お勧めする3冊のノンフィクション本


 東京都知事選は最終盤を迎えた。尊敬する岡村隆さん(探検家)のFBより。

選挙では「よりまし」を選び、「最悪」を防ぐ

 だって、「もうひとりの自分」 (自分の分身) が立候補しているわけじゃないんだから、「100%理想の候補者」なんか、いるわけがない。

 だから選挙では、「よりましな」候補者を選ぶしかないのだが、それには「最悪な候補者の当選を防ぐ」という大事な意味もある。

 そう考えると、「よりまし」で「最悪の候補者に勝つ可能性のある、ちゃんとした候補者」に一票、というのが結論になる。

 最悪なのは、もちろん小池現都知事。「よりまし」で「勝つ可能性がある」のは蓮舫

 小池の暗黒都政は、疑惑の神宮外苑開発、五輪選手村跡の実態、負の歴史の黙殺、都庁舎のプロジェクションマッピング48億円無駄遣い……と挙げていけばきりがない。。

 投票日まであと4日。現在、ややリードの小池に、蓮舫はもう少しで追いつきそうだという。逆転させられるのは私たちの一票だ。ネット上にはネガティブキャンペーンも多く見られるが、実際の一票にはかなわない。

 その「大きな一票」で悪政を終わらせよう。投票に行こう。》

 同意!

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 27日、NHK MUSIC SPECIAL 中島みゆきがアンコール放送された。

 私は中島みゆきのファンで、カラオケでは主に彼女の歌を歌う。映像で見ると、いっそう魅力的で存在感はもう女王様。もうこんな歌手は出ないだろうな。なるべく長く歌い続けてほしい。

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 きょう、大阪の隆祥館書店という本屋さんから連絡をいただき、本を3冊推薦してほしいと要請された。そのわけは・・

 2018年以来5年間、続いてきた『本屋大賞 ノンフィクション本大賞』が中止されたが、読者の要望で隆祥館独自のノンフィクション大賞を発表しているという。ここはメディアでは報道されないことを書いたジャ-ナリストや、細かい分野の専門知を持つ人を招いてトークイベント(作家と読者の集い)をやったりと熱心にノンフィクションを応援している。

 で、今年前半のノンフィクション大賞(売上上位十作品)に『中村哲という希望』が入賞したという。入選作の作家には「お勧めの本」を3冊紹介してもらい、店内でフェアをするそうなのだ。

 ノンフィクション大賞に入賞したとは光栄でありがたい。

 お勧めの3冊は以下を上げた。ご関心あればお読み下さい。

①    乗京真知『中村哲さん殺害事件 実行犯の「遺書」』(朝日新聞出版)
②    アンドレイ・クルコフ『侵略日記』(集英社
③    上杉一紀『ソ連秘密警察リュシコフ大将の日本亡命』(彩図社

 ①    の乗京真知『中村哲さん殺害事件 実行犯の「遺書」』は、すでに本ブログで書評を書いている。中村哲医師の暗殺事件の国際謀略ともいえる驚くべき構図を突き止めた世界的スクープの書だ。

takase.hatenablog.jp

②    アンドレイ・クルコフ『侵略日記』

左が2014年の「マイダン革命」後の日々をつづった『ウクライナ日記』、右が『侵略日記』


 アンドレイ・クルコフは、ウクライナが独立して間もない頃のキーウを舞台にした『ペンギンの憂鬱』(新潮社)で国際的な名声を得た作家だ。本書は、2022年までウクライナ・ペン会長を務めたクルコフが、ロシアの全面侵攻以降の日々を書いた日記である。

 1961年にソ連レニングラードで生まれ、3歳のときに両親とともにキーウに移住した彼は「私は民族的にはロシア人で、ずっとキーウで暮らしてきた。私は自分の世界観に、行動や人生に対する態度に、16世紀、まだウクライナロシア帝国の一部になっていなかった時代の、ウクライナのコサックの世界観と行動の影響を感じる。当時、ウクライナの人にとって自由は金(きん)より大切だった。あの時代が戻って来て、ウクライナ人にとって自由はまたも金(きん)より大事なものになっている」という。

 ウクライナのロシア人やロシア語話者は迫害されていて親ロシアの心情をもつと思っている人がいるかもしれないが、クルコフのようにウクライナ側に立ってロシアの侵略に抵抗している人が圧倒的多数である。民族的にはロシア人でも、ウクライナ人のアイデンティティを強く持っているのだ。

 この日記は、「ロシアがウクライナを侵略した記録であるだけでなく、ロシアから押しつけられたこの戦争」「がいかにウクライナのナショナル・アイデンティティ強化に寄与したかという記録でもある」と記すクルトフ。

 この日記は、ウクライナがなぜ屈しないのかを知るよすがとなるだろう。

 

③   上杉一紀『ソ連秘密警察リュシコフ大将の日本亡命』は先月下旬に出たばかりの本。

彩図社刊、1800円

 日中戦争が二年目に突入していた1938年。ソ連満州の国境を越えて日本に単身亡命を求めてきたソ連の高官がいた。ソ連最高会議代議員にして政治警察、秘密警察を統括する内務人民委員部(NKVD=KGBの上部機関)のエリート、三等大将ゲンリフ・リュシコフ。

 ソ連では1934年のキーロフ暗殺を利用した赤色テロルが荒れ狂い、スターリンによる粛清が最盛期を迎えていた。トロツキー以外の主要幹部は全員抹殺されたが、リュシコフはその粛清を先頭にたって遂行する立場で、彼自身がジノヴィエフカーメネフらの大幹部を尋問し処刑場に送っていた。

 スターリンがリュシコフを極東に派遣したのは、極東に住む20万人の朝鮮人全員を追放するためだった。いざというとき日本側に寝返ることを警戒しての措置で、16万人が中央アジアへの移住を強制され、抵抗した2500人は逮捕、数百人が抹殺された。

 スターリンに忠実に従っていた、体制の最奥部を熟知する高官だったリュシコフだが、自身も粛清対象になる可能性を察知して敵である日本に寝返ったのだった。当時日本が欲しがっていたソ連体制の内部情報を彼は提供し、それは日本軍の対ソ戦略に利用された。しかし、日本にはすでにソ連赤軍のスパイ、ゾルがいた。リュシコフが提供した赤軍の配置、装備、暗号、兵力の分布などの貴重な情報をゾルゲは入手し、モスクワに筒抜けになった。このリュシコフ情報の盗み出しがゾルゲが日本で果たした8年間の活動の中でも、最大の功績の一つとも言われている。

 リュシコフは、トロツキーと同じくウクライナ出身のユダヤウクライナの地ではポグロムユダヤ人迫害)が頻発し、多くの革命家とシオニストを生み出した。本書からは現在のウクライナイスラエルの抱える問題にまでつながる歴史の底流も垣間見える。

 敗戦直後、リュシコフの存在は消し去るべしと軍部は殺害指令を出す。1945年8月20日、その指令を実行し、ピストルで彼を撃ったのは陸軍中野学校出身の大連機関長、竹岡豊

 日本に生還した竹岡はフジテレビに入社。同社は、日本共産党の大物転向者第一号の水野成夫鹿内信隆と組んで設立した企業で、財界の利害を代表する反共メディアだった。水野の没後、鹿内が、フジテレビ、文化放送ニッポン放送産経新聞を軸とするフジサンケイグループ全体の初代議長に就くが、その鹿内の秘書として長く仕えたのが竹岡だった。

 ソ連崩壊後に初めて公開された資料を土台に描く日本と極東の知られざる裏面史は寒気がするほどすさまじい。