違う。
うち一人の女性は、これまで政治には全く関心がなく、こんなことを自分がするのは初めてという。有田芳生さんのことも全く知らなかった。彼女たちと話していたら、通りかかった一人の女性が、「私もやりたい」と寄ってきた。そこで急遽3人でスタンディング。
で、
私も長く選挙を見てきたし、自分でも選挙活動をしてきたが、今回の都議選、あきらかに雰囲気がこれまでと違う。これがどういう結果になるのだろうか。
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ロシアのウクライナ侵略を非難し、ウクライナからのロシア軍の撤退、ロシア軍の攻撃の停止を求める一方で、イスラエルのガザ侵攻と虐殺についてはイスラエルを支援する。これがアメリカのダブルスタンダード(二重基準)だ。
イスラエルの一方的な攻撃は「虐殺」と表現して間違いではないと思う。人権、人道、国際法どれをとってもイスラエルは一顧だにしない。即時停戦とガザからの軍の撤退、そして本来は損害補償をイスラエルに求めるべきである。
日本政府はイスラエルの立場を理解したうえでガザ地区の人道状況を懸念するというヌエ的な対応だが、基本はイスラエル支持であり、その意味でやはり米国追随のダブルスタンダードに陥っていると言わざるを得ない。
その一方で、左翼・リベラル派とされる人々のダブルスタンダードも見逃せないところにきている。
『即時停戦:砲弾が私たちを焼き尽くす前』という本、今年はじめ社会評論社から出ている。
昨年4月、G7広島サミットを前に、ウクライナの停戦を訴えアジアで戦争の火種を広げないことを求める声明「Ceasefire Now! 今こそ停戦を」「No War in Our Region! 私たちの地域の平和を」(発起人32名)を出した、和田春樹・東大名誉教授を中心とする人々が寄稿している。
4月の声明文発起人には、和田氏のほか、伊勢崎賢治、上野千鶴子、内田樹、内海愛子、岡本厚、加藤登紀子、金平茂紀、姜尚中、酒井啓子、高村薫、田中優子、田原総一朗、暉峻淑子、西谷修、水島朝穂、吉岡忍など、いわゆるリベラル派、左翼あるいは平和主義者とされる錚々たる顔ぶれが並ぶ。その中には私の尊敬する方もいて複雑な気持ちになるが、遠慮せずに批判させていただく。
まず4月の声明文はこう始まる。
「ウクライナ戦争はすでに1年つづいています。この戦争はロシアのウクライナへの侵攻によってはじまりました。ウクライナは国民をあげて抵抗戦を戦ってきましたが、いまやNATO諸国が供与した兵器が戦場の趨勢を左右するに至り、戦争は代理戦争の様相を呈しています」。
はじめから「代理戦争」論である。ロシアについては「この戦争はロシアのウクライナへの侵攻によってはじまりました」と、まるでたまたま先に手を出したのがロシアだったと言わんばかりの記述の他、「ロシア軍の兵士もますます多く死んでいるのです」、「ロシアを排除することによって、北極圏の国際権益を調整する機関は機能を停止し、北極の氷は解け、全世界の気候変動の引き金となる可能性がうまれています」などの(私にはピント外れにしか思えない)指摘があるだけで、肝心のロシアの侵略行為への批判はない。逆に、ウクライナへの武器支援こそが戦争を長引かせているのだから、これを止め、ゼレンスキーに抵抗をやめさせよ(そうすれば戦争は終る)という含意がみえる。トランプ待望論にも親和性がありそうな議論になっているではないか。
このグループが出した『即時停戦』という本所収の西谷修氏「アメリカが変わらなければ世界は混乱に向かう」はウクライナ戦争についてこう論じている。
「実は、(ウクライナ東部の―筆者註)ドンバス地方はパレスチナと同じなんです。ウクライナの現政権はもともと西ウクライナ系で、西側諸国に支えられていて、イスラエルに似ており、ドンバスを支援していたロシアはアラブ諸国に当たると考えればいいでしょう。」(P143)
「現在、ゼレンスキー大統領が『ロシアを追い出すまで戦い続ける』と言っているのは、そうしないと自分が不要になるからです。」(P144)
「世界は混乱だらけです。ウクライナもガザも収まりそうにありません。アメリカがウクライナとイスラエルへの支援をやめないと何も変わりません。」(P145)
えっ、どういうこと?頭がクラクラしてきた。
つまり、ウクライナもイスラエルもともに、アメリカの支援を受けている邪悪な権力に操られ、「ロシアはアラブ諸国」でパレスチナ民衆と同じく被害者の側にあるといっている。平たく言えば、悪いのはウクライナとイスラエルで、同情すべきはロシアとパレスチナだと。
ウクライナの現状認識はむちゃくちゃだが、それは置いとくとしても、露骨なダブルスタンダード(二重基準)!
とりあえず、これを「左翼のダブルスタンダード」と呼んでおこう。
アメリカもダブルスタンダード、左翼もダブルスタンダード。こんな珍妙なことがなぜ起きるのか。
(つづく)