ウクライナ選手にとってはスポーツが「戦場」

 ガザのニュースは毎日見るのがつらい。

 ガザ地区南部のハンユニスへイスラエルが攻撃を強めるなか、24日、国連避難施設が戦車による攻撃を受けて炎上、9人が死亡し、75人がけがをしたUNRWA国連パレスチナ難民救済事業機関)ガザ事務所の代表が明らかにした。

 国連は24日、これまでにガザ地区で国連の施設に住民120万人が避難し、少なくとも340人が死亡し、1100人以上がけがをしたと発表した。

 住民が逃げるところを探してさまようなか、国連施設なら大丈夫と思って避難してもイスラエルは容赦なく攻撃するのだ。この無差別の住民攻撃で犠牲者の7割が女性と子どもだ。どこが「自衛のための戦い」なのか?

 パレスチナ自治区ガザ地区の保健当局は、24日、人道支援物資の到着を待つパレスチナ人の列に発砲があり、少なくとも20人が死亡したと発表した。

少女は「起きていることが信じられません」と泣き崩れた。これらの子どもたちが生き残っても、心の傷はずっと残るだろう。(サンモニ28日)

私たちはこの嘆きに何も答えられない(サンモニ)

ガザの主要な病院の一つの最近の映像にはイスラエル軍の攻撃で内部まで破壊された様子が映っている。

立派な設備の病院だったと、ここで働いていた川瀬佐知子医師は言う(サンモニ)

 医療は崩壊状態で、連日多くの重症、重病の人々が出るのに全く対応できないという。「麻酔なしで足の切断手術」「消毒液の代わりに塩を塗る」といった医療現場の惨状になっていると報じられている。(アナドル通信社)

 ユニセフが17日発表したところによるろ、21万5千人以上が呼吸器疾患を、15万2千人以上が下痢を患っているという。

 国際司法裁判所(ICJ)は26日、イスラエルに対し、暫定措置としてジェノサイド(集団殺害)行為を防ぐ「全ての手段」を講じることなどを命じた。攻撃がジェノサイドにあたるとして、南アフリカが提訴し、軍事作戦停止を含む暫定措置を求めていた。

 今回ICJが命じたのは、ジェノサイドの防止と関連の証拠の保全で、それにはジェノサイドの扇動を防止する手段を講じることや、ガザの人々への人道支援を供給するために有効な方策の即時実施も含まれている。ただし、作戦停止の命令には踏み込まなかった。

国際司法裁判所(サンモニ)

イスラエルは大量虐殺にあたるすべての行為を防止するために、あらゆる措置を講じなければならない」と

 ICJの暫定措置命令は、ジェノサイドの認定は伴わず、緊急的に人々を保護するための仮処分だ。命令には法的拘束力があるが、ICJには強制的な執行手段がないのでこの有効性は疑問だが、世界の声を突きつけることにはなる。

 南アフリカアパルトヘイトの暗い歴史を背負っている。提訴したのはその自覚をもってのことだろう。唯一の被爆国、日本が核廃絶へのイニシアチブをとらないばかりか後ろ向きの対応に終始しているのが恥ずかしい。
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 一昨日終わったテニスの「全豪オープン。数日前の新聞のスポーツ欄でウクライナ選手が活躍しているという記事が目に入った。21日時点で女子シングルス勝ち残り12人のうち3人がウクライナ勢だったという。(残念ながら決勝には進めなかった)

朝日新聞より

 世界ランキング37位のコスチュクという選手は、家族が首都キーウで暮らす。会見でも戦争について語っている。

ウクライナが3日で占領されなかったのは奇跡だった。その奇跡が終り、多くの人の関心が薄れていると感じる」と会見で危機感、憤りを訴えた。ウクライナを、その原状をアピールしなければという使命感が、勝利への執念につながっているという。

 ウクライナでもっとも人気のあるスポーツはサッカーだそうだが、その中の強豪チーム、シャフタール・ドネツクが去年12月、来日してアビスパ福岡と1万8千の観客の前でチャリティマッチを行い、試合の収益はウクライナの復興支援に回された

チャリティマッチは2対2だった(NHK国際報道より)

在日ウクライナ人も多数応援にかけつけた(国際報道)

サッカーは我々の「戦場」だと語る選手たち【国際報道より)

 シャフタールは本拠地ドネツク市が2014年以来親ロ勢力の「ドネツク民共和国」の支配下に、現在はロシア軍の占領下にある。そのため、ポーランド疎開生活を余儀なくされているが、たくさんの苦労を乗り越え、欧州チャンピオンズリーグでも健闘している。この試合のあとの記者会見でも、選手たちは祖国の兵士との連帯を語った。

「戦争中のウクライナでは毎日人が死んでいます。きのうもチームのスタッフが前線で亡くなりました。とても苦しい。」

「よいプレーを見せ、兵士にモチベーションを与えていきたい。難しい状況の中、前向きな気持ちを維持することは難しいが、そうするしかありません。」

「(日本の)支援をありがとう。私たちとともにあってくれてありがとう。ぜひこれからもそうしてほしい。サッカーを続け、試合を通してウクライナを支えていきたい。」

 彼らにとってスポーツを続けること自体が「戦闘」なのだ

 銃を持って前線に行くだけが戦いではない。ウクライナでは、各自がそれぞれの持ち場で自分なりのやり方で祖国に貢献している。

去年7月、フェンシングの試合で、勝ったウクライナ選手オリガ・ハルランが対戦相手のロシア人選手との握手を拒否。剣を突き付けたまま睨みつけた。ハルラン選手は失格処分になった。ロシア、ベラルーシ選手との握手拒否は他の競技でも起きている。