10月18日(水)。朝冷え込んで零下。ウクライナはもう冬の寒ささ。
ウクライナが押している南部戦線から、最近ロシアが圧力を強める東部戦線のドネツク州前線線へ移動し、砲兵部隊を取材した。
前線に近づくと、案内の軍人から「スマホを機内モードにして」と指示された。スマホが発する電波がロシア軍に探知されることでこちらの位置情報を知られないためだ。取材者として来ているのに、ここでは私たちも戦闘の「当事者」なのか。一気に緊張がはしる。
南部ではウクライナ軍がほ撃つ砲声がロシア軍の砲弾の着弾音を圧倒していたが、ここでは半々という感じだ。しかも砲声の間隔が短く、やまない。あくまで私たちが滞在していた時間帯の印象だが、激戦ぶりがうかがえた。
突然、すさまじい爆音が空から降ってきて、思わずしゃがみ込む。
超低空でジェット機3機が通過した。案内の軍人が、「友軍機だ」と言うので、ほっと胸をなでおろす。しかし、遠藤さんはロシア軍機ではないかという。ジェット機からフレア(地対空ミサイルをふせぐ)をまいたのを確認したという。フレアというのは飛行機が地対空ミサイルを防ぐためにまく、いわば「目くらまし」で高度が高いところでしか使用しない。超低空でフレアをまくのは解せないというのだ。
(注:後日、このジェット機はウクライナ軍機であることが判明した)
この出来事は、ここが両軍攻防の最前線なのだと実感させた。この一帯もまた原則メディアを入れないのだが、私たちは特別な許可で取材できた。
緊張の連続だったが、兵士たちはフレンドリーで、私たちと冗談を言って笑い合うこともあった。上官の前でカメラに向かって「戦争が長びいて疲れた、家族が恋しい」と率直に語る兵士も。そんな彼らにとって、スターリンクのおかげで塹壕の中から家族と話をすることができるのは大きい。このこと一つとっても、国際的な支援の重要性がわかる。
つづく