大阪のメディアに活を入れる橋下徹氏敗訴判決

 橋下徹氏と維新の会の「メディア支配」に打撃を与える判決が下された。

自ら「勝訴」の紙を掲げる弘中惇一郎弁護士とモニターで会見に臨む大石あきこ議員。

弘中惇一郎弁護士

 「れいわ新選組の大石晃子衆院議員へのインタビュー記事で名誉を傷つけられたとして、大阪府知事橋下徹が、大石氏と配信元の「日刊現代」に慰謝料300万円の損害賠償を求める訴訟を起こし、大阪地裁で31日、判決があった。小川嘉基裁判長は「発言の重要な部分は真実。論評の範囲を逸脱しておらず、不法行為には当たらない」と述べ、橋下氏側の請求を棄却した。

「カミソリ」などと呼ばれる弘中弁護士(東スポ


 判決によると、記事は2021年12月、日刊現代のニュースサイトで配信された。府職員出身の大石氏は記事の中で、知事当時の橋下氏について「気に入らない記者は袋だたき」「飴(あめ)と鞭(むち)でマスコミをDV(ドメスティックバイオレンス)して服従させた」などと語った。

 橋下氏は「メディアを萎縮させたことはなく、発言によって社会的評価を低下させられた」と主張したが、判決は、橋下氏が府知事や大阪市長当時、意に沿わない報道をしたメディアを批判し、取材を受けない可能性を示唆するなどしたと指摘。大石氏の発言を「橋下氏の姿勢は許されないという意見を示したもの」などと認定し、不法行為には当たらないと結論づけた。」(朝日新聞

 橋下氏は自分を批判する記者を恫喝し、言うことをきく記者を優遇するなど、アメとムチでメディアを手なずけてきた。例えば、気にいらない記者には取材に応じないなど排除する、するとその所属メディアの上層部が腰砕けになって担当記者を取り替えたり、気にいられるように報道して橋下氏に迎合する。その関係が後の維新府政にも引き継がれ、メディアが維新を持ち上げる原因になってきた。「維新の会はメディアを利用して大きくなってきた」(大石氏)のである。

 大石氏は、勝訴を受けて、大阪のメディアが維新府政に迎合したり忖度したりせずに、ちゃんと報道してほしい、とくに万博とカジノを、と語った。この判決は大阪のメディアへの「活」でもある。

 今回の判決は、大石氏側の全面勝訴。大石氏の代理人は、あの無罪請負人、弘中惇一郎弁護士だ。さすがだな。かつて情熱大陸で取材させてもらった、すごい弁護士である。

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 もう一つ、メディアに関する問題。

 能登地震発生から一ヶ月がたった。1月31日時点で1万4643人が避難生活を送り、うち9557人(65%)が今も体育館や集会所といった1次避難所305カ所に身を寄せる。

もう一ヶ月経つのか・・(共同通信より)

 家族が家の下敷きになり「助けて」と叫び続けたのに救援が来ずに亡くなったという切ない話や地震から3週間以上たってもまともに水や食事がとれないでいる実態がニュースで流れるたび、今回の地震への対応は遅れているなと感じていたが、その理由については、「半島の特殊性でアクセスが悪い」などごく一般的な説明ですまされ、なにかもやもやした感じだったが、これを指摘した論説能登地震NHKを紹介したい。能登地震にかんするNHK報道に違和感を感じたとして、それは放送の量ではなく質、中身だったという。(17日朝刊「多事争論田玉恵美論説委員


《逃げ遅れの通報が多く対応が追いつかない。道路の寸断で救援が難航している―。現地からは一刻を争う状況が伝わってくる。一方で、政府や行政が事態をどう打開しようとしているのか、その実相に迫ろうとする情報はほとんどない。

 たとえば、首相が「自衛隊を4600人に増強する」と語るのは紹介するが、その数が妥当なのか、どう評価すべきなのかについての解説はない。肝心の道路を通すため、誰がどう動いているのか。課題は何か。空路はどの程度使えているのか。こうした疑問も掘り下げないまま、キャスターが「一刻も早い支援が求められています」などと当り前のことを言うので、もどかしさばかりが募る。

 現地の人たちの窮状を伝えるのはもちろん不可欠で、大事なことだ。だが、それに偏重した報道を見ていると、本当に被災地のためになっているのだろうかと考え込んでしまった。

 建物の下で助けを待つ数日の間に体が冷えて亡くなったとみられる人たちがいると証言する医師がいた。5日後に救出された人もいる。まだできることがあったのではないかと思わずにはいられない。

 被害の全体像がなかなか見えず、初動も問われた今回はとりわけ、政治家や省庁などの動きに同時並行で目を光らせ、場合によっては警鐘を鳴らすような放送も必要だったのではないか。新聞も当然力量を試されるが、受信料を預かり災害報道を最大の使命の一つとするNHKは真価が問われたはずだ。
(略)
 NHK放送ガイドラインをみると、「災害の報道にあたっても、自主・自律を貫く」と書かれていた。ならばなおのこと、緊急時の政治や行政の動向に目を凝らし、時機を逃すことなく報じてほしい。》

 正論です。